平和だった「恋愛弱者のクリスマス」を戦いの場に変えてしまったもの
クリスマスは彼氏・彼女とデートしなきゃいけないなんて一体誰がいつ決めたんでしょう?
調査してみると、実際もうクリスマスに外でデートしている独身カップルは2割程度しかいません。案外みんなデートしないんです。
「いやいや、イルミネーションとかに行けばカップルだらけだ」
そう言いたい人もいるでしょう。状態としてはカップルかもしれませんが、別に付き合ってはいないかもしれないし、夫婦かもしれません。そして、目を凝らしてみていると、意外と一人でインスタ映え狙いのカメラ女子やカメラ小僧も多いことがわかります。
では、クリスマスデート文化はいつから始まったものなんでしょう?現代日本の未婚化の発端となった1980年代の狂騒ぶりを見つめ直してみたいと思います。
携帯もスマホもウインドウズもなかった時代のお話です。
こちらの記事をどうぞ。
記事内にも書きましたが、クリスマスと言えばこの山下達郎の曲に乗せた牧瀬里穂のJR東海のCMだと思います。今見てもエモい、素晴らしいCMです。
でも、これよく見て頂くと、違和感ありませんか?
シチュエーション的には、「遠距離恋愛の彼氏がクリスマスに故郷に帰ってくる」というものなんですが、プレゼント持っていくのは女性の方です。もしかしたら二人はまだ付き合っているわけではなく、これから女性の方から告白するのかもしれない。そんなことも考えられます。
そもそも、男がプレゼント持って告白する文化も実は80年代後半に生まれたものだったりします。案外新しい習慣なんです。
牧瀬里穂が可愛いので何の疑問も皆持たないけど、これさらに意地悪い見方をすると、このバンダナ男は牧瀬里穂の彼氏でもなんでもなくて、牧瀬里穂はただのストーカーだったという話としてこのラストシーンを見ると、逆に急にホラーサスペンス物になってしまいます。もしかしたら、牧瀬里穂が持っているのはラッピング袋でカモフラージュした刺身包丁かもしれない…。だとすると、牧瀬里穂の笑顔の意味も変わるし、急に怖く見えてきませんか?
さらに、大体が、この山下達郎の曲って、実は「失恋した人のぼっちクリスマス」の歌なんですよね。決してラブラブ恋愛ソングではない。同様に、同時期のワムの「ラストクリスマス」も失恋ソングです。
クリスマスなんて、昔からそもそも7割もいる恋愛弱者にとっては、何の関係もない日でした。でも、圧倒的マジョリティの彼らに動いてもらわないと儲からないと大人たちは考えたわけです。彼ら・彼女ら寂しい独身たちのなけなしの金を使わせるためにはどうすればいいか。
それが、テレビ、雑誌、音楽などのメディアを総動員した、クリスマスデート文化情報のシャワーだったわけです。いわゆる当時の消費主義洗脳装置だったと考えるべきかもしれない。
80~90年代、ティファニーの店は12月の売上だけで年間もったというくらい、クリスマス商戦さまさまだった。
平和だった恋愛弱者のクリスマスを戦いの場に変えてしまったのは、当時の大人達の商売魂でした。バブル真っ最中でしたしね。
恋愛弱者たちは当然戦いの場に駆り出され、なけなしのお金を使わされたものの、結局彼女のいる率3割はその後30年も変わりません。徒労の消費に終わっただけでした。
もうそんな儲け主義に乗せられるのはやめていいんです。24日のイブもいつものように普通に仕事をして、普通に家に帰りましょう。記事にも書いた通り、これからは「ウチで過ごすクリスマス=ウチスマス」の時代かもしれませんよ。
長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。