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身体的暴力だけではなく言葉の暴力が増えているのは「欠乏の心理」による


大きな話題となっているこの事件。高校生に重症負わせておいて「正当防衛だ」と主張する精神状態といい、そもそも電車内で喫煙するという行動からしてヤバい人間であることは間違いない。傷害罪ではたいした罪にはならないだろう。またこんな人間が社会に出てくるのかと思うとぞっとする。

人間だから怒りの感情はあるのは当たり前だ。しかし、どんな理由があったにせよ、暴力は認められない。俺の暴力は認められるが、お前の暴力は認められない、なんてあるわけない。

それは当然ながら、友達間であろうが、親子間であろうが、夫婦間であろうが同じである。

とはいえ、実際に世の中に暴力はある。

少し古い記事だが、この内閣府の「男女間における暴力に関する調査」がとても有意義であるのは、「男女間の暴力=男から女に対する暴力」と多くが反射的に想像する思い込みを根底から覆してくれるからだ。

内閣府は26日、男女間の暴力被害に関する調査結果を公表した。過去に配偶者から暴力を受けた経験のある人は22.5%に上り、女性は25.9%、男性は18.4%だった。

暴力は何も身体的暴力に限らない。昨今のネットでのいじめから自殺に追い込むように(指殺人)、言葉もまた暴力になりえる。会社などにおけるパワハラも身体的暴力よりも水面下で世の中に出ない「言葉による精神的虐待」という暴力の方が深刻である。

そして、こうした言葉で精神的虐待をし、相手の心を殺しにかかる人間は、「バカ、アホ」などというあからさまな罵詈雑言など使わない。そもそも知識があり、弁が立ち、皮肉たっぷりに相手を冷徹に追い込む。

そして、そうした言葉の暴力は、今夫婦間を壊す大きな要因となりつつあるのだ。

2000年と2020年の男女の離婚申し立て理由が大きく様変わりした。「性格の不一致」という差しさわりのない理由を除けば、かつては浮気や嫁姑問題が多かったが、もはや離婚理由は「金と暴力」問題に集中している。何も妻だけが被害者ではない。妻からの夫に対する暴力や虐待も増えてる。

そうした内容について、社会の大人たちは「まるでそんな事実などない」かのように透明化してしまう。不都合な真実に蓋をして隠すのは大人として下の下である。

その内容について、プレジデントオンラインで記事を書きました。ぜひ熟読していただきたいと思います。


とても嬉しい感想も寄せられています。ありがとうございます。

なんでみんなイライラするんでしょう?その答えは「欠乏の心理」によります。お腹が減ったらイライラします。お金がなければイライラします。他者からの承認がなければイライラします。自己の社会的役割がなければイライラします。

イライラしたり怒ったりするのは何かが不足しているからです。離婚の原因が「金と暴力」に集中しだしたのも、2000年以降給料が全然増えない時代を反映しています。ほら「金持ち、喧嘩せず」というじゃないですか。

さて、記事の最後の方で、精神的虐待だと本人は思っていないが、それは相手にしてみたら暴力に等しい台詞の例を5つあげています。

「前にも言ったよね」
「なんでできないのかな?」
「どうして分からないの?」
「どうしたらできるか教えて?」
「もういい。私がやるからやらなくていい」

配偶者や子どもだけではなく、会社で部下とかにもいってないでしょうか?典型的なイライラ言葉です。言われた方は、地味にボディブローのように心にこたえます。

ヤフコメにこんなコメントがありました。

↑これ、日常的に妻に言われている。
仕事でメンタルがつかれているときなど、本当にぶちのめされる。

しかし、それに対して、別の人がこんなことを書き込んでいます。

コメ主が何度言われてもできないダメ夫ってことだろ?
明治大正昭和の夫婦関係を懐かしがってても無駄でしょ。奥さんに指摘されたことちゃんとやりなさいよ。奥さんは仕事で疲れてたって育児家事夫の教育で多忙で限界来てるんだから。そのへん分かりなよ
奥さんは家のこと全部やってくれてるんじゃないの?「仕事で~」っていうのは言い訳。ぶちのめされてるのは奥さんの方だよ。まだ言ってくれてるだけマシでしょ。「お互いを尊重」ってどの口が言ってるの?w

まさにこれこそが言葉の暴力です。


こんなコメントもありました。

靴下丸めないでっ!と毎日言ってますがこれも小言かしら…。

これに対してはほっこりするようなコメントがきています。

>丸めたまま洗って丸めたまま干せば良い
>うちの奥さんは丸まったまま洗います。それで治りますw
>うちも同じで、靴下が丸まったまま落ちてます。言うと、カタツムリみたいで可愛いだろ~って言い返されました。

たとえ夫婦であっても他人です。自分の思い通りに動いてくれるはずもないし、性格も価値観も完全一致なんてしない。夫婦の間で義務と責任を押し付け合うような関係性は果たして長続きするのでしょうか?

人間には人を判断する思考の癖というのがあり、0点から始まって良い所を加点してく加点思考の人と100点から始まって悪い所を減点してく減点思考の人がいるが、女性は20代の頃は加点思考割合が高いのに対し、40歳過ぎると減点思考が多くなります。減点思考の悲しいところは、必ず最後には誰でも0点になってしまうということです。

20代の加点思考のあるうちに好きな人見つけて結婚するものの、貯めたポイントを40代以降の結婚生活で0点にしてしまうのでしょうか。

こんなコメントもありました。

我が家は、罵り合いだけは避けるようにしてます。自分の主張を繰り広げる中に、相手を侮辱する表現や貶めるような発言が混じるのは違うよねというのは、認識として一致してるかな。意見の相違やぶつかり合いになった時は、自分はこうしたい、こうして欲しい、家族としてこうありたい、というビジョンのすり合わせをやります。面倒でも、必ず。「子供を含めた、家族にとってどれがベターか」を目指すことが、私たち夫婦の手助けになっている気がします。それぞれの夫婦間で上手いやり方があるんでしょうけど、何をやってもうまくいかない夫婦も世の中にはいますからね。。。 こればっかりはしょうがない。

とても素敵だと思います。言葉は相手を傷つけるためにあるものではなく、自分の思い通りに相手を動かすためにあるものでもなく、相手の考えや気持ちを聞くためにある。相手の話を聞けない人間ほど「相手がわかってくれない」と愚痴る。当たり前です。あなたが相手をわかろうとしていないのだから。

しかし、ツイッターでこんなリプライもきました。

男が書いたと思ったけど、やっぱり男が書いたか。「なんでやらないの?」「なんでできないの?」と言われるより、女性への暴力の方がよほど問題でしょ。それ言われたくらいで離婚考えるんだったら、結婚に向いてないから、結婚するな。

女性への暴力の方がよほど問題?

男性だろうと女性だろうと暴力それ自体が問題なのです。身体的暴力だろうと心理的攻撃という言葉の暴力だろうと、すべての暴力は問題だと言っているのです。男性の暴力は認められないが女性の暴力は認められる、とでも言いたいのでしょうか?だとすれば、宇都宮線で傷害事件をおこした犯人と何が違うというのでしょう?

暴力問題に優先するジェンダー問題なんてあるのですか?暴力の問題は人間の問題です。

この人にはいったい何が足りないのでしょう、と心配になります。


ところでこの写真は映画「Mr&Mrsスミス」の1シーン。

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壮絶でコミカルでちょっと温かい夫婦喧嘩の最たるものは、この映画のブラピとアンジーの殺し屋夫婦同士の喧嘩ですね。喧嘩というより殺し合いw

見てない人はとても面白いのでぜひ見てください。この共演がきっかけで二人は結婚することになるのです。離婚したけど…。


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荒川和久/独身研究家・コラムニスト
長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。