数は来るけど、お金にはならない?地方のインバウンド観光
記事によると、地方の外国人宿泊者は3大都市圏より伸び、シェアが40%を超えたという。ほんの数年前まで、外国人観光客がまったく来ていなかった状況を鑑みると、素晴らしい変化だ。地方の観光産業で頑張ってきた当事者の皆様の努力に尊敬の念はつきない。
しかし、地方国立大学の研究者として、あえて厳しいことを言いたい。地方のインバウンド観光は、現状のビジネスモデルでは早々に限界が来ることが目に見えている。それは、地方の観光地で体験できる"Customer Experience(顧客体験)"が国内旅行の延長線上にあり、海外旅行者にマッチしたものとは言えないためだ。観光客の量が確保できるようになったからこそ、観光客に何を経験してもらうのか、質が問われる。
それを端的に表しているのが滞在日数の短さと消費金額の少なさだろう。記事で最も伸び率が良いと言われている香川県と佐賀県だが、滞在日数と消費金額でみると国内旅行客と同程度の金額しか使われていないことがわかる。
香川県: 3.7泊、18,192円
佐賀県: 3泊、13,232円
また、我が温泉県の大分もインバウンド観光客は多数訪れているが、宿泊日数と消費金額は芳しくない。
大分県: 2.9泊、12,379円
先日、別府市で開催された「世界温泉地サミット」によると、イギリスの温泉地バースでは平均滞在日数は5日前後、消費金額は約400ドルだという。スパと医療温泉に特化したフランスのヴィシーに至っては、平均滞在日数が3週間だ。つまり、海外旅行客を狙うのであれば、1週間程度の滞在と40,000円以上が消費できる観光の仕組み作りが急務となる。
日本でもこの水準に達しているのは、世界的なビーチリゾートとなった沖縄(4.8泊、47,163円)、スキーリゾートの北海道(5.4泊、65,973円)、アニメの聖地巡礼で成功している埼玉県(18.6泊、51,030円)の3県だけである。
TripAdvisor (2016年)によると、1年間で海外旅行に使う予算は平均して約56万円程度という。日本人は平均より少々高く約60万円(26か国中第12位)で、アジア圏内では次点が中国(第16位、約38万円)なので、アジアでは最も高い。予算の多い5か国を見ると、オーストラリア(約118万円)、スイス(約110万円)、アメリカ(約92万円)、イギリス(約90万円)、ニュージーランド(約86万円)となっている。
参考URL:
地方の次の課題は、海外旅行で消費する金額の多い国の観光客に向けて、彼らが魅力だとおもえる"Customer Experience(顧客体験)"をどのように作り上げるかということだろう。大分県に住んでいておもうが、地方には世界の観光地に負けないシーズが数多く眠っている。これらのシーズを掘り起こし、世界の観光客に提供していくことが求められている。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31384010V00C18A6000000/