武田薬品工業が新薬の効き目に応じて患者から支払を受ける「成功報酬型」制度に基づく販売方式を採用することを決めた(4月29日日経新聞)。高額医薬品は公的な医療保険の適用外になるケースが多いが、それがボトルネックになって高額な医薬品が研究されないのは困る。それを、成功報酬という形式で導入すれば、効き目のあった患者からすれば高額医薬品でも支払う価値があるだろうし、政府から見ても効き目のないことがわかれば「支援の要なし」となり医療費の伸びが抑えられる、という。
何千万円という高額医薬品を試すことが出来る患者は、しかし、その場合一部に限られてしまう。「お金さえあれば買うことが可能な命」、「お金のある人のみが試せる権利」は正しいかどうか。国民全体の理解を得難い面がある。
日本の医薬費はこの10年、平均2.5%/年のペースで増加している。二年に一度の薬価改定による引下げもものかわ、新薬の収載・効能追加などにより、薬剤費は大きく増加してきたこともわかっている。オプジーボ、キイトルーダ、ソバルディ、ハーボニーなどが高額医薬品として知られる。必要な患者から見れば、必要な経費に違いない。
それを、マクロ的な視野で捉えるなら、一部の患者のみに高額医薬品が使われることに、なんらかの形で歯止めはかける必要がある、ということになる。本来は効果のある医薬品が低廉化することが望ましいが、かといって、見通しのない時分から、時間も資金も投下しなければ研究開発がままならない医薬品メーカーにとって、製品で利益をあげられる期間は必要に違いない。
以上見てきただけでも、薬価はあらゆる側面から難しさが残る。成功報酬型の販売方式が医薬品の品質を高め、人間に立ちはだかってきた難病を次々治療可能なものに変えていく機会になるのか。どんな病気でも助ける、助かる希望を誰もが持つことが出来るミクロ的見地と、日本の財政を圧迫しないよう医療費を抑えるマクロ的見地をいかにバランスよく行うか。一つの答えになるか、見て行きたい。