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メンバーから「怒ってる?」と聞かれるようになったので、代表のトリセツを作ってみた
自分で言うのも何ですが、僕は仕事のとき、かなりサバサバ(たぶん会社で1番くらい)しています。本当はワイワイと話すのが大好きなものの、メリハリをつけてフラットに同世代と働くためです。
しかし、昨年から60人を超える規模のメンバーと一緒に仕事をするようになったところ、「怒ってる?」と顔色を伺われるようになったり、現場との衝突が起きたりすることが増えてしまいました。
そこで先日作ってみたのが、代表である僕の「取扱説明書(トリセツ)」。社内メンバー限定で公開してみました。
すると、2ヶ月ほどでメンバーとのコミュニケーションに変化が。齟齬や行き違いを感じることが減り、大きな効果を感じています。
特に「仕事とプライベートのオンオフが激しい」「50人を超える規模のスタートアップ」経営者の方にはぜひおすすめしたいです。
「つねにドライ」と思われがちな人間です
僕は、仕事とプライベートで、かなりキャラクターに差がある人間です。
ロジカルで端的なコミュニケーションを好む仕事人間モードと、飲むのが大好きで楽しくワイワイ騒ぎたいプライベートモード。
メリハリをつけるために意識的に変えていたのですが、いつの間にかそれが当たり前になっていました。
前職のときは「笑っているところを見たことがない」と言われていましたし、今でも仕事の僕だけを知っている方と、プライベートの僕の双方を知っている方とではイメージにだいぶ差があるはず…(笑)
特に弊社は同世代が集まる会社ということもあり、仕事とプライベートの境界線が分からなくなると事件が起こりやすいため、そのスタンスを変えずに経営して来ました。
とはいえ、これでは仕事から付き合いを始めるメンバーには「いつでもドライ」「プライベートでも、怖そうなタイプ」と思われてしまいます。
仕事はしっかりとやりたい一方、フラットな関係ではありたいですし、普段は一緒にワイワイしたい。それを叶えるために、メンバーとは仕事上の付き合いだけでなく、プライベートでのコミュニケーションも大事にしてきました。
ご飯に行ったりワーケーションに行ったり、シェアラウンジでメンバーと集まって作業したり。それによって、うまく齟齬を解消しながらここまで来ました。
2ヶ月に1回、メンバーとごはんに行こうとするとほぼ1年が埋まる
しかし、会社の拡大とともに事態は思わぬ方向に。
弊社は昨年、メンバーが60人を超えました。人が増えたこと自体は、案件数や事業規模においても良いことばかりだったのですが、そこで思ったのは本当にメンバーと話す時間がないこと。
50人規模を超える会社の経営者の方なら想像がつくかもしれませんが、メンバーが60人いると「2ヶ月に1回、メンバー60人全員と1on1でご飯に行く」だけでほぼ1年のスケジュールが埋まってしまいます。
現実的には、取引先やプライベートな友だちとの予定もあるので、まったくスケジュールの空きがありません。これまで「プライベートの自分を知ってもらう」ことでメンバーとの齟齬をなくしてきたはずが、メンバーとの時間を確保できなくなることで、つねにドライな人間だと認識されてしまう可能性が高くなったこと。
特に仕事上では論理的に、結論ファーストで話すため、ただ質問をしただけでもメンバーには「怒っているのかな?」と感じ取られてしまうことも少なくありませんでした。(これは僕の改善すべきポイントでもあるのですが…)
マネージャーのいる組織体制を作り、メンバーと直接コミュニケーションをとる機会も減っていたので、特に新しいメンバーは僕のことを「怖い」「厳格」と思っていたんじゃないかと思います。
このままでは社内の心理的安全性が下がっていってしまう。特に、Z世代は職場での安心感や上司との関係性を重視する傾向もあるため、メンバーが離れてしまうのではないかと、危機感も覚えていました。
フラットでいたいけど、明確な「差」があるのも事実
もう1つ、忙しくなったことで起きたのがメンバーとの「時間に対する意識」のズレです。
「今度話したいことがあって、1時間もらってもいいですか?」
「会いたいって言ってる人がいるので、ご飯行きませんか」
そんなふうにラフに誘ってくれたり、気軽に質問をしたりと、コミュニケーションを取ってもらえるのはメンバーとフラットな関係である証であり、決して嫌ではないのですが、代表の立場からすると「ごめん、そんな時間はないんだ!」と言いたくなるものでした。
60人のメンバーからの連絡を返して、会社のあらゆることを取りまとめる僕と、社内の1つのプロジェクトにコミットしているメンバーとでは明らかにやるべきことの量が違うからです。
相談なのか報告なのかがわからない連絡や、いつまでに返事が必要なのかが不透明な連絡によって、すれ違いになったり、ストレスを抱えたりしたことも少なくありません。
しかし、よく考えるとこれらはすべて、コミュニケーション不足が問題。もっと言うと「僕の状況を知らない」ことが問題でした。
そもそも弊社はフルリモートの会社ですし、僕とコミュニケーションをとる機会も少なくなってきたことで、メンバーから見ると「代表がどんなことをしているのかがわからない」状況になっていたんですよね。
マネージャー陣に客観的な意見をもらって、トリセツを作成
こうした状況を鑑みて、マネージャー陣とともに作ったのが「代表(KENT)の取扱説明書」です。
・KENTの特徴
・KENTがNGだと思うこと(ピリッとすること)
・MBTIから見る、KENTの特徴
・パーソナリティ
普段話す機会の多いPM陣や組織部メンバーからも、以前から「KENTとのコミュニケーションは難しい!」と言われていたこともあり、こんな項目を立てて客観的な視点で作ってもらいました。
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特に問題になっていた「時間の価値観」に間する話や、僕の思考回路に関する話はしっかりめに。具体的な行動ベースで「Aの行動を取るときはBのようなことを考えている」などと書いてもらいました。
自分のトリセツを作って公開すると「僕を適切に扱ってくれ!」と言っているように聞こえてしまうかな…とも思っていたのですが、そんなこともなく。公開してからは現場と僕との間での認識のズレやすれ違いが少なくなってきたように感じます。
メンバーからも、僕の思考を理解したことで「怒ってるのかな」と思いながら話をすることが少なくなったり、一歩先を見通せるようになったことで業務に対して理解を深められた、と声をもらって胸を撫で下ろしているところです。
メンバーとフラットな関係でいたい。
そのためには、代表である自分を理解してもらわないとうまくいかない。
代表の取説は、そんな経営者なりの葛藤をうまくメンバーにも伝える手段になりました。
メンバーが少ないうちは、直接的なコミュニケーションでカバーすることもできるのですが、ある程度会社の規模が大きくなってくるとそれが叶わなくなるもの。
メンバーが50人を超えてきたら、ぜひ一度トリセツを作ってみるのがオススメです!特に、自分を良く知ってくれている初期メンバーや幹部にヒアリングしてみると、自分でも見えなかった部分に気づき、客観的な視点をもらえるはずです。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。他にもこんな記事を書いているので、ぜひ読んでいただけたら嬉しいです!
今瀧健登 / Imataki Kent(X:@k_hanarida)
Z世代の企画・エモマーケティング会社「僕と私と株式会社」CEO
クライナーを扱う「株式会社シトラム」 CMO
日経COMEMO キーオピニオンリーダー
ESG特化型VC ICJ顧問
株式会社MoreChoice 顧問
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