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GoToキャンペーンの後に期待すること

この10月から東京発着の旅行も GoToトラベルキャンペーンの対象になり、多くの人が国内旅行に出かけるようになっているようだ。今回のお題である「どんな国内旅行したいですか」ということについて、多くの方が旅に対する夢などを語っている。私自身も旅行が公私共に多い生活を長らく送ってきたため、旅することがままならない昨今の状況は、大変寂しい思いをしている 。このため、私も旅に対する夢が膨らんでいるところではあるが、ここしばらくで、出張や法事など止むを得ない事情をきっかけに、多少の観光要素も織り交ぜながら国内旅行をした。  GoToトラベルキャンペーンの対象になるものもあったので、感じたことをまとめておきたい 。 

交通機関について

減便されたり車両数が減らされたりしているわけではない特急列車では、引き続き乗客の少ない状態が続いていたが、空路については旅行者が減ったことによって便数が間引きされ、また使用される飛行機が小型のものに切り替えられているために、結果的に機内はほぼ満席、という状態が数多く見られた。

搭乗や降機の際に、お客様同士の間隔を空けてソーシャルディスタンスを保つようにというアナウンスがあったり、座席番号ごとに搭乗や降機の順番を案内されるなどの配慮はあるのだが、そもそも機内で満席の状態であると、私はやはり気になった。機内が換気が十分にされているという説明は受けているし、感じ方に個人差は大きいので、気にしすぎと言われればその通りなのだが、私のような感じ方をする人も一定数いるのではないかと思う。時にはマスク着用を拒絶する乗客も出て、飛行途中で緊急着陸するといった事態も発生しており、こうした感じ方や行動の個人差の問題は、特に混雑する機内や社内では今後も課題として残されるのだろう。

宿泊施設について

宿泊施設では、極限までスタッフを削っているせいか、チェックインやチェックアウトに長い時間がかかり、ロビーに宿泊客の長い行列ができる、という事態を経験した。日経MJの記事でもこうした事態に触れており、ネットの情報を見てもこうした指摘が出ているので、これは都市部の大型ホテルを中心に、ある程度広く見られる現象なのではないだろうか。

 確かに、ホテルも航空機同様に、宿泊客だけでなく宴会やレストランの利用が減ったうえに、レストラン等では感染防止のため席数を間引くことによって全体の売上が落ち大変苦しい状態にあるであろうということは理解ができる。

しかし、それでなくてもGoToトラベルのアナログなクーポンの発行手続きには時間がかかり、また館内設備の休止や営業時間変更など、いつもとは違うホテルのオペレーションがあることからその説明にも時間を要し、チェックインには通常よりも大幅に多くの時間を要するようになっている。そこにスタッフの減員が重なっているため、ようやく部屋に入っても、フロントやレストラン、ハウスキーパーなどに電話をかけても一向に出ない状況も実際に体験した。また、かつては客室内に備えられていたミニバーがすべて撤去されてリクエストして届けてもらう形になっていたり、ランドリーサービスが中止されていて少々困ったりもした。

こうしたことは新型コロナウイルスの感染拡大を防止するという観点からやむを得ないものであることは充分に理解ができる。しかしそれに伴ってトータルな旅行の経験がコロナ以前より劣るのだとすれば、単純にGoToトラベルキャンペーンによって割安感があるために、劣化した旅の経験で我慢しているという印象を持たざるを得ない。

一方で、やむを得ないのかもしれないが、セルフサービスのビュッフェ形式の朝食を続けていたホテルもあり、ポリ手袋が用意されていたとはいえ、すべての宿泊客が使用するわけでもなく、こちらもやや神経質な筆者としては、落ち着かなかった。

新たな旅の体験価値の創造を

新型コロナウイルスは、ワクチンが開発されたとしても一定数の人が感染し続けるであろうことは、インフルエンザなどのケースを考えれば想像に難くない。そうであるとすれば、ウイルス感染を防ぐスタイルの旅行と旅行関連サービスの提供は、今後も相当程度長く続くものと考えておくべきだろう。

そうであるなら、今提供されている旅のサービスが、果たして今後のスタンダードとしてふさわしいかというと、疑問に思わざるを得ない。GoToトラベルキャンペーンは、初期においては旅行客の激減に苦しむ旅行業界を救う目的があることは充分に理解している。この間にソーシャルディスタンスを呼びかけたり、あるいは従業員を減らすといった施策がとられてきていることは理解が出来る。しかし、この状況が始まってすでに優に半年以上が経っているのだ。そろそろ次に向けた新しい旅の体験価値を作らなければいけないのではないだろうか。これまでとは違うスタイルであり、今まで提供できていたものが提供出来なくなるものもあるが、一方で新しい体験を創造しそれを提供していく工夫が求められているのではないかと思う。

ジャストアイディアながら

例えば、飛行機であれば、一定の範囲の座席で隣の席をブロックして空席にし、その代わり運賃を高くするといった設定をすることによって、余裕を持った旅行を提供するということはできないだろうか。本当であれば、座席自体を今までの2席分のスペースに1席を設ける改修が出来ればベストではあるが、新たな設備投資が難しい現状では、2席に1席を使わないという方法で十分ではないかと思う。欧米の国内・域内線では、前方の3人がけ座席の真ん中を使わないことによって、ファーストクラスとして提供しているケースがあるので、それにならう形だ。これによって理屈の上では、乗客が倍の運賃を払って乗ってくれるのであれば、飛行機は搭乗率が50%でも、以前の満席と同じ収益を確保できることになる。需要をみながら、一部の区画のみをこうした余裕のあるシートとして販売してもいいし、ニーズが高ければ全部にしてもよいだろう。これによって飛行する便数が回復し、使用する機材も元通り大型化されるのであれば、半ば仕事を失って出向などの施策がとられようとしている客室乗務員やパイロット・地上職員などの復職にも寄与することになるのではないだろうか 。

また宿泊施設については、今はどの宿泊客に対しても一律に設定されているチェックインとチェックアウトの時刻を時間帯ごとに区切ることによってフロントが混雑する時間の集中を避けたり、あるいは人気のチェックインとチェックアウトの時間については宿泊料金を高くするといった方法によって、チェックインとチェックアウトのスムーズな実施を行うことができないかと思う。これによって、客室清掃のスケジュールも組みやすくなり、通常の清掃に加えてウイルス消毒対策もしなければならないことに、少しでも余裕が出てくるのではないだろうか。

今、取り組むべきこと

いずれにしてもGoToトラベルが、いつまでも継続できるキャンペーンでないことははっきりしているし、今後長くコロナの影響を受けながら旅行関連業界が生きていくためには、これまでとは違う新しい旅の体験価値をお客様に対して提供していく必要があるだろう。そして、こうした取り組みは世界中で必要とされるものになるはずだ。インバウンドの観光客が日本に戻ってきた時に、海外からのお客様に対して十分な「おもてなし」ができるかということにもつながってくる。

GoToの施策をやっている間に、コロナ前とは違う、それ以上の旅行体験を作るための取り組みを試行するべきだと思うし、そうした新しい価値の提供方法を見つけた事業者が、今後生き残っていくのではないだろうか。 それが、人それぞれの夢のある国内旅行をするための基盤であり、大前提であると思う。

#日経COMEMO #どんな国内旅行したいですか




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