映画Wickedを観た
米国では11月22日に公開された映画『Wicked』を先日観た。個人的にはブロードウェイを含めて劇場で3回も観ている大好きかつパーソナルに重要と感じている作品。映画版は現在第一部が公開されており、後半は来年公開される。公開前から莫大な期待の声と分析をする人で盛大に盛り上がり、公開されてからも自分の周りの人やSNS上でのタイムラインでもWickedの話題でいっぱいだ。
全米の興行収入において、わずか1週間で歴代ミュージカル映画のトップ10にランクインし、ブロードウェイのミュージカル映画のオープニング興行収入として、世界最大の記録も樹立した。
感想を一言で言うと、「とにかくずっと泣いてた」。ミュージカルで作品を見るときには、ステージという空間に物語の全てが集約されているので、想像力で残りの表情や背景、演出などを補うしかない。しかし映画では、その「想像力」の世界がまさに拡張されているという、当たり前かもしれないが夢のような世界が広がっている。楽曲のアレンジやセリフ、衣装や物語も舞台のオリジナルから少し変わっているが、元の「核」の部分を広げているというふうに捉えてほしい。
特にアリアナ・グランデとシンシア・エリヴォのキャスティングは、奇跡としか言いようがない。セットデザインの巧妙さ、ミュージカルの世界観への愛情含め、『Wicked』という作品によって何か人生に大きな影響を受けたり、救われたと感じる人たちの手をしっかりと握るような作品だ。
特にこの作品がアメリカで「今」公開されることの重要性についても、また改めて別の場所でも書きたいと思う。Wickedを観終わった人は、現実世界では「善」や「悪」がはっきりと分けられないこと、そして政治や権力のためにはその善悪の構造がいとも簡単に歪められ、利用されてしまうことの恐ろしさなどを実感するはずだ。この作品は原作からして非常に政治的なメッセージを持っており、「Woke批判」が絶えない今、ここまでの話題と収益を挙げていることは大きな快挙だ。