マーケターには言葉が必要だ
アンケートを通して見えてきたのは、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う混乱の中でも、消費者の変化を捉え、柔軟に対応しようとするマーケターの姿だ。「コロナ禍の前から店頭での売り上げ減少に悩まされていたが、以前のように海外への行き来ができない時代だからこそ、ネットを活用して海外との取引を活性化したい」(大阪府の37歳女性)「コロナ禍でウェブからの資料請求が増えると見込み、早めに広告を増やしたのが成功した」(神奈川県の49歳男性)と、逆にチャンスと捉えるマーケターも多い。
B2Bビジネスにおける消費者理解とは?
THE MODELなB2Bビジネス組織でマーケティング部門に在籍することは、すなわちマーケティング領域だけをやれば良い、と同義ではありません。当たり前ですが。
マーケティングもインサイドセールスもフィールドセールスも、これらは役割の分業であり、理解の分担ではありません。
自分はマーケティングだからインサイドセールスやフィールドセールスはよく分からない…ではダメですし、逆もまた然りです。それぞれの部門が何をしているか理解していて、その中で自分はマーケティング部門を受け持っている、という前提に立った方が良いと考えています。
「要はハウスリード獲得できたら良いんでしょ?」という姿勢では、逆にハウスリードを増やせません。フィールドセールスが初回訪問で何を話しているか、ライトパーソンが登場してどんな議論をしているか理解できなければマーケティング部門は務まりません。
なぜなら、初回訪問の会話や、ライトパーソンが納得するソリューションを理解せずして、コンテンツは作れないと私は信じるからです。WEBサイト、オウンドメディア、記事広告、DL用資料、WP…それらのコンテンツを経て商談に進むのです。彼らの「必要だ」なくして商談は生まれません。
どうやって彼らが興味・関心を抱けるクリエイティブ、キーワードを、後工程の知識無く作れるでしょうか。いや、無理でしょう。
製品知識では無く、後工程のインサイドセールスやフィールドセールスの現場で飛び交っている会話やソリューションという点が重要です。個別具体的な話でしょうが、総花的な知識よりも個別に刺さるソリューションの引き出しを何個垣間見せられるかはB2Bマーケティングの腕の見せ所の1つだとも思っています。
したがって、マーケティング部門であっても、インサイドセールスやフィールドセールスに対する理解と、その現場で飛び交っている会話に対する高い咀嚼率が必要です。
マーケティング部門が相対する「消費者」は、マーケティング部門だけに姿を見せるわけではありません。インサイドセールス部門でも、フィールドセールス部門でも「消費者」がいます。どうして、マーケティング部門に閉じた消費者だけで「理解した」と言えるでしょうか。
インサイドセールス、フィールドセールスでも覗かせる顔を知ることで、はじめてマーケティング部門として「消費者を理解した」と言えるのではないかと考えます。
松本の場合は「ことば会議」なんてやってます
私の場合、毎朝の進捗確認MTG以外に、週1回で「ことば会議」なるMTGをマーケティング部門で開催しています。
これは、マーケターの体内を「製品・サービスにまつわる"ことば"」で埋め尽くすことを目的とした会議です。その1週間の出来事を棚卸しして、なるべくことばを吐き出して貰います。
例えば、自社のインサイドセールスの場合はミーテルを導入しているので、マーケ部門として入社していただくと「初回訪問アポ獲得」に繋がった数百件の商談は全て聞いて貰うようリクエストを投げています。
他にも、最近はリモート商談が主流になっていますから、初回訪問がZoomになるケースが多くあります。フィールドセールス部門が顧客の了承を得て商談の録画についてお許しが出た場合は、こちらも見て貰うようリクエストを投げています。
さらに、可能であればさらなる消費者理解のためにインサイドセールスを担っていただきます。顧客が何を言うかを、直に知る良い機会だからです。
こうした体験を経て、顧客は何が刺さるのか、何が喜ばれるのか、何に困っているのか、何を欲しているのかを顧客の"ことば"でマーケターが直接知る機会に自らを置き、そのアウトプットをするのが「ことば会議」です。
①消費者を知る。
②消費者が何を知り何を知らないかを知る。
③それらを自分の言葉にする。
④そうやって消費者に対するピントを合わせていき、何を伝えれば「そう、それが欲しかった」と言って貰えるかを言葉にする。
⑤そして①に戻る。
このサイクルがすごーく大事だと思うのです。でないと、ピントがボケたキーワードやクリエイティブを入稿してしまう恐れがあります。その結果、低いCTRとCVRが続く「惨劇」の幕が開きます。
持論:マーケターには言葉が必要だ
私たちは、往々にしてことばで動きます。
「自粛疲れ」という言葉で、外出が正当化されるんですもの。街中の混雑が説明できるんですもの。そんなアホな話ないですよ。
「まん延防止措置」という言葉だと堅苦しいですが「まんぼう」という言葉だと柔らかく感じて、なんなら効果すら感じません。
私たちマーケターは、往々にして言葉を武器にしています。言葉で消費者が自発的に動くサポートしています。もちろん、ポカリスエットのCMのような「なんか、もう全然分かんないんだけど、凄いってことは分かった」みたいな小並感な場合もあるのですが。
言葉にする=理解できた、ではありません。言葉はあくまでアウトプットであり、理解とは別です。非言語な表現であったとしても理解できている場合はあります。
ことばとは、相手に伝えるための手段の1つです。相手に伝わり「あぁ、そういうことか」と納得して貰うために大事で、かつマーケターに必要な能力の1つだと思うのです。
だから「ことば会議」なんてやってますし、B2Bビジネスの現場においてマーケティング部門から越境しているのです。
スゴいマーケターの消費者理解法を聞きたい
今回は紀貫之でB2Bビジネスにおける私なりの消費者理解法を書きました。
いろいろ本を読む限りにおいては、マーケターの数だけ「消費者理解」のお作法があるように感じていて、これが正解ってマニュアルもルールも無いように感じています。
そもそも「消費者理解」って言葉自体が気に入らない、って人もいるみたいですから、もうマーケター1人1人に流儀があると考えて良さそうです。
そこで!(イーデザイン損保の織田裕二風)
スゴいマーケターの方をお呼びして、消費者理解の流儀や作法についてお話をする会合を設けようと思います。
第1回のゲストはニューバランス ジャパンの鈴木健さんです。株式会社秤の小川貴史さんをホストに60分間じっくりとお話を伺います。
ご予約はこちらからお願いします。
■日程:21年4月27日(火)20時〜21時
■会場:オンライン
週の真ん中・火曜日を皆様と学べる機会にしたいと思います。(私自身が楽しみにしておる)
1本書くのに、だいたい3〜5営業日くらいかかっています。良かったら缶コーヒー1本のサポートをお願いします。