テレワーク前提社会は訪れるのか? 鍵は中小企業のDX推進
こんにちは、電脳コラムニストの村上です。
4月7日に発令された7都府県での緊急事態宣言を受けて、対象地域では一気に在宅勤務や外出自粛のムードが高まりました。5月の大型連休を前にして、16日に対象を全国へと広げることが決まりました。これにより感染拡大が止まらない都市部からの移動を抑えることが期待されています。また、地方での人ではそれほど減っていないというデータも、この決定を後押ししたと思われます。
首都圏など7都府県に緊急事態宣言が出されたのは7日。それ以降も1日平均約500人の新規感染者が出ているうえ、7都府県以外の地域でも新規感染が増える傾向にある。感染拡大地域から帰省するなどした人が影響しているとの見方が出ていた。
地方での人出はそれほど減っていないとのデータもある。スマートフォンを通じて集めた位置情報をもとに米グーグルがまとめた報告書によると、緊急事態宣言が出ていた東京都の11日の駅の人出は平時と比べて59%減だった。これに対し、対象外の北海道は39%減にとどまった。
大型連休を控えて外出自粛が緩む懸念もあった。政府は危機感を強め、緊急事態の網を全国に掛けることにした。
東京都内ではすでに多くの企業が、可能な限り在宅勤務やオフピーク通勤などの対応をしています。都営地下鉄のピーク時利用者数で見ても、1月との比較で約70%減とかなりの効果が出ています。
(出典)https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/cards/predicted-number-of-toei-subway-passengers/
様々なハードルがありつつ、多くの会社員が在宅勤務をはじめています。これは驚くべきことです。今までも大企業を中心に部分的にテレワークを導入していることはありましたが、利用者はマイノリティでありなんらかのハンディを抱えた社員のための制度という捉え方をされることも多かったでしょう。COVID-19の影響により、ひとっ飛びに「原則テレワーク」というレベルまで推し進めることになりました。
「テレワークはこれまで、通勤難の解消や、育児・要介護者を抱えた社員のワーク・ライフ・バランス向上に効果があるとの受け止め方が多かった。企業側も本音ではハンディを抱えた社員に向けた制度と感じていたように思える」
「実際は違う。労働政策研究・研修機構がテレワークで働く社員に使い心地を聞いた2015年発表の調査でも、育児・介護や家事の時間増をメリットにあげた社員は5~7%にとどまっていた。むしろ生産性や効率性が改善した人が50%超いたことが重要だ。場所と時間にとらわれず働けることが高い生産性を生むと社員も感じたわけだ。テレワークで働く人がどれほど増えたかは、働き方改革の成否を測る重要なリトマス試験紙なのだと思う」
「東京五輪中のテレワークが、一種の社会実験になると思っていた。だがその前に新型コロナで強制的なテレワークが始まった。追い込まれ、ベストな状態ではない"実験"だが、多くの人が『案外仕事はできるな』と感じていると思う。コロナ終息後も、テレワークをハンディを持った社員向けと見るような日本的職場が、完全復活することはないと思う」
この変化は非可逆的であり、完全に元の状態に戻ることはないと思います。
都市圏で大きな効果が出ているのは、出勤自粛&テレワーク推進の効果でしょう。実施にはVPNなどのITインフラやノートPC、クラウドでの資料共有などのツール類が不可欠ですが、ここ数年のデジタルトランスフォーメーション(DX)の流れにのって投資をしてきた企業ほどスムーズに移行ができていると思います。
一方で、これらは大企業だからできてるのではないかという疑問も出てきます。都市圏には大企業が集中しており、そこで働く従業員も多いです。しかし全体を見てみれば、ほんの一握りであることもわかります。日本の企業の99.7%は中小企業であり、約70%の方がそこで働いています。
(出典)中小企業庁「中小企業白書2019」
多くの中小企業では専任のIT担当をおく余裕はなく、定期的な保守契約を外部ベンダーと結び、都度コストを払っている状態でしょう。COVID-19で売上が下がる中、さらに追加コストを支払う余裕がある中小企業は少ないのではないでしょうか。
緊急事態宣言が全国に広がった今、中小企業のテレワーク推進が感染拡大をとめる鍵となります。ここへの投資はDX推進と重なる部分も多いです。政府や経済産業省におかれましては、補助金や一括償却対象の拡大などの施策により手厚くサポートしていくことを検討いただきたいと思います。
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タイトル画像提供:tiquitaca / PIXTA(ピクスタ)
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