COVID-19症例に関するWHO調査報告書が読み応えあるので、みんな読んでほしい
昨日、WHOから「Report of the WHO-China Joint Mission on Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) 」と題した報告書が公開されました。
ものすごく読み応えのあるレポートで、ぜひ厚生労働省から日本語訳を直ぐ出して欲しいと思うくらいです。このパニックみたいな現状をしずめる効果があります。
最初に感染被害にあった中国がWHOと協力しながら、どのように被害拡大を防ぎ、収束に向かったかが描かれています。「収束」と記載しましたが、内容を読む限りは中国では感染拡大は無さそうと言わんばかりの自信を感じました。
ちょっと気になった点を抜粋しました。英語をGoogle翻訳を使って訳しただけの浅い知識なので、そこは了承ください。正確性については英語原文がもっとも正しいです。
始まりについて
2020年2月20日現在、中国では累積で75,465のCOVID-19症例が報告されています。報告された症例はNational Reporting System(NRS)に基づいています。 NRSは新しく記録された確認済みの症例、死亡、疑わしい症例、および連絡先の日次レポートを発行します。毎日0時30分に各州から日報が提供され、前日からの症例が報告されます。1月23日から1月27日の間に停滞し、それ以来着実に減少し続けています。
図はPDFから引用しました。なるほど、確かに1月27日をピークに報告症例が下がっているとわかります。
同じくPDFからの引用です。「date of onset」は発症日、「date of report」は報告日です。だいたい10日間程度のラグがありますね。
そして、このグラフを見る限りは発症者はほぼ0に近付いていて、封じ込めに成功したっぽいな〜と感じています。
人口統計学的特徴について
2020年2月20日時点で報告された55,924の検査室確認症例のうち、年齢の中央値は51歳(四分位範囲が39-63歳)であり、症例の大部分(77.8%)は30-69歳です。報告された症例のうち、51.1%が男性、77.0%が湖北省、21.6%が農家または職業別の労働者です。
原文には「the median age is 51 years (range 2 days-100 years old; IQR 39-63 years old)」とあったのですが、これは「下は生まれて2日目、上は100歳まで」って意味でしょうか。
感染経路
COVID-19は、感染症と感染症が密接に保護されていない状態で接触しているときに、飛沫や媒介物を介して(via droplets and fomites)感染します。COVID-19の空中伝播は報告されておらず、入手可能な証拠に基づくと、伝播の主な原因とは考えられていません。ただし、特定のエアロゾルを発生させる方法として、医療施設が想定できます。
一部の患者から糞便排出が実証されており、限られた数の症例報告で生存可能なウイルスが特定されています。ただし、糞口経路はCOVID-19感染のドライバーではないようです。 COVID-19の役割と重要性は未定です。
飛沫や媒介物を介してなので、満員電車でつり革を持って感染する可能性だって無くはないのかなぁ〜と思いました。咳エチケットはめちゃくちゃ大事だし、なるべく電車内では不動明王のように立っているしかないですね。
あとウンコから出る、ってのは気付いていなかったです。可能性は無いみたいですが、便座のアルコール消毒って大事。
中国では、COVID-19ウイルスの人から人への感染が主に家族で発生しています。共同ミッションは、クラスターの調査およびいくつかの州で進行中のいくつかの世帯伝播調査から詳細な情報を受け取りました。広東省および四川省の1308例(報告された1836例のうち)を含む344クラスターのうち、ほとんどのクラスター(78%-85%)は家族で発生しています。現在、世帯伝染調査が進行中ですが、広東省で進行中の予備調査では、世帯の二次攻撃率は3〜10%の範囲であると推定されています。
「感染症と感染症が密接に保護されていない状態で接触」なので、そりゃ家族で感染しますよね。インフルエンザでも、家族に感染者が出れば隔離するってパターンも多いです。
たとえば、武漢では、1チームあたり最低5人、計1800人を超える疫学者のチームが1日に数万人の連絡先を追跡しています。連絡先のフォローアップは骨の折れる作業であり、特定の密接な連絡先の高い割合が医学的観察を完了します。その後、連絡先の1%〜5%がCOVID-19の検査で確認された症例でした。
2月17日現在、深圳市では、特定された2842人の密接な接触者のうち、2842人(100%)が追跡され、2240人(72%)が医学的観察を完了しています。密接な連絡先の中で、88(2.8%)がCOVID-19に感染していることがわかりました。
2月17日現在、四川省では、25493人の特定の密接な接触者のうち、25347人(99%)が追跡され、23178人(91%)が医学的観察を完了しています。密接な連絡先の中で、0.9%がCOVID-19に感染していることがわかりました。
いわゆる濃厚接触者ですね。やはりトレースできるのは大事ですね。
広東の発熱外来(fever clinic)内では、COVID-19ウイルス陽性のサンプルの割合は、1月30日のピークが0.47%だったピークから2月16日の0.02%に減少しました。広東省全体では、約320,000の発熱外来のスクリーニングの0.14%がCOVID-19陽性でした。
発熱外来とは、SARS以降にできたクリニックなんでしょうか? ここ分かっていなくてすいません。
約32万件のスクリーニングで0.14%=448件が陽性らしいですが、偽陰性を含めると実際はもう少しいるんでしょうか。とはいえ、ピークに比べて20分の1以下に収まったのは目覚しい成果なんだろうな、と思っています。
子供の感染について
18歳以下に関するデータから、この年齢層への攻撃率が比較的低いことを示唆しています(報告されたすべての症例の2.4%)。武漢では、サンプル検査の中で、2019年の11月と12月および2020年1月の最初の2週間に陽性の子供はいませんでした。
入手可能なデータから、血清学的研究の結果がない場合、子どもの感染の程度、子どもが伝染で果たす役割、子どもの感受性が低いかどうか、または臨床的に異なって現れるかどうか(すなわち、一般に軽度の症状)を判断することはできませんでした。合同ミッションは、感染した子供が大人の世帯での接触追跡を通じて主に特定されていることを学びました。注目すべきは、共同ミッションチームがインタビューした人々は、子供から大人に感染が起こったエピソードを思い出せなかった(could not recall episodes)ということです。
後半は喜ばしい話ですが、episodesという表現をどう受け止めて良いのか分からないので保留します。
子供の感染は、主に自宅のようです。学校では無いのが、ふ〜んでした。データが無いだけでしょうか。中国が先手を打って学校を閉鎖していた?
症状について
COVID-19の症状は非特異的であり、病気の症状は無症候性(無症候性)から重度の肺炎と死亡にまで及びます。 2020年2月20日、55924症例に基づく典型的な徴候と症状には、発熱(87.9%)、乾いた咳(67.7%)、疲労(38.1%)、痰が出る(33.4%)、息切れ( 18.6%)、のどの痛み(13.9%)、頭痛(13.6%)、筋肉痛または関節痛(14.8%)、悪寒(11.4%)、悪心または嘔吐(5.0%)、鼻づまり(4.8%)、下痢(3.7% )、喀血(0.9%)、結膜充血(0.8%)。
これは普通の風邪と見極めるのが難しいですね。
COVID-19の人は一般に、感染後平均5-6日で、軽度の呼吸器症状や発熱などの徴候や症状を発症します(平均潜伏期間5-6日、範囲1日〜14日)。
mean incubation period 5-6 days, range 1-14 days とあります。だいたい1週間ですか。
COVID-19ウイルスに感染したほとんどの人は、軽度の病気で回復します。検査室で確認された患者の約80%は、非肺炎および肺炎の症例を含む軽度から中等度の疾患を有し、13.8%は重度の疾患(呼吸困難、呼吸頻度≥30/分、血中酸素飽和度≤93%、PaO2 / FiO2比< 300、および/または24〜48時間以内に肺野の50%を超える肺浸潤)、および6.1%が重大(呼吸不全、敗血症性ショック、および/または多臓器不全/不全)。
無症候性(病気の症状を感じることができず、外見上も何の徴候もみられない状態)感染が報告されていますが、同定/報告の日に無症候性である比較的まれな症例の大部分が病気を発症し続けました。真に無症候性の感染の割合は不明ですが、比較的まれであると思われます。
無自覚のまま感染する例は稀だそうです。そして、その発生はどれくらいかも分からないようです。
重度の疾患および死亡のリスクが最も高い個人には、60歳以上の人と、高血圧、糖尿病、心血管疾患、慢性呼吸器疾患、および癌などの基礎疾患のある人が含まれます。小児の疾患は比較的まれで軽度のようで、報告された症例の約2.4%が報告されています。19歳未満の人々のごく一部が、重度の疾患(2.5%)または重篤な疾患(0.2%)を発症しています。
死亡率について
2月20日現在、55,924の検査室確認患者のうち2,114人が死亡しています。特定の疾病に罹患した母集団のうち死亡する割合(CFR)は3.8%(注:少なくとも一部は肺疾患を含む症例定義を使用して特定されました)。全体的なCFRは、送信の場所と強度によって異なります(武漢では5.8%、中国の他の地域では0.7%)。
中国では、全体的なCFRはアウトブレイクの初期段階で高く(1月1日から10日までに症状が発現した症例では17.3%)、2月1日以降に症状が発現した患者では経時的に0.7%に低下しました。共同ミッションは、ケアの標準がアウトブレイクの過程で進化したことに注目しました。
PDFからの引用です。当初はCFRも高かったようですが、医療により低く抑えられたと考えるべきでしょう。
PDFからの引用です。この図がわかりやすいですよね。
死亡率は年齢とともに増加し、80歳以上の人の中で最も高い死亡率を示します(CFR 21.9%)。CFRは、女性と比較して男性で高くなっています(4.7%対2.8%)。職業別では、退職者である(being retirees)と報告した患者のCFRは8.9%で最高でした。併存疾患がないと報告した患者のCFRは1.4%でしたが、併存疾患のある患者の割合ははるかに高く、心血管疾患のある患者では13.2%、糖尿病の9.2%、高血圧の8.4%、慢性呼吸器疾患の8.0%、がん患者の7.6%。
リタイアした高齢者のCFRが8.9%という意味だと思うのですが、職に就いていない60歳以下無職の方はどうなんでしょう。免疫力が通常より低いなんてあるのでしょうか。
症状の回復について
軽度の症例の発症から臨床回復までの時間の中央値は約2週間であり、重度または重篤な疾患の患者では3〜6週間です。
回復する患者の数が増えています。 広東省CDCからの2月20日の報告書には広東省で特定された125の重篤な症例のうち、33(26.4%)が回復し、病院から解放され、58(46.4%)が改善し、軽度/中等度として再分類されたことを示唆しています。現在までに報告された重症例のうち、13.4%が死亡しています。症例と接触の早期発見により、早期治療が可能になります。
この意味で、和歌山県知事が「国には従わない」ときれたのも納得できますよね。早期発見が大事のようです。
じゃあ、近畿圏内に大量に検査できる施設あるんかって話なんでしょうけど中国は急ごしらえで作ったんでしょうかね。その辺りは読んでも書いていなかったか、僕が読みきれていません…。
中国の対応
未知のウイルスに直面して、中国はおそらく歴史上最も野心的で機敏で攻撃的な封じ込め活動を展開しました。
この封じ込めの努力を支えた戦略は、当初、普遍的な温度監視、マスキング、および手洗いを促進する国家的アプローチでした。しかし、アウトブレイクが進化し、知識が得られると、実装を調整するために科学とリスクに基づいたアプローチがとられました。特定の封じ込め対策は、州、郡、さらにはコミュニティの状況、設定の能力、およびそこでの新規コロナウイルス伝播の性質に合わせて調整されました。
この新しい呼吸器病原体の急速な広がりを封じ込める中国の大胆なアプローチは、急速にエスカレートし致命的な流行の経路を変えました。特に説得力のある統計は、事前チームの作業の初日に、中国で新たに確認されたCOVID-19の2478症例が報告されたことです。 2週間後、このミッションの最終日に、中国は409の新たに確認された症例を報告した。この中国全土でのCOVID-19の減少は現実です。
中国はすでに、そして正当に、経済を強化し、学校を再開し、COVID-19による伝染の残りの鎖を封じ込めるように働いているにもかかわらず、社会のより正常な見た目に戻るために取り組んでいます。適切に、封じ込め戦略の重要な要素が解除されたとき、新しいCOVID-19のケースまたはクラスターにすぐに反応する必要性の明確な認識と準備とともに、科学に基づいた、リスクに基づいた段階的なアプローチが取られています。
日本が現在、「封鎖」「封じ込め」を行っていますが、3月中旬から「いつまでやってたらいいの?」「もう経済活動初めていいの?」みたいな流れになるでしょう。
その時、中国がどのようにして封鎖を解いたかが参考になりそうです。
世界が取るべき対応
COVID-19ウイルスは、非常に伝染性が高く、迅速に広がり、あらゆる環境で健康、経済、社会に多大な影響を与える可能性があると考えられる新しい病原体です。それはSARSではなく、インフルエンザでもありません。よく知られた病原体のみに基づいてシナリオと戦略を構築すると、COVID-19ウイルスの伝播を遅らせ、病気を減らし、命を救うために考えられるすべての手段を活用できないリスクがあります。
複数の環境でCOVID-19ウイルスの感染を封じ込めるための中国の妥協のない厳格な非医薬品対策の使用は、グローバルな対応に不可欠な教訓を提供します。中国でのこの独特で前例のない公衆衛生対策は、コミュニティの感染が広がっている湖北と、家族の集団が流行を引き起こしたように見える地域の両方でエスカレートしている事例を覆しました。
グローバルコミュニティの多くは、中国でCOVID-19を封じ込めるために採用されてきた対策を実施するための考え方や実質的な準備がまだ整っていません。これらは、人間の伝送チェーン(transmission chains in humans)を中断または最小化することが現在証明されている唯一の手段です。これらの対策の基本は、症例を即座に検出するための非常に積極的な監視、非常に迅速な診断と即座の隔離、密接な接触の厳密な追跡と隔離、およびこれらの対策の非常に高度な集団理解と受け入れです。
改めて有識者に聞きたいのですが、Fundamental to these measures is extremely proactive surveillance to immediately detect casesが推奨されていますが、一方で「PCR検査を求めて殺到するより、疑わしく症状が軽いくらいなら家にいろ」って矛盾してませんか?
どう解釈したらいいんでしょうか。
これは偉い人たちの回答を期待するしかない。分からんわ。
主な推奨事項(対応中の各国)
1.最高レベルの国家対応管理プロトコルをただちに有効化して、COVID-19を非医薬品の公衆衛生対策に含めるために必要な政府および社会全体のアプローチを確保します。
2.積極的かつ網羅的な症例発見、即時のテストと隔離、骨の折れる連絡先の追跡、および密接な連絡先の厳密な隔離を優先します。
3. COVID-19の重大性とCOVID-19の拡散防止における彼らの役割について、一般の人々に十分に教育する。
4.非定型肺炎のすべての患者の検査、上気道疾患 or / and 最近にCOVID-19暴露(exposure)のある患者のスクリーニング、既存の監視システムにCOVID-19ウイルスの追加検査を実施することにより、監視を直ちに拡大してCOVID-19伝染連鎖を検出する(例:インフルエンザ様疾患およびSARIのシステム)。
5.必要に応じて伝送チェーンを中断するためのさらに厳しい手段の展開のために、複数セクターのシナリオ計画とシミュレーションを実施(例:大規模な集会の中断、学校と職場の閉鎖)。
なるほど、ここまでしたほうが良いんですね。プロセスが全くデタラメだったけど、学校の閉鎖は間違っていなかったのかしら。
にしても、「早期発見」と有識者の「検査し過ぎ」が対立しているようでモヤモヤします。どういうことだ??
皆さんへ
1. COVID-19は新しく、懸念のある疾患であるが、アウトブレイクは適切な対応で対処でき、感染した人々の大部分が回復することを認識する。
2.頻繁に手洗いし、くしゃみや咳をするときは常に口と鼻を覆うことにより、COVID-19の最も重要な予防策を採用し、厳密に実践する。
うがい、手洗い、咳エチケット。
だいたいの人が回復しています。
自分は死ぬかもしれないと低い確率を過大評価しない。そういうバイアスに人間は負けそうになったけど、これまで科学の力で勝ってきました。
繰り返しになりますが、報告書はすでに収束を迎えつつある中国を参考に、これから対策の手を打たなければならない私たち日本において非常に有効です。ぜひ、ご一読を。