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前回、福島の「語りづらさ」や「絡みづらさ」から、口を閉ざす人間が増えることが、風評やデマに揺さぶられてきた福島復興政策をいつまでもその状態に置くことになると書いた。

いま風評やデマに揺さぶられている福島復興政策の最たるものが、処理水の放出に関する問題だろう。

今回の番組では当時の原発事故担当大臣として、また、その後も福島に足を運び続け、このほど「東電福島原発事故 自己調査報告 深層証言&福島復興提言」を上梓した細野豪志代議士から、非常に真摯な問題提起がなされた。

処理水に含まれるトリチウムの量は、国内外の通常運転中の原子力施設から放出される量よりもけた違いに小さいものであり、世界各国の原子力施設では放出されているものを福島では溜め続けている。

細野氏の著書によれば、福島県民全体の世論を問えば、風評被害への懸念もあって批判的な声が依然強いものの、伊澤史郎双葉町長は「危険なものだから、そこにおいているという新たな風評につながる」、吉田淳大熊町長は「また大地震があった場合、タンクがひっくり返って流れ出す被害も心配。住民機関の足かせになる」と発言されたという。
もちろん反対意見も多い。意見の相違があることは確かで、軽々なことは言えない。しかし、地元からも保管継続の見直しを求める声が上がっていることは認識されるべきだろう。

自民党の柴山昌彦代議士が繰り返し番組内で説明した通り、政府も問題を放置してきたわけではない。
「多核種除去設備等処理水の取り扱いに関する小委員会」を設け、議論を重ねてきた。昨年2月にはこれまでの議論をまとめた報告書が公表されている。

しかし、最終的な政治決断はなされていない。

「不安を持つ方が一人でもいる限りは、丁寧な説明を尽くすべき」
これは正論ではある。
しかしどれだけ丁寧に説明を尽くしたとしても、全員が安心する状況など、現実的ではない。万人が安心するなど、他のどんな技術利用や政治状況においてもあり得ないだろう。こうした、ゴールのあるはずがないミッションを背負わされた組織・人材は必ず疲弊する。そして、その間発生する別のリスクやコストは高まる一方だ。

タンク1基当たりの設置コストは約1億円。日々の見回りの負担も現場に重くのしかかり、広大なスペースを占有することで廃炉作業の効率性や安全性が阻害されかねない状況だ。
地元に寄り添うかのように見えるこうした声は、むしろ地元の復興を阻害し、風評を高めることにもなっている。

番組内で処理水放出に反対意見を述べた飯田哲也氏に対して、細野代議士が
「処理水を汚染水というのはやめてください。風評被害を生み出している」と指摘したのは正鵠を得たものであったし、フランスやカナダ、韓国など諸外国の原子力関連施設から放出されるトリチウムの量と比較してけた違いに少ない福島の処理水の放出を認めない理由を問われた飯田氏の答えが「フランスは再処理施設だから多いのは当たり前。カナダも重水炉だ」では議論にもならない。

下記の記事では、福島の住民への説明活動が取り上げられている。
しかし多くの地元の方が懸念している風評被害を生み出すのは「外部の人間」であることを、肝に銘じなければならない。




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