スクリーンショット_2020-03-04_13.59.32

中国発の情報収集を研ぎ澄ませるためのメディア選び〜「Sinocism(シノシズム)」

今回の新型コロナウィルスの広がりをきっかけに中国の動向を調べる機会が増え、その中で何度となく目に触れる機会のあったメディア(ニュースレター)の一つに「Sinocism(シノシズム)」があります。

先日ご紹介した「財新(Caixin Global)」は国内でも週刊東洋経済や日経ビジネスと提携していることもあり、その存在を知っている方もいるかも知れません。一方で、シノシズムは折に触れて無料配信はあるものの、基本的に有料購読のニュースレターなのでその評判、内容、運営者が誰かなど、自分自身も今まで詳しく知りませんでした。

いろいろな欧米の記事やTwitterなどで今までシノシズムの高い評価を目にしたことがあり、とりあえず無料購読をしていたのですが、今回のコロナウィルス関連で中国発のニュース需要が高まる中で、キャンペーン用の無料配信が増え、内容がとても充実していることに改めて驚かされました。

中国関連の動向の深堀りをする必要がある方の参考になればと思い、いくつかその特徴をご紹介してみたいと思います。

シノシズムとは

シノシズムは中国語が堪能なアメリカ人ジャーナリストで中国専門家であるビル・ビショップ(Bill Bishop)氏により運営されている、週4回配信される有料ニュースレター(月額15ドル / 年契約の場合168ドル)です。それぞれのニュースレターには中国の現地メディアと欧米メディアで掲載されている関連記事のリンク、引用、そして全体的に俯瞰した上での分析が記載されています。

例えば、今日であれば中国国内の新規感染者数が減少しつつある中で韓国、イラン、日本、アメリカなど、海外からの『感染輸入』を防ぐことに重点を置いた措置が進められていること、そしてトランプ政権による中国共産党寄り報道機関に対する米国内記者数の上限制導入が発令され、そのことへの反発など、中国語と英語で書かれた分析記事が紹介されています。その他にも米中関係、経済、自動運転、テック、メディアなど、幅広い分野で注目の記事が紹介されています。

ニュースレターのサンプルは以下のリンクから閲覧可能です。

ビル・ビショップ氏は1997年に金融メディアのMarketWatchを起業し、2004年にダウ・ジョーンズに売却した後、北京に2005年から2015年滞在した経験があります(現在はワシントンDC在住)。ニッチなトピックではあるものの、外交、金融、政策、ジャーナリスト、学者などの専門家約8万人近くが今では購読している一大ニッチメディアを運営しています。

シノシズムは実は当初無料のニュースレターとして2011年にスタートし、しばらくは寄付モデルで運営されていました。その後現在注目を集める有料ニュースレター配信サービスの「Substack」のサービス開始の2017年10月に、第1号の有料ニュースレターとして課金を始めたそうです。

シノシズムは台湾に拠点を置くアメリカ人ジャーナリストベン・トンプソン氏が始めたテック系有料ニュースレター「Stratechery」と並び、ニッチ分野の有料ニュースレターの成功モデルとして広く知られています。ちょうど先日、それぞれのメディアを運営する二人によるポッドキャストが配信され、ビル・ビショップ氏がどのようにニュースレターを始めたか、詳しく語られています。ご興味ある方はこちらの書き起こしを是非ご覧ください。

シノシズムは一部専門家から中国ウォッチャーのための情報源として重宝されていますが、こうした形での中国に特化した新しい情報源があるという点、また一人の個人の専門性や情熱を活かすことで実現するメディア運営の成功事例として、学ぶ点が多くありそうです。

Photo by wu yi on Unsplash

関連記事:Sinocismが配信に利用しているニューズレター配信システムのサブスタック(Substack)について以前に触れた記事です。


お読みくださってありがとうございます!国内外の気候変動、クライメートテック関連の情報をメディア目線で切り取って発信を試みてます。スキをクリックしてくださったり、シェア・コメントなどいただけたらとても嬉しいです