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外国人マネーが飛んでいる。そのあと、どうなる、どうする?

マネーが飛びかっている。日経平均株価はいよいよ史上最高値に迫るが、実態実感なき高株価だと多くの人は感じている。昨年5月のコロナ5類移行から、円安からも空前のインバウンドブームとなっているが、街の風景が変わった。これまで日本の定番だった観光地だけでなく、意外な場所が外国人観光客で賑わうようになっている。そしてラグジュアリーホテルや高級旅館は1泊10万円・20万円が普通となり、1泊50万円100万円のホテルも増えた。その価格は世界基準だという人もいるが、そもそも世界と日本の賃金レベルが違う

普通の日本人では泊まれない

飲食店も、そう。高級料理店のなかには、一見さんお断り、予約困難店という排除の論理を打ち出し、食べさせてやると心理的圧迫を作り出す店が増えている。30分10万円の高級寿司店、20万円30万円の高級日本料理店に、100万円の高級ステーキ店は、どこも「予約困難店」で、普通の人は決していけない。常軌を逸いている。そんな店ではセレブ、成金さんたちで席が占められ、店内は常連さんの空気が漂い、毎月少しずつ一所懸命にお金を貯めてその店に行きたいと夢見る人に、「あなたが来るような店ではない」と

普通の人を排除する空気が高まっている

予約困難店と呼ばれる店、コストパフォーマンスが低いという軽々しい言葉で表現よりも、その店の味・もてなしが値段に見合っていない。いい意味でも悪い意味でも、お店はお客さまが育てるというが

日本品質の劣化が見え隠れしている


1  行き場の失ったマネーが日本に向かう「外国人マネー」バブル

牛肉、ウニ、トロなどがてんこ盛りになった丼が1杯7000円超。ハンバーガーは3000円台。具の量も質も違うとはいえ、日本で一般の会社員が気軽に支払える丼ものなどに比べ数倍から10倍の値段だ

日本経済新聞 春秋 2024年2月19日

本当に、そう。インバウンドしかり、1989年12月29日につけた日経平均株価の史上最高値 38,957円を上回ろうとしている

世界のマネーは余っている。行き場の失った世界のマネーは彷徨いながら、現在、日本に向かっている。外国人マネーバブルである。これまでのバブルの性質とは違うが、明らかにバブルである。日本の実態と乖離している

市場は膨張している。目に見える日本株が話題になっているが、それだけではない。世界マネーは、日本の都市インフラ・地域再開発など固定資産・固定資本形成、保険資産に向かっている。マネートレードの活況が産業連関して、サービス産業が伸びていこうとするなか、コロナ禍3年間の行動制限による業績悪化のリベンジをしなければという企業経営者の思惑が加わり、外国人マネーバブルに乗る

2 バブルは、いつか弾けるー膨張したあと、どうなる


この風景は、かつて見たことのある風景、デジャブ(既視感)。バブルは、しかし、いつか弾ける

問題は、バブルの後

30年前のバブル崩壊後、どうなったか?
それを忘れている人・企業、それを知らない人・企業が多い

なにがおこったのか?
 いまから34年前の1990年にバブル崩壊して、失われた30年のなかの日本企業の多くは

ターゲットをしぼって、選択と集中

しなければとなった。多くの企業の経営戦略や事業戦略に、「ターゲット」と「選択と集中」と書き込んだ。経営の神様と崇められたドラッカーが提唱し、GEのジャック・ウェルチが広めた「選択と集中」を、文脈なく、飛びついた
 
なんでもかんでも、「選択と集中」だった。バブルで膨張して、バブルが崩壊した日本にとって都合のよい経営用語だった。みんな、飛びついた。「選択と集中」して、どうなったのか?

■ターゲットをしぼり、選択と集中して、市場が小さくなった(①)
■ターゲットをしぼるなか、市場全体が見えなくなり、お客さまの価値観・スタイルの変化・需要の構造変化を見おとし、失ってはいけない大切な需要を捨てた(②)
■選択と集中を繰り返すなか、海図や羅針盤が持たず、暗闇をあてずっぽうに漂流していくなかで、コロナ禍となり、市場が無くなった(③)

そして、コロナ禍で大変だ大変だと言っていた日本に、外からマネーが飛び込んできた

3 このままでは、さらに日本品質が落ちていく

ラーメンや丼ものは厳しい競争の中で料理人らが工夫を重ねてきた。国内外での価格上昇はようやく価格が価値に追いついた面もある。一方で観光業界に「売れるんだからとにかく値上げを」という荒稼ぎムードが芽生えている点は気になる。上げた価格に価値が伴わなければ、訪日旅行が一時のブームで終わりかねない

日本経済新聞 春秋 2024年2月19日

「お客さまに寄り添って経営する」とか言っている企業経営者がいるが、どんな市場の、どんなお客さまが、なにを考え、どう行動されているのか分かっていない。なぜか?

市場を観ていない

マーケットインとか選択と集中とか言っているが、

 製品・モノから発想する人・企業が多い

技術開発をして、良い製品をつくり、開発部門は、営業に、製品を「さあ、売ってこい」と渡す。まず製品・モノありき

製品・モノを起点に発想する 
これは、どこに売ったらいいの?
ターゲットは、どこがいい?
じゃ、ここをターゲットに売ったらどうだと
戦略が「適当」に、「いい加減」になった

製品・モノから発想して、製品・モノづくりから追いかけるようになって、市場・お客さまから、発想しなくなった
 
そういうことを繰り返すなか、個人・企業の市場観がにぶってしまった。さらにコロナ禍で、個人・市場の動きがとまり、「市場観」を取り戻すチャンスであったが、茫然自失しているうちに

 突然、風景が変わった

外国人観光客があふれ、日本企業の株、保険、ビルが、百貨店が外資に買われ、行き場に困った世界のマネーが日本に集まり、割安な日本が買われ、バブルのような状況になっている。突然、世界から注目され、過分に評価されるようになった。最初は疑心暗鬼だったが、外国人・セレブに来ていただき、いっぱい買ってもらえ、すごいねと持て囃されると

どうしてだろう?→自分はスゴイかもしれない?→自分はすごいのだ!

となって、自らの力を過信しだすようになり、自らの本分を忘れ、自らの立ち位置を見失ない

品質を落としていく 

それは、これまで、何度も何度も経験したこと。普通の日本人からしたら、こんなんではあかんやろ、こんなに手を抜いたらあかんやろ、こんな高い値段ではおかしいやろというモノ・コト・サービスが目につくようになった。そして基本から外れ、大雑把になり、いい加減になる。なによりも

そうなっていることに気づかなくなる
そうなっているよと言ってくれる人がいなくなる

 人口減少・高齢化・人手不足の基本潮流も絡み合い、日本品質の低下が加速している。これが、失われた30年から続く、コロナ禍4年が経った現在

外国人マネーバブルの現在地

どうするか?一部の人・企業がバブルに酔いしれているが、局所的バブルの現在こそ、お金が集まってくる現在こそ、バブル後のことを考えて、自らの分を弁え、自らの本質・原点を見つめ直し、2年後3年後5年後のありたい姿を見据えて、なにをすべきかを考え、次に向けて、手を打つ。勝って兜の緒を締めよと、戦国時代の北条氏綱が息子に遺言で伝えた

そうしないと、日本はまた同じ失敗を繰り返してしまう


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