変化に立ち向かう人に贈るエール
この20年の幸せで生産的な人や組織に関する研究の進歩は著しい。特に、不確実性が避けられないこの現実の中で、いかに前向きに進むかに関して重要な進歩があった。
組織行動学や組織心理学の権威であるネブラスカ大学のフレッド・ルーサンス名誉教授は、生産性や健康などのアウトカムにも直結する、訓練可能な幸せを研究し、「心の資本」(Psychological Capital)と呼んだ。
そして「心の資本」は、Hope(道は見つかると信じてる力)、Efficacy(現実を受け入れて行動する力)、Resilience(困難に立ち向かう力)、Optimism(前向きなストーリーを創る力)という4つの能力からなることを明らかにし、これらの頭文字をとって「内なるHERO」と呼んだ。
この研究と独立に、起業家精神(アントレプレナーシップ)の分野では、ハーバードビジネススクールのサラス・サラスバシー教授が、成功した起業家が持つ行動の特徴である「エフェクチュエーション」を提唱した。
従来のビジネスパーソンが、計画可能な利益を前提とするビジネス判断を行うのに対し、成功した企業家が、許容できる損失からスタートし、計画は持たずに、既に持っているものを活用し、行動しながら資源を段階的に蓄積しながら前進していくのである。
この二つの有名な研究は、どちらも不確実性が避けられない現実の中でいかに前向きに進むかを、データに基づき実証したものである。前者は人や組織の心理の観点からこれを捉えようとしたものである。後者は、起業という観点からこれを捉えようとしたものである。
考えてみると、両者では、分野が異なるために違う言葉が用いられているが、本来、重なるところが多いはずである。そこで、この両者で論じられている概念や特徴を統合することを試みた。両者の概念を蒸留して、一貫性のある説明ができないかを試みたものである。
以下にまとめたものを見てみると、ドラマやアニメの主人公(HERO)ではごく普通に見られる行動であり特徴ともとれるが、ビジネスの世界ではこれまで表だって認められていなかったことばかりである。
是非、予測不能な変化で、変化を機会に変え、前進する人たちにエールを送り、隠れたHEROの力になればと思う。
----予測不能な変化に立ち向かう方法、そして幸せの方法-------
[Hope]「道は見つかると信じている」
・「実験と学習」を仕事で実践する
・目的にこだわり、必要なことは何でもやる
・仕事の役割や資源は、実績によって獲得する
[Efficacy] 「現状を受け入れて行動する」
・現状を受け入れ、既に持っているもので進み始める
・検討はほどほどにして、先が見えなくとも行動する
・新たな人や知識とつながる
[Resilience] 「困難には立ち向かう」
・許容できる損失を明確にし、その覚悟を決める
・やるべきことは、素直に実行する
・困難には立ち向かい、最高の学びの機会にする
[Optimism] 「前向きなストーリーを創る」
・偶然の機会や出会いを活用する
・協力者をつくり、互いに助けあう
・変化の中にチャンスを見出す