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中国発の情報収集を研ぎ澄ませるためのメディア選び〜「財新(Caixin Global)」

日々刻々と新型コロナウイルスに関する情報が飛び込んでくる中で、改めて正確な情報を摂取することが求められていると感じます。特に今回の事態をきっかけに、中国発のニュースメディアの理解を自分自身があまり持てていないことを痛感します。

人民日報(日本語版)China Daily(英語)やCCTV(CGTN)などが国営メディアであり、中国共産党の意向を汲んだメディアであることは分かっているものの、その他にどのようなメディアがあるのか、正直あまり馴染みがありませんでした。香港発で1903年創刊の英語メディア、「South China Morning Post」がアリババグループに2016年4月に買収されたこともつい最近知りました。

最近の中国発のニュースを眺める中で何度となく目にするメディアの一つに、中国の経済メディア「財新(Caixin Global)」があります。

中国で数少ない調査報道メディアとしての評価が高い「財新」はいち早く感染源と疑われていた武漢の海鮮市場の状況を世界に向けて発信し、海外のニュースメディアでも多く引用されています。肺炎の発生をSNS上で告発しながら自ら感染し、33歳の若さで亡くなった武漢市の医師、李文亮氏にも生前、病床でインタビューも行ったことでその存在感を世界に示しています。

「財新」の記事は幸いにも「週刊東洋経済」が提携していることで、翻訳された記事の一部が日本語でも読むことができます。(追記、「日経ビジネス」でも以前から提携されていることを後に知り追記いたしました。2020/5/20)

ちょうど今朝話題になっていた「中国政府による情報非公開の指示」というスクープも「財新」発のものでした。とても気概を持って習近平政権に立ち向かい、調査報道に取り組んでいることが伺えます。

新型コロナウイルスに関する情報公開の遅れの経緯について、中国のメディア「財新」は、新型のウイルスであることを示す最初の検査結果が出たあとの1月初めに、中国政府が関係機関に情報を公表しないよう文書で指示していたとする記事を掲載しました。

財新」に強く興味を持ったのは2009年に同社を創設した社長の胡 舒立(こ・じょりつ / Hu Shuli /フー・シューリー)氏が今までに数々の大型経済事件のスクープで名を馳せ、2002年にはSARS (重症急性呼吸器症候群)に関する中国当局の情報隠蔽を暴いた実績も持っていることです。米誌『ビジネスウイーク』がつけた「中国で最も危険な女性」という異名はブリタニカ百科事典でも紹介されている程です。
彼女の活躍の軌跡は以下の記事で詳しく紹介されているのでご興味ある方は是非ご覧ください

胡舒立:私の一生の夢は、素晴らしいメディアでいち記者として働くこと(翻訳) | 辺境通信 (2019年2月5日)

・中国唯一のスクープ誌「財経」蹉跌〜「最危険的女人」編集長の調査報道が当局に煙たがられ、投資家と対立して、ついに独立|FACTA 2009年12月号へ。
 

ちなみに「財新」は中国でもいち早く有料課金購読を始めたメディアであることでも世界的に評価されています。ロンドンに拠点を持つ業界団体のFIPP(International Federation of Periodical Publishers: 国際雑誌連合)が「Global Digital Subscriptions Snapshot - November 2019」と題した世界のオンラインニュースメディアの有料購読者数をまとめたレポートによると、30万人の購読者の獲得に成功していることが分かります。

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*参照:世界で約2,000万人:オンラインニュースメディアの有料購読者数 [FIPP調査レポートより]2019年11月14日

「財新」の記事を読むには月額20.99ドル 年間199.99ドルの費用がかかりますが、毎日更新されるポッドキャストやニューズレターなど無料でアクセス出来る情報も多く提供されています。また、最初の1ヶ月は0.99ドルというプロモーションも3月1日まで提供されているそうです。

今回は以上です。中国発の情報収集の参考にしていただけたら幸いです。
次回は最近気になっている中国に特化したニュースレター「Sinocism 」について掘り下げてみたいと思います。

Photo by Eepeng Cheong on Unsplash

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市川裕康 (メディアコンサルタント)
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