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コロナ禍の「在宅勤務」とコロナ後の「在宅勤務」は違う。今後は目的設定と制度設計が重要。

以下の記事のとおり、厚労省は育児介護休業法を改正し、3歳までの子がいる社員に対して在宅勤務ができる仕組みを整備する努力義務を課す方針のようです。

コロナ禍で急速に進んだ在宅勤務ですが、メリット・デメリットが明確になり、現在では原則出社に戻す企業もみられ、その対応は各社で様々といったとこでしょう。

もともと在宅勤務は、コロナ禍の前から働き方改革の一貫として推進が図られてきたものであり、上記の厚労省の方向性は、改めて本来の目的に戻ってきたといったところかと思います。

私のスタンスとしては、経産省でテレワーク推進を図ってきた立場でもあり、確かにデメリットも否定し難いことから頻度や対象者等は各社で工夫する必要があるものの、「デメリットがあるから在宅勤務は一切認めない」とすることには否定的な考え方です。

ただ、少し気になっているのは「在宅勤務」の働き方のイメージが世の中で一様ではないように思われる点です。

コロナ禍では「子どもと過ごしながら仕事をするための制度だった

コロナ禍での休校措置等との関連もあり、在宅勤務というのは、「リビングでパソコンを開き、子どもと過ごしながら仕事をする。」というイメージは未だに強いように思います。

実際、コロナ禍では、在宅勤務の広告などでも子どもと過ごしながら家で仕事をしているものも多く見られました(この記事の冒頭の絵も敢えてそういうものを選んでみました)。

こうしたイメージから、冒頭の記事にあるような厚労省の方針に対しては、「育児をしながら在宅勤務をするなどできるはずがない!現状を分かっていない!」というような批判の声もあるようです。

また、こうしたイメージは、要は「子どもと一緒に過ごしながら緩く仕事をする」というイメージにもつながっており、「在宅だと生産性が落ちる」、「出社している人との公平性を欠く」といった批判にもつながっているように思われます。

確かに、私も子どもが熱を出したりすると、在宅で子どもを看病しながら、合間で仕事をしたり、深夜に仕事を回したりするなど、かなり無理な働き方になっていましたし、これは仕事の時間配分に裁量がある弁護士という仕事だからできたのでしょう(この点については、以下もご参照ください)。

「在宅勤務」はミニマム「家で仕事をする」ということに過ぎない

上記のように、コロナ禍での「在宅勤務」のイメージは、「子どもと一緒に過ごしながら仕事をする」というイメージになっているように思いますが、そもそも「在宅勤務」というのは、それ自体は「仕事をする場所が自宅になる」ということであり、それ以上でも以下でもありません。

したがって、シンプルに「在宅勤務OK」とする場合には、そもそも「仕事中」であることに変わりはなく、子どもの世話や家事をしながら緩く仕事をするというものではないはずなのです。

つまり、「在宅勤務」は働き方の仕組みであり、要は「器」に過ぎず、その中に、
・対象者をどうするか
・対象場面をどうするか
・中抜けをOKにして裁量的に働けるようにするか
・出社頻度はどうするか
など、どういう要素を入れていくかは制度設計次第になります。

「在宅勤務をする/しない」ではなく「どういう在宅勤務制度にするか」を考えるべき

冒頭述べたとおり、私自身は在宅勤務は進めるべきだと考えています。
ただ、その制度設計は色々あり、前提てして何故在宅勤務制度を入れるのかの目的を明確にした方が良いでしょう。

例えば、単に通勤時間削減、通勤時肉体的、精神的疲労削減を目的とするなら、シンプルに「家で仕事をする」というだけの仕組みでも良いでしょう。厚労省の方向性は、ミニマムこの仕組みを前提にしているのではないかと思います。
他方、裁量を持って働けるようにし、働きやすい環境を整えるというのであれば、裁量労働制やフレックスなどと掛け合わせて制度を作ることができます。

このように、在宅勤務制度は目的に照らして制度設計の余地があるものです。

コロナ後も、従業員の中には在宅勤務を必要とする人もいるはずであり「在宅勤務を全くやらない」というのではなく「どういう在宅勤務制度なら可能か」という一歩進んだ議論をすべきであろうと思います。


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