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ロジスティクスを考えない生産活動なんて無いんですよ。

企業が工場の立地場所を決めるにあたって重要なのは、その土地の価格や、雇用が確保できるかと言った要素に加えて、原料や製品をどうやって運ぶかというロジスティクスですよね。作ったら運ぶというのは当たり前なので、ロジスティクスを意識しながら工場の立地場所を選定する訳です。

電気も全く同じで、と言いますか、むしろ貯めておけないので工場(発電所)とロジスティクス(送電線)は他の生産活動よりも密接不可分に検討しなければなりません。送電線は地味な存在ですが、建設するためのコストも莫大ですし、期間も発電所に負けないくらいかかるので、発電所とセットで考えて、できるだけ無駄が無いように設備投資判断をせねばなりません。

ところが、再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度は、そうしたロジの問題を無視して、安い土地で日照が確保できればそこで発電設備を作るということを奨励してしまう制度でした。再生可能エネルギーを増やすことは政府の方針ですし、必要なことですので、まずは今ある送電線を有効活用してできるだけ再エネを受け入ようという改善が進められました。事故などに備えて保守的にしていた送電線運用ルールを柔軟にすると言った変更は行われましたが、それにも限度があります。

出力制御ありきに批判、とありますが電気の鉄則は「同時同量」。必要とされるときに必要とされるのと同量を作らなければなりません。作り過ぎでも不足でも、周波数のバランスが崩れてしまいます。なので、発電が余るときには、①蓄電池などに貯める、②送電線でよそに流す、③発電を抑制する という手段で対処するのですが、今のところ発電を抑えるのが最もコストが安いのです。「再エネの発電を抑えるなんてモッタイナイ」という声をよく聞きますが、「モッタイナイ」の基準が不明確です。稼働率が低い送電線を建てることは勿体なくないのか?稼働率を考えず「防災の時にも役立つから」という理由で蓄電池を普及拡大することは勿体なくないのか?もちろん勿体なくない、という判断になっても良いのですが、費用対効果をきちんと試算して「モッタイナイ」かどうかを判断しなければならない話。そもそも、出力制御というのは、他の発電手段も含めて今までも当然行われてきたことですし、火力発電の方を先に出力制御をするように定められています。

この記事の中でも千葉県が「2019年からの環境基本計画で再生エネの発電容量を現在の1.8倍の400万kWにする目標を掲げたばかり」とありますが、発電された電気の「ロジスティクス」にかかるコストなども踏まえた上で、この目標を立てたのでしょうか?電力のあり方について、全体感のある議論が必要ですし、記事を書くなら国民のコスト負担を抑制しつつどうやって低炭素な価値を持つ再生可能エネルギーを増やしていくかという視点が欲しい。

鑿と言えば槌。発電と言えば送電。

こちらのコメントもご参照いただければ。https://newspicks.com/news/3119373?ref=user_829794



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