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「技能実習生」と言って人手不足の解消策とするのはいい加減に辞めよう

技能実習生の来日前借金問題がようやく調査された

問題があると指摘されながらも、毎年、増え続けているのが外国人の技能実習生だ。法務省の発表によると、2020年で約38万人の技能実習生が日本で働いている。在留資格別の外国人の構成でみると、永住者に続いて、2番目に大きな割合を占めている(約13%)。
技能実習制度は、開発途上国の経済発展・産業振興の担い手となる人材の育成を目的として、青壮年の労働者を一定期間産業界に受け入れ、産業上の技能等を実務経験を通して修得してもらう仕組みだ。
目的が、就労ではなく人材育成のため、受け入れることができる職種と従事可能な作業が決められ、業務における時間の割合も決められている。
技能実習制度自体は、正常に運用されているのであれば、非常に良い制度だ。しかし、現実には正常に運用されているとは言いがたい。国連やアムネスティなどの国際機関からも、現代の奴隷制度という不名誉な呼び方がされることもある。
技能実習制度の抱える問題は、多岐にわたり、列挙するだけでもかなりの紙面が必要となるほどだ。その中でも、極めて悪質な問題の1つが、法外な「来日前借金」だ。技能実習生に申し込もうとする若者に対して、法外な仲介料を請求し、その資金を借金とすることで日本での給与から天引きするというものだ。
この問題は、この制度ができた当初(1980年代)から指摘され続けており、今回、初めて出入国在留管理庁による実態調査が行われた。その結果、半数以上の技能実習生が平均54万円の借金をしていることがあきらかとなった。国別でみると、特にベトナム、カンボジア、中国からの実習生が抱える借金が多かった。

借金で縛り、人権の無視が横行する

来日前借金がもたらす問題は根深い。給与を借金の返済に充てるという名目で、給与を支払わず、言うことを聞くように暴力で強制するといった人権侵害が横行している。技能実習制度には転職が認められておらず、技能実習生はどれだけ環境が嫌だとしても、そこから逃れることができない。結果として、その境遇に泣き寝入りするか、実習先から逃亡する実習生も多い。令和3年の技能実習生の失踪者は7千人を超える。また、逃亡したとしても借金が残っているために、違法就労で借金返済に追われることも珍しくない。
これらの問題から、技能実習制度は廃止して、純粋な外国人雇用として扱うべきだという指摘は様々な団体からなされている。
日本政府の外国人材政策に関する意見交換会では、元厚生労働大臣の木村義雄氏は特定技能制度(技能を有する外国人人材を雇用する仕組み)と併用しながら、既存の制度を改正することで、国際貢献と人材育成を目的として純化していくだろうと述べている。たしかに既存の制度が純化して適切な運用ができれば最良だが、果たして本当に純化できるのか疑問点が残る。そもそも、そのうち純化だと、現在や近い将来、来日しようとしている技能実習生の被害は減らないままだ。
技能実習制度を適切に運用し、素晴らしい国際貢献をしている送り出し機関や受け入れ企業も数多くある。しかし、一部が健全に運用ができているからと言って、被害者が出続けている現状をそのままにして良いわけではないだろう。また、たとえ人手不足補填のための外国人雇用施策として振り切ったとしても、問題が完全に解決できるわけでもない。ドイツや韓国などの似たような制度を持つ国はあるが、どちらも外国人雇用施策としているが、問題は山積している。外国人雇用によって人手不足を解消しようという試み自体、難易度が高いのだ。それであるならば、相対的に問題の深刻度を下げるように努力が必要だ。少なくとも、現代の奴隷制度だと言われている現状のままで良いわけはない。

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