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「守破離」は循環する気がする

先月の学生向けイベントに登壇した際に、「学生の頃と社会人になってからとで、考え方や感じ方が変わったことはあるか」という趣旨の問いをいただきました。「政策やビジネスのこととか学生として座学で学んだことは知識としてはなんとなく頭に入っていたけれど、腹落ちしたのは実際に仕事で扱うようになってからで、社会人になって15年経つ今でも「あぁ、このことだったのか」と思うような瞬間が多い」と答えました。そのことを年末年始を跨いでぼんやりと考えながら過ごしたのですが、今行き着いた考えが、「守破離は循環する」んだろうなぁという考えです。


守破離とは

「守破離」は、もともとは茶道や武道の修行のプロセスを3段階で表したもので、「守」基本や型を身につける段階、「破」既存の型を破り発展させる段階、「離」基本や応用から離れ、独創的かつ個性を発揮する段階を指すも言葉。その考え方は、ビジネスやコミュニケーション、スポーツの場面においても応用されています。

守る、破る、離れるという伝統的な教えがある。教えを守り習熟するのが第一歩。動作の意味を理解し、時に必要に応じて改善する域に進む。動作の意図を会得することで型から自由になり、自分なりに自然に使えるようになればゴールである。

日経新聞『「守」「破」「離」』

「守」が苦手だった幼少期〜学生時代

「守破離」の考え方によると、何事においてもまずは「守」つまり型をしっかり習得することが重んじられますが、振り返ると私は幼少期から学生時代にかけて、基礎を身に付けるというプロセスが苦手でした。

ピアノ教室では練習曲が楽しいと思えずJポップを演奏することを選んでみたり、縫製も基礎もそこそこに洋服を作ってみようとしたり。基礎の技術がないので、細部がめちゃくちゃだったことは言うまでもありません。大学生になってからも、専攻言語の習得のための反復勉強や暗記は気が進まずいつも赤点ギリギリで、公務員試験を受けるためのミクロ経済、マクロ経済、財政学・経済事情、経営学などの分野の勉強も必要に迫られ最低限やっていたものの、しっくりこない上っ面の理解に留まっていた気がします。

「守」なく、自己流で好き勝手やることを「破」「離」と呼べるのかは微妙なところですが、基礎のないままにその先に行こうとしていたのだと思います。

社会人になって実感し始めた「守」の意義

社会人になって、幼少期〜学生時代に表面的にインプットする一方だった知識を実際にアウトプットする実感を伴う経験を積む中で、ようやく「守」の大事さを実感し始めました。

例えば、公務員試験の時に字面だけ学んだ「リーダーシップ論」。社会人になって15年の間に様々な場面で人や組織のあり方を目の当たりにしたり、自分自身がリーダーシップを発揮することを期待される場面で試行錯誤をしてみたり、「守」の曖昧なままに実践を積む時間が続きました。

そんな中、昨年から講師として携わり始めたKokkara x Minervaの社会人向けリーダーシッププログラム「Managing Complexity」

このプログラムの内容に触れる中で覚えるのは、今までなんとなく取り組んできたこと一つ一つに理論だって名前や説明をつけてもらえる感覚。「守」のない実感のまま「破離」的なことに取り組んできた中で、ようやく何が「守」だったのかを実感しているような心地です。

経験を通して培ってきた知識や感覚を「守」に照らすとどういうことなのかを少しずつ理解し説明できるようになり、「破離」っぽいことを試みた中でうまくいったことうまくいかなかったことについても棚卸しが進む…言い換えると、ぼんやりあるいは疎かだった「守」の上に積まれた「破離」から「守」に立ち返ることで、リーダーシップについての考えや自分なりの方法がストンと腹落ちし始めているのだと思います。

「守」が大事だと気づけたのは、失敗や挫折を通して経験してきた「破離」の試みがあったからこそだったような気がするのです。

じゃあ「守」を最初に大事に叩き込むべき?

ならやっぱり基礎や型が大事だよね、新しいことを始めるときはそこから習得することを目指すべきだよね…という考えにも理解はできるのですが、べきだと思うことをやりたいと思えるかというとまた違う。けれど大事さはわかる。

じゃあ今後の自分にはどうやって声をかけていけばいいのかと考えると、「守をそこそこやっておくと、我流や破離の実践の中でその大事さに気付ける場面がくるよ、その時に立ち返って先人たちが残してきてくれた守に戻ってみて意義を実感するのでもいいんじゃない」…ぐるぐる回っていい、そうやって身につけていけばいいというくらいの循環できる気楽さで取り掛かってみるのもありじゃないかなというのが今至っている考えです。

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