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オリンピックのスケートボードに見る新たなカルチャーの方向性

オリンピックが終わってひと段落し、パラリンピックが盛り上がってきましたね!

東京オリンピックで日本はメダルラッシュに湧き、過去最高数の金メダルも獲得しました。
個人的には、日本のお家芸である柔道と、新たに種目に加わったスケートボードという、二つの種目での大躍進に心動かされました。

この二つの競技における選手たちの雰囲気は、とても対照的なものでした。勝ちへの強い執着心を見せる柔道と、ライバルとも仲良く演技するスケートボード

日経の記事にも同様の指摘がありました。

競技の雰囲気は全く異なりますが、どちらも大きな成果を挙げています。

柔道もスケートボードも、個人種目とはいえ、監督やコーチなどバックアップするメンバーや、一緒に練習を積む仲間など、チームで取り組むものです。
今日は、こうしたスポーツのチームづくりから、組織のあり方・つくり方への示唆を得ていきたいと思います。


改革により大躍進した柔道

柔道といえば日本のお家芸。
しかし、2012年のロンドンオリンピックでは金メダルは「0」という結果でした。それが、2021年の東京オリンピックでは、9個もの金メダルを獲得しています。

この裏には、ロンドン後に井上康生さんが監督となり改革を進めてきたことがあったようです。

Twitterではこんな話が話題になっていました。

井上康生さんは、就任時にこれだけの強い言葉を発信されています。

この発言、実は組織変革における基本を確実に実践されているんですよね。

「得意技一つで世界を征する時代は終わった」と、社会の変化を指摘した上で、「指導方法は世界最低」「取り残されて10年経ってる」といった強い言葉で、危機感を醸成する。
その上で、「リオでは全階級でメダルを狙える位置に絶対に持っていく」と、目指すゴールを示し強くコミットする。
そして、「日本はJUDOを追い求めてはならない」「日本は一本にこだわらなければ世界一に辿り着けない。体力がないんだから」と、現状を冷静に分析した上で、勝つための方法論を示す。

こういった具合です。

柔道は極めて伝統的なスポーツです。全日本柔道連盟という伝統的な組織もありますし、JOCにも柔道関係者が名を連ねています。

企業でいえば、伝統的な日本の大企業。重鎮が経営層にたくさんいる中で、若い社長が「改革を断行する」と言い、過去の手法を否定しながら、新たな方法を取り入れていったのです。

おそらく、多くの抵抗もあったことでしょう。

それでも、強い信念を持って改革を断行するトップがいたからこそ、選手たちが勝利に向けて一丸となり、これだけの成果を収めることができました。

そうした中だからこそ、選手は勝ちへの強い執念を抱いていた。そして、その執念が実って、成果につながったわけです。

日本の伝統的な組織においても、変化する外部環境の中で、競争に勝ち抜いていくには参考になる点がとても多いのではないでしょうか。


スケートボードが見せた新しいカルチャー

一方、対照的だったのはスケートボードです。

スケートボードは、金メダル3つ。銀1、銅1と、合計5つのメダルを獲得し、素晴らしい成果を挙げました。

競技以外にも、解説者の瀬尻さんの言葉遣いやその緩さなども多くの方の共感を誘って話題となりましたよね。


この新種目のスケートボードですが、金メダルを獲得した13歳の西谷選手は、「メダル意識しなかった」と言うんです。

「みんなが歓声を上げてくれるから楽しいので、笑顔で滑ろうと考えていた」。
「(試合前は)メダルは意識していなくて、『とれたらいいな』くらいだった」

という具合です。

ライバルとなる選手同士も、バチバチと意識しあっているのかといえば全くそうではなくて。むしろ、技に成功すれば一緒に喜び、失敗したら駆け寄って励まし合っていました。

こちら写真が象徴的です。↓

このように、みんなで称え合い、楽しみながら競技に取り組んでいるんですね。

このような雰囲気になっている理由の一つに、新たなスポーツだけに「コーチがあまりいない」ということがあるそうです。教える人がいないから、自分たち同士で学び合うしかなく、だからこそ選手同士がコミュニケーションを取り合う関係ができているんですね。

「教える人と教わる人」という構図ではなくて、お互いに教え合い、学び合う関係の中で成長しているということです。

こうした雰囲気は、企業で言えばシリコンバレーっぽいというか、スタートアップっぽい感じがします。

競合とバチバチと競争しながら戦っていくというよりも、同じ大きな挑戦に向かう仲間として肩を組み、相互に情報交換もしながら一緒に成長していく。
上司・先輩が部下・後輩に教えるという一方通行の関係ではなく、正解がない中で誰もが互いに学び合いながら共に前進していく。

といった感じです。

このように、ライバルであると同時に、共に市場を創る仲間でもあるので、「競争」というより「共創」の関係にあります

スケートボードの雰囲気がなんとなく若い世代に共感を得るのは、こういった側面からなのではないかと思います。


これからの組織カルチャーはどうなるか

これまでの議論は、柔道が良いとか、スケートボードが良いとかという良し悪しを言いたいわけではありません。

競争の世界の中で改革を通じて成果を挙げた柔道。

共創の世界観で、新たな道を切り開いてきたスケートボード。

どちらも素晴らしい活躍です。

ただ、これは時間軸と共に変化しており、ある種のパラダイムシフトなので、大きな変化の流れとしては止められるものではないと思います。
スポーツ界が変化するように、民間企業を中心とした社会全般も変化していくわけです。

競争の柔道から共創のスケートボードへ。

2024年のパリオリンピックでは、ブレイクダンスが新種目に加わります。

その頃には、「協奏」という言葉がぴったり来る世の中になってるかもしれません。

コンサートで異なる楽器が一つになると素晴らしい音楽を奏でるように。
多様な人材が一つになって、チームとして大きな成果を挙げていく。

そんな世の中にしていきたいですね。

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