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意思決定の質を変える職場の多様性

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

Think!でもコメントをしましたが、重要な視点だと思いましたので記事にしておきます。「Think!ってなに?」という方はこちら

D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)や多様性が議論されるようになって久しいですが、まだまだ理解がうまく進まないテーマでもあるなと感じています。

「これまでうまくやってきたのだから特に問題はないのでは?」
「むしろ議論が紛糾して意思決定が遅くなるのでは?」

日々様々な経営層の方と会話をしていますが、このような意見を聞くことは少なくはありません。企業の理念やヴィジョン、ミッションなどは何十年と続くレガシーでしょう。しかし、日々の意思決定の質は決定的に経営のオペレーションと直結するものです。去年と同じことを今年も同じようにやっていては業績も伸びません。たゆまぬ改善の努力こそまさに日本企業が得意としてきた領域であり、その観点でも多様化による質の高い議論をつくりだすのは経営者の責務と言えます。

のらりくらりとしたムードが、今年に入り一変しました。2020年10月26日に閣議決定された菅内閣総理大臣所信表明演説の中で以下のような言及がありました。

新たな人の流れをつくる
新型コロナウイルスとの闘いの中で、地方の良さが見直される一方で、産業や企業をめぐる環境は激変しております。こうした状況を踏まえ、都会から地方へ、また、ほかの会社との間で、さらには中小企業やベンチャーへの新たな人の流れをつくり、次なる成長の突破口を開きます。
大企業にも中小企業にも、それぞれの会社に素晴らしい人材がいます。大企業で経験を積んだ方々を、政府のファンドを通じて、地域の中堅・中小企業の経営人材として紹介する取組を、まずは銀行を対象に年内にスタートします。
(筆者略)
コーポレートガバナンス改革は、我が国企業の価値を高める鍵となるものです。更なる成長のため、女性、外国人、中途採用者の登用を促進し、多様性のある職場、しがらみにとらわれない経営の実現に向けて、改革を進めます。

これを受けて第15回経済財政諮問会議では基本方針が示され、関係府省等で具体策を定め、早急に取り組むべきという指摘がなされました。結果として東京証券取引所と金融庁は、3年ぶりにコーポレートガバナンス・コードを改訂し、来月6月から上場企業に適用する予定となっています。特に注目を浴びているのが、経営陣の能力を可視化する「スキルマトリックス」です。

国内の上場企業が経営陣の能力を一覧表にした「スキルマトリックス」の開示を迫られる。東京証券取引所が6月にも要請し、年内に提出が進む見通しだ。成長を実現できる経営体制の構築を促す狙いで、企業にとっては事業戦略に必要なスキルや人材を見つめ直す機会となる。

取締役会の多様性は、異なる視点やスキルを取り入れることで、リスクを減らすことにつながります。特に、プロパーが多数を占める日本の取締役会では、同じような経歴の人が取締役になることが多いです。これは意見集約がしやすいという利点がある一方で、視野が限定的になりやすいという欠点もあります。取締役会全体として事業戦略に照らして必要なスキルを持つ人材が確保されているのか。スキルマトリックスは、性別や国籍といった見かけ上の多様性だけではなく、社内・社外含めた取締役会全体として必要な知識・経験・能力をバランスよく備え、実効的に責務を果たすための手段となるでしょう。

まずは取締役会からですが、おそらく大多数の企業は(開示するかは別として)執行役員レベルまでスキルマトリックスを作成しはじめるでしょう。持続可能な事業成長をするためには後継者育成(サクセッションプラン)が重要です。将来の取締役候補をスキルに照らして育成していくためにも、このマトリックスが有効活用されるようになると考えています。

そして、最終的には管理職、一般社員にまで適用されるでしょう。奇しくもこれは、ジョブ型雇用で求められる職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)の内容とリンクしています。

このような流れが企業内に広がることで、自身のスキルの棚卸しがなされるでしょう。可視化が進むと次に習得すべきスキルも明確になるため、そのために必要な人材育成のアクションも明確化します。個々人の成長と企業の成長とが同じ方向を向くことで、日本企業の成長が加速することを願っています。

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タイトル画像提供:タカス / PIXTA(ピクスタ)

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