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VIVA Technologyで感じたこと

昨年に引き続いてVIVA Technologyに来ました。2016年に始まり、今年が4回目の開催になります。

年々参加者や出展するスタートアップの数も増え、上記の公式サイトによると、125カ国から10万人以上が来場し、出展スタートアップは9,000社とのこと(執筆時点)。最終日は一般開放され、パリ市民などが子供連れでやってくるので、来場者数にはそういう人も含まれるだろうことは留意しておく必要がありますが、実際に来てみて勢いがあると肌で感じられます。

展示やカンファレンスは、原則として全て英語(最終日は地元の人も多いので例外)。CESなどに大挙して押し寄せる”フレンチテック”のスタートアップたちも英語でビジネス出来ることがデフォルト。約20年前に初めてフランスに来た時には、英語の通じないことに四苦八苦したことを思うと、この20年でのフランスの変わりように改めて驚きますし、それができるだけの時間が経ったということでもあります。当時生まれたばかりの赤ん坊が成人しているわけですから。その間の日本が「失われた数十年」を続けて変われないでいることを思うと、なんとも言えない気持ちになるのですが。

展示スペースは昨年よりも増えて、ホール1に加えて新たにホール2も使用されるようになりました。

また、こころなしか、おしなべてブースの作りに空間的余裕がなくなり、ぎっちりと詰まったような印象を受けます。昨年は広々とした印象だったRATPなども、今年はコンパクトになった感じがします。そのぶん、スタートアップがメインという印象が薄れ、大企業が前面に出るようになった、という分析をした知人もいました。

新たにルノーやシトロエンといったフランスの大企業がブースを持った一方で、エアバスの出展がなくなるなど、微妙な変化があります。フランス以外の各国の出展も、昨年大きめのブースを出していたロシアが見当たりませんでしたし、日本のJETROのブースもありませんでした。そのようなわけで日本のスタートアップの出展は、オレンジのアクセラレーションプログラムに参加している数社がオレンジブース内で出展するといった限定的なものとなってしまったことはとても残念です。

一方で、米中の貿易関係悪化の影響を見越してか、中国と中国企業の出展は目立って来ており、昨年のアフリカテック及びアフリカ各国のブースの位置に彼らが入るなど、存在感が増したと思います。個別企業で目立ったのは新規出展のファーウェイでしたが、来年はどうなっていくか、米中関係の動向とともに興味深いところ。

セッションのスピーカーも、カナダのトルドー首相やアリババのジャック・マーが登壇するなど、今年もネームバリューのあるゲストが来場しました。昨年のVIVA Techの開催時にはなかった「黄色いベスト運動」が勃発したことで、混乱を避けるために今年の来場はないのでは、と言われていたマクロン大統領も開催前日に来場が発表され、マクロン氏の政策におけるVIVA Technologyの重要性を改めて感じさせます。昨年末に以下のエントリを書いたのですが、マクロン大統領は、改めて政策の一貫性を印象付けたと思います。

また、ファーウェイの問題で矢面に立たされたカナダの首相を呼ぶといった絶妙な人選も政治の国・フランスの面目躍如で、そのうまさには舌を巻きます。昨年も、直前までブリュッセルでEUに吊るし上げられていたザッカーバーグをGDPR施行当日のVIVA Technologyに呼んで花を持たせるといったフランスの演出と人あしらいには感服してしまったのですが。

こうした要人来場のおかげで、手荷物検査は昨年にも増して厳重で、事前登録と来場パスの印刷を済ませた来場者専用の入口でも、初日の朝10時過ぎに到着して中に入れるまでに1時間ほどかかる、といった状態でした。

首から下げている来場パスの名前や聞こえてくる言葉などから感じる日本人来場者の数は、昨年より増えたと思います。それでも、CESなどアメリカで開催されるスタートアップイベントに比べれば、日本でのVIVA Technologyの知名度や参加意向は今ひとつ。JETROブースがなかったのも、そういう流れの反映なのだと思います。

一方で、iPhoneが出る遥かに前から長らくAppleとその製品についての記事を書き、米西海岸テクノロジーに関して好意的なエバンジェリストとも言える林信行さんが、今回のVIVA Technologyに来場してTwitterに書いていたことが印象的でした。

例えばUberひとつにしても、それがアメリカのようなタクシーすらまともにない場所にもたらした恩恵や、タクシー業界が既得権にあぐらをかいていた日本を含む欧亜の都市に刺激を与えた意義は認めるのですが、歴史の時間軸で考えるとUberのやったことは時計の針を巻き戻した部分があることも否めないと私は感じています。また、Uberには投資家から莫大なお金が集まった一方で、実際にサービスを提供しているドライバーに十分な「分け前」が行っているかという問題があり、これはOTAとホテル業界などでも同様の問題が起きていることを考えると、アメリカ型、特に西海岸型のスタートアップとその成長モデルがこれからも同じように機能し続けるのか、VIVA Technologyでも見かけるSDGsやBetter Life といったキーワードに照らした時に、ダブついたお金がスタートアップに流れて投資家を儲けさせることに高いプライオリティが置かれてしまうことをどう考えるか、そろそろ考える時期に来ているのかな、とも思います。

日本にとって、欧と米で比較すれば、一般的にはヨーロッパは遠い国・関心の薄いエリアであり、圧倒的にアメリカを向いていることはCESやVIVA Technologyへの出展動向・意向を見ていても感じること。しかし、今の世界の全体を見渡した時に、米欧中の3つの勢力がどう動いているか、その中で日本はどうポジションを取っていくべきなのか、ということを考える必要性は増しています。データに関して書いた下記のエントリは、そのほかの分野にも当てはまる部分が大きいと思っています。

スタートアップに限らず、米欧中という大きな勢力の中でどう日本が生き(伸び)ていくかを考える中で、もっとも日本人の目が向いていない欧州をきちんと見定めておくことは、今後さらに重要になるのではないか、ということを昨年にも増して感じた今年のVIVA Techonologyでした。

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これからもよろしくお願いします。
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川端 康夫(アクティブビジョン株式会社 代表取締役)

アクティブビジョン株式会社 代表取締役。大手企業とスタートアップ企業双方の事業創造・成長のサポートを手がけ、短期的な戦略コンサルティングの後に必要となる、地に足のついた伴走型の戦術コンサルティングを手がける。 http://www.aktivevision.com

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