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大企業の「他社で武者修行」は有効か?

私自身は新卒して一貫して同じ会社で働き続けて(在職期間18年と3か月)、退職と同時に独立起業してしまった。なので転職活動はおろか職務経歴書さえ書いたことがない。なので、偉そうなことは書けないし言えないことを先に言い訳しておく。(えへん)

三井住友海上火災保険は出向や社外での副業など「外部での経験」を社員が課長に昇進するための前提にする。大手企業で管理職の昇進に外部経験を課すのは珍しい。出向などで得た知見や人脈を社内で生かし、新たな事業の開発を促す。損害保険は主力の火災や自動車保険の成長が頭打ちになっており、多彩な人材の育成や外部との連携強化が課題になっていた。外部の企業や官公庁に出向する機会を確保した上で、2030年度にも始める。製造業や保険でのつながりが深い自動車販売店、官公庁、ベンチャー企業などへの出向を想定している。

だそうだ。
 今までも多くの大企業で出向も人材交流もあっただろう。ただ、「社員が課長に昇進するための”前提”にする」というのは今まであまり聞かない事例だ。

2030年開始は遅すぎるのか?

2030年度に開始、というのを見て、「おっそ!これだから大企業は!」と思うベンチャー村の村民もいるかもしれない。現にNewsPicksでは「2030年…これが大企業のスピード感か…」というコメントもついている。
 しかし、大企業というのは大きな組織で成り立っているのだ。(ベンチャーは「30人、50人、100人の壁」とかいって、大組織化が出来なくて、よくコケる)
 組織で大切なのは規律だ、ルールだ。明記されていようが不文律だろうが規律は大切だ。それが無くては大人数をまとめることなどできない。年功序列は崩れ始めたとはいえ、現在も、一定、特に大きな組織では根強く機能している。今すぐこんな新しいルールを導入してしまったら、「外部経験のない」次の課長候補が抜かされることになる。社内の中核ともいえる「次期管理職候補」に、”おれらを頭ごなしに飛ばしやがって…!!”なんて不満を持たれたら、それこそ組織崩壊の序章である。課長昇進の前提となる武者修行ならば、2週間の夏期講習レベルではダメだろう。2~3年は他組織で頑張ってこい!というか、そこでも成果を出してこい!ということになる。人選・受け入れ側との調整、戻ってきてからの受け入れ・受け入れ側との調整含めて最低でも4-5年はかかりそうだ。(これが大企業)今はコロナ禍真っ最中の有事だからすぐに受け入れ側組織も見つかりにくいかもしれない…という危惧もあって2030年開始。なにせ今回は社員が課長職へ昇進するための「条件」なのだ。2030年開始というのは、その準備期間の長さ、周到さにむしろ三井住友海上社の本気を感じる…!!

「武者修行」は最近のブーム

課長職へ昇進するための条件とするのは新しいが、「武者修行」自体は珍しくない、むしろ最近の大企業のブームともいえる気がする。

ごく最近の記事だけでも、これだけ武者修行のオンパレードである。日本の大企業、特に金融やメーカー、品のいい大手企業は社内に「武士」を求めている…!!「武者」を育てたがっている…!!
じゃあ、どこに修行に出すのか?…といえば、結構、スタートアップが候補にあがるらしい。そのため当社にも、たまにそんなお話が来る。

当社は「武者修行」はウェルカムですが、いわゆる”夏期講習タイプ”は困ります!

当社、WAmazingは大企業からの「武者修行」はウェルカムである。大企業の課長候補といえば基本的には地頭がよく仕事熱心で出来る人なのだろう。そんな人はスタートアップは採用するのも一苦労なので、ぜひいらしてくださいと大歓迎したい。もちろん企業と人の相性もあるから、お見合い(面談)して相性はしっかり確かめなくてはお互い不幸になるので受け入れは慎重にしたいものだが。
ちょっと迷惑なのは数週間から数か月の”夏期講習”タイプの武者修行だ。受け入れるスタートアップ側としても真剣に、その人が当社にいる間に成長できるプロジェクトやポジションを用意しなくてはとか考えるわけです。で、そのポジションやプロジェクトが数週間、数か月で完結するならいいんですけどね…そんな3分間クッキングみたいな仕事はないわけですよ、さすがに、スタートアップだとしても。せめて…せめて1年以上じゃないですかね。できれば2-3年ですよね。
だって、武者修行でしょう…?鬼滅の刃でいったら、主人公が岩を切れるようになるまでですよね…?
(ただしスタートアップの創業から5年後の生存率は15%(※)というデータもあるようなので、数年もいたら本当の武者修行になっちゃうかも。(;'∀')でもまぁ、帰るところ(大企業)あるから、いいよね!)
※https://p-m-g.tokyo/media/pickup/3543/

「他社で武者修行」は人生100年時代には必須だと思う

とにもかくにも、どこで武者修行するにせよ、新卒大企業エリートパーソンには「他社で武者修行」はとても良いことだと私は思います。
だって、人生80年ってこないだまで言われてたのに、ヌルっといつの間にか20年延びて人生100年になってるんですよ?!
それでも企業の定年は変わっていないし、むしろ「45歳定年説」なんて出て波紋を広げているわけです。コロナ禍の業績不振を理由に早期退職希望者を募る企業も増えています。
そんな社会環境の中で1つの企業の働き方だけを身につけて、最終的には「1人」しかなれない社長を目指すのは危険すぎます。
(そういう意味では官僚も、1人しかなれない「事務次官」目指すのは危険すぎますね…)
1つの企業内で通用する仕事だけしてきて50歳になったときに、ほいっと外海の荒波に放り出されて、泳ぎ切れるか、という問題です。
「トップ(社長)じゃなくていい、役員で。」って言われましても役員も数名ですから…。「いや、役員じゃなくていい。部長までで。」って言われましても部長も数十名ですし…。「いや、部長じゃなくていい、課長までで。」って言われましても…そうはいっても中間管理職は上にも下にも気を使いますし…むしろ目の前の仕事だけしてスキルを磨けるイチ社員のほうが給料鑑みてのコスパは良いかもしれません。
このことを深く深く考えさせられるのは内館牧子氏の小説「終わった人」です。ものすごく、ものすごっっごく面白いので是非ご一読を。
この主人公は、東大法学部卒業してメガバンクの出世競争をトップで走っているランナーなんですよ。それがゆえに、他の世界を見る暇も、そんな機会もなかった。そんな主人公が最後の最後で戦いに敗れた。そこからスタートする物語なんです…。

前職でみた「あるポスター」

大学卒業して新卒でリクルートに入社した。仕事の成果にはめちゃくちゃ厳しい会社なのだが居心地が良かったので結果として18年3か月も勤めてしまった。もう名前も忘れたのだが、社内の研修プログラムがあった。どんな名前だったかな…。コーチング研修とかEXELマクロ研修とか一般的なビジネススキルの研修で誰でも申し込めた。(参加には上限枠があるので、申し込み多数になった場合は志望動機などで選抜された)
入社してまだ比較的年数の浅いとき、その名前も忘れてしまった研修プログラムの啓発ポスターが社内に貼られていた。キャッチコピーは、「会社の中で、えらくなったって、しょうがないじゃない。」みたいな内容だった。
つまり、「外に出てもツブシの効く人材でいるために学び続けよう!」ということが言いたかったのだと思う。しかし、そのキャッチコピーはさすがにやりすぎだったのか、人事部から物言い(クレーム)がついたのか、それ以来、そのポスターを目にすることは無かった。


…でもたぶん、そういことなんです、きっと。

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