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「知らないとヤバい」いつまで見なかったことにしようとするの?

不景気の中のインフレはヤバい。もはやスタグフレーション。

実質賃金が大幅に減ったらしいです。
これが減るということは、使えるお金が減るということ。額面の給料が多少あがったところで、税金や社会保障費があがって手取りが増えないのであればそれは給料が減ったのと同じこと。また、インフレ率に追いついていないのであれば、それも同様だ。

当たり前のことなんだが、金がないということは人間を無行動にする。消費はしなくなり、外出も控えるようになる。だから一層、世の中の経済が回らなくなる。人間が動き回らなければ経済なんて活性化しない。

そして、最大の問題は、まだ社会の中で受け身でいざるを得ない若者にそれを強いることは、若者の無行動状態を発生させてしまうことである。若者が無行動になると、婚姻が減る。婚姻が減れば出生が減る。これもまた当たり前の話なのである。

実質賃金が下がれば婚姻率が減るというグラフはこちら。

しかし、その当たり前の事実を頑なに見ようとしないのが今の政府であり、野党も含む政治家たちである(与党だけじゃないからね)。本当に見えていないってことは実はなくて、本当は見えているのに見えないフリなんでしょう。

真の少子化対策は経済対策である。景気を底上げして実質賃金をあげることだ。バラマキ→増税なんて悪循環はもういい加減やめてほしい。ちなみにこの30年そんなんばっかです。民主党政権時代でさえ同じ。

結婚観や家族観を変えればいいというリベラル界隈がいる。別に結婚しなくても出産・育児ができる体制ならばよくない?というものだ。誰とはいわないが、それはあなたに金の余裕があるからいえること。金があるならご自由にって話だ。そんな言葉を真に受けて、貧困の未婚の母になってほしくはない。かつて「フリーターこそ自由な働き方だ」なんてリクルートの宣伝に騙されて生涯フリーターになった世代だっているでしょ?

加えて婚外子を増やせばいいなどという政治家もいる。婚外子を増やせば出生が増えるなんて大嘘という話はこちらの記事に書いた通り。

もちろん、結婚届を出さない事実婚があってもいいし、両親が揃っていない片親で子を育てることは否定しない。そもそも3組に1組は離婚するわけなのだから。

しかし、だからといって、価値観を変えれば出生数が増えるなんて根拠はどこにもない。先に価値観があるのではなく、今の環境に応じて価値観は作られる。順序が逆だ。

往々にして「意志があれば変えられる」などという人間に限って恵まれた環境にいる自分を認識していない。認識していないだけならまだマシだが、自分の環境が上げ底であることを棚に上げて、低い位置にいる人間を「怠け者だ」「努力が足りない」と見下す。見下すことで自分の優位性を確認している。


我々が見ている世界というのは同じようでいて、ひとりひとり違う。どこから見ているかという視座の違いによっても変わるが、そもそも同じ位置から、同じ視座で見ていたとしても、人によって「見える」人と「見えない」人がでる。シーザーのいう「人は見たいものしか見ない」というものだ。

そして「見たいもの」とはその人間の内面の感情が起点になる。いつもの景色でも、うれしい時と辛い時とでは変わって見えることがあるが、それもそういう原理による。

我々は外部の環境を認識する場合、必ず自己の内面を投影しているのだ。

「見たいものだけを見る」のはとても心地よいものである。自分より劣る者だけを見ていれば自分が頂点になったような気分になれるからだ。
そして、より心地よくしてくれるのは「不快を快に転換する瞬間」でもある。だから、ネットでは、わざわざ自分が不快になるような情報を探して、一度不快になった上で、その対象を叩くことで快楽を得ようとする。論破系なんてその類である。

また「見たいものだけが見える」のは安心でもある。人は予期した通りのものがそこにあるだけで安心する。いつもと違うと違和感を感じるがもそれだけでも人は不快になるからだ。

年を取れば取るほど「現状維持」を好む。昨日も今日も明日も変わらない日常に安心したい。それは悪い事ではない。むしろ現状維持こそがその人の幸福でもあるからだ。

昭和の高度経済成長期は「明日は今日よりもっとよくなる」という希望があった。バブルが崩壊しても、「現状維持」できるだろうという期待があった。事実、30年間結果的に現状維持はしてきた。デフレだからね。給料は変わらないが物価も変わらなかった。国内だけで鎖国しているならそれでもよかったが、その現状維持している間に大きく世界との差が開いたことも事実である。

「脱成長」とか言ってる場合ではないし、「みんな平等に貧しくなろう」とかいう戯言を聞いてる暇などない。もはや現状維持は相対的な地盤沈下なのである。隣人も一緒に下降しているから気づけないだけで、いつのまにか地獄へ向かっている。俯瞰的な視点で自己の現在位置を確かめることが必要である。

とはいえ、不可能を可能にできるのは大谷翔平選手くらいのもので、一般人には無理だ。できないことはできないと判断することも大事だし、その判断ができないと、いつまでもできないことをやり続けることになる。政府の少子化対策のように。

商売も同じだ。見たいものしか見ない商売はヤバい。ファクトを把握し、少なくとも「今何が起きているのか」がわかってなければ話にならない。

そんな新刊が出ます。amazonで予約が開始されました。「知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質」という本です。「知らヤバ」と呼んでください。

人口構造や世帯構造が大きく変わっているのにいつまでも昭和型家族マーケティングや世代論なんてものにかまけててヤバくない?って本です。独身を狙えなどという小さい話でもないしハウツー本でもない。消費の本質について書きました。そもそもソロ活市場は独身だけじゃない広がりがある。

過去、宣伝会議での講義や大前研一氏のBBT大学での講義、各種企業での講演などでお話している内容もふんだんに取り入れています。

amazonのページで「はじめに」全文が読めます。メーカーやサービス業などでマーケティング関連のお仕事をしている方はもちろん、マーケティングの視点とは無関係だった自治体関係者にも読んでほしい。あと広告関係に就職したい若者も。政治家はどうせ読まないからいいや。

「見たいものだけ見てればいい」共同幻想の時代は終了です。

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長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。