草野球バットの値段が20年で2倍に!この「値上げ」が受け入れられる理由とは?
WBCが開催し、大谷翔平率いる侍JAPANが、14年ぶりに優勝を果たし、盛り上がりを見せています。ところで、草野球などで使われるバットの値段は値上がりしているをご存じでしょうか。
ミズノの「ビヨンドマックスレガシー」は、税込み5万円を超え、初代「ビヨンド」シリーズと比べて、2倍近い値段になっています。値段が高くても、歴代モデルの中で、ダントツな人気を誇っている理由として、どのような理由があるのでしょうか。
値上げしても、ダントツで人気な理由とは?
このバットが、ユーザーから人気を伸ばしている理由として、大きく分けて、2つあると考えています。
詳しく説明します。
①現状に合わせ、ターゲットを変更している
少子化の影響などにより、少年の野球人口が減少している一方で、大人の野球人気は根強いです。50代に限れば、2016年を境に、野球人口は、増加傾向が続いているようです。
そのため、少年野球のみをターゲットにするのではなく、購買力のある大人にターゲットを変更することで、ある程度高くても、顧客が製品に価値を感じるならば、買ってくれます。「売上=数量×単価」なので、大人にターゲットを変更することによって、数量よりも、単価を上げる作戦を選択したと考えられます。
②値上げに合わせ、付加価値を加えている
前述の記事からの引用ですが、「他のチームも使っているから、手に入れないと負ける」と竹花さんはおっしゃっており、高性能なことがわかります。
草野球は軟式球で試合を行い、軟式球はゴム製で内部に空洞があり、打った際の変形が大きく硬式球より飛びにくいのが特徴です。そのため、退屈な試合になりがちでしたが、その問題を解決したのが「ビヨンド」シリーズでした。
20年で価格が2倍近くになっていますが、人気な理由として、大幅な性能の進化があります。今回紹介した「レガシー」は18年に発売された前モデルより飛距離が7%アップするようです。このように単に値上げをするのではなく、それと同時に顧客が求めていた、飛距離の向上という付加価値を加えています。
このように、顧客が何を求めているのかを追求し、顧客の満足度を向上させることで、値上げをしても反感を買いにくくしているのです。
「安すぎる」と感じられると商品が売れない事例も
私自身の体験談なのですが、ある知人が私にこう言いました。「前職のコンサルタント時代、私が関わっていた化粧ブラシの価格を2500円から8000円に変えた途端、売れるようになりました」。また、ある同僚は「前職で立ち上げたBtoBサービスの値段を3倍にして、やっと売れるようになりました」と教えてくれました。両者の経験した現象は、共に同様の理由で起きています。例えば後者は、年間数億〜数十億円の予算配分を最適化するサービスに関する話なのですが、この規模の予算を決めるサービスが安いと、品質に不安を感じる顧客が多かったようです。
一般的に、価格と需要量は反比例し、価格が高くなるにつれ需要は減っていくと考えられています。しかし、その法則が通用しない場合があります。経験則(例えば、普段より価格が高い電子レンジを購入したら、普通は2年で壊れてしまうところ4年壊れなかったというような経験)により、価格が高いと品質が良いと考え、逆に低価格だと品質への懸念を抱くというように、価格が消費者にとって商品の品質を評価する基準になることで、このような価格と需要量が反比例する現象が起こります。そのため、価格を上げたほうが安く販売しているときよりも販売数量が増える可能性もあるのです。