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#出戻り社員ですけど、何か?

こんにちはFunleashの志水です。このNoteは日経朝刊投稿募集企画「#出戻り社員に期待すること」への寄稿です。

このテーマを見たとき「出戻りってネガティブじゃない」?それが最初のリアクションです。一度離れた人材が戻ってくるのが当たり前である米国企業に長年いましたがこんな言葉を使った記憶がありません。「再雇用」または「リハイヤ」と言ってました。
実をいうと私も一度辞めて数カ月で会社に戻ったいわゆる「出戻り」です。人事の責任者かつ再雇用された人はかなりレアな存在だと思います。体験者、そして再雇用する組織の両方の観点から考えてみます。

一度辞めた人が戻ってきてくれることは会社そして本人にとって本来は喜ばしいことなのになぜネガティブな言葉を使うんでしょうね。
「出戻り」という言葉を辞書でみると次のような意味となっています。
1一度出かけて、途中でもとへ戻ること
2 嫁いだ女性が、離婚したり、夫に死別したりして生家に戻ること。また、その女性を指す

出戻りのネガティブな響きは2のイメージが強いからでしょうか。この言葉の裏側にはメンバーシップ型的な思想が横たわってます。「入社後は定年まで勤めあげる」「結婚したら死ぬまで添い遂げる」それが美徳だという古い日本の慣習が読み取れます。

これに限らず日本で使われている人事用語は二者を分断するようなものが多いです。(例えば労使関係。雇用者ならともかく使用者って主従関係みたいですね。非正規社員というのもいただけません。正社員以外は否定されるんですか?と突っ込みたくなります)
このように私たちが「当たり前」だと考えて疑うことなく使っている言葉や、習慣・行動には注意が必要です。他のコミュニティから来た人が違和感を覚えることもあります。出戻りという時代に古臭いネガティブな言葉を使うのはやめませんか?

さて前置きが長くなりましたが、上記の理由から「出戻り」ではなく「再雇用」と呼びます。
一昔前まではほとんどの日本企業が「再雇用」に対して消極的でした。終身雇用(崩壊したといわれますが実際にはまだありますよ)という古き良き制度がある企業では、自発的に辞める人は裏切り者であり、退職者をまた受け入れることはタブーでした。今もそうかもしれません。
再雇用にはメリットがあると気づいた会社が取り入れはじめ、ようやく見直されています。とはいえ再雇用制度のある会社はいまだ10%未満なのです。

諸外国では一般的な再雇用が日本ではまだ主流になっていない理由はなんでしょう?それは企業にとってデメリットが多いと考えられているからです。
本当にそうなんでしょうか?この辺りをチェックしてみましょう。

メリットはデメリットを凌駕する

採用の難易度が高くなっている今、再雇用がもたらす効果への注目が集まっています。これまでは人材の流動性が高い業界が中心で、退職理由も介護や結婚・育児などに制限されていました。転職で会社を去った人材にもようやく門戸が開かれるようになりました。最近は日経の記事でも目にすることが増えました。

再雇用のメリットについては他の方がすでに例を挙げているのでぜひそちらを参考にしてください。組織の観点から言うと、なんといっても最大のメリットはこれでしょう。

必要な職務(ポスト)に「優れた人材」を「最適な方法」で採用できる

新卒であれ中途であれ、人が新しく組織に加わる場合は成果を発揮するには一定の時間がかかります。どんなに優秀な人材でもそうです。
一方で、再雇用された社員は自社の文化やポリシーなどを理解しているため、短期間での立ち上がりや高い成果が期待されます。社内ネットワークを持ち、外部で得た経験やスキルを持ち帰り成果につなげる人材は、事業推進の上でかなりプラスになります。新規事業の立ち上げやイノベーション創出につながることもあるでしょう。再雇用の人材が増えれば市場において顧客や候補者からの認知度も上がります。これだけのメリットがあるのに活用しない手はないでしょう。

変革の起爆剤となるデメリット

離職した社員が社員が好待遇で戻ると面白く思わない既存社員が多いという調査結果があるそうです。また、再雇用が認められた人材が管理職などで戻ってくると平等じゃないと現役社員から不満がでるそうです。
「再雇用社員を受け入れる場合は周囲の社員のモチベーションが下がることがあるので既存社員に対する十分な配慮が必要です」という記事をたまに見かけます。この点について私は意見が異なります。

再雇用に消極的な企業が懸念するデメリットは大きく二つあります。
●待遇面や評価における既存社員との不平等感
●既存社員のモチベーション低下

「そもそも既存社員に対してフェアな人事制度があるのか?」
この問いに対して「YES」と胸をはってこたえられる会社はまだ少ないはずです。変化は見られるものの、まだまだ日本企業では若手の抜擢が起こらず年次で昇進が決まります。またリーダー職につく女性の割合は諸外国と比較しても下から数えたほうが早い。あなたの会社はどうですか?

既存社員か再雇用に関係なく、従来の制度が社員のやる気を引き出しているのか、納得性が高いフェアな制度なのか見極める必要があります。既存社員が自分は報われていないと感じているならば、再雇用のまえにそこから改善すべきです。

属性に関わらず、個人が挑戦・成長できる機会が提供されている。
労働時間ではなく「発揮された成果」に応じて報酬(処遇)が決まる

求められる役割を果たせる人材ならばスキルや能力(社外で身に着けたもの)を加味して現在の報酬レベルを基に報酬を決めましょう。外の機会に挑戦しそこで得た経験が付加価値をもたらすのならば、高めの報酬にすべきです。詳細な再雇用制度を設計する必要はありません。あくまで既存の制度内で再雇用される人材にとって不利にならないようにします。

②他者の再雇用によって下がるモチベーションは本物なのか?
日本企業では「平等」という言葉の出現率が高いですよね。組織の外では市場原理に基づいて動いているのに組織内では収益を同じような配分で分配するのでしょうか。そろそろ平等神話から脱却し、企業は「社員を平等に扱う」から「社員に公平な機会を与える」ところだと認識を変えたほうが良いでしょう。平等とは全員が同じ分だけもらい受けることができること。一方で公平とは全員が同じだけの扱いを受けられることです。

ネットでよく見るイラストです。小さな男の子が試合を見られるように箱を二つ与えること(公平)に対して異論がありますか?将来男の子が努力を重ねて一流の野球選手になれば、会社がえこひいきをしたからと不平をいうのでしょうか?

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モチベーションとは人間が何かをするときの目的意識や動機付けです。他人と自分を比較して不満を言ったり、それによって上がったり下がったりするのは本物のモチベーションではありません。自分の評価や報酬について疑問や懸念があるのであれば、上司や人事ときちんと話して解決すべきであり、他者と比較しても解決には至りません。他人と比較して不満をいう社員ではなく、協力して組織の目標の実現にコミットしている社員に時間やリソースをさきましょう。組織の20%がポジティブに受け止めれば、組織全体にその効果が伝播することはキャズム理論によって証明されています。

不満を言う社員を心配するよりも優先したいのは、
●組織と自分の成長にコミットし高いモチベーションで働く社員を増やす
●戻ってきた社員が外で獲得した能力を発揮する環境をつくる
●社員がそれぞれの違いを理解・尊重し、互いに配慮しながら協力する

組織で働く誰もが自分の仕事にやりがいを感じ、努力して貢献したいと思える環境の構築。これこそ経営が最優先することです。
競争力を確保するために、限られた時間とリソースをそこに割きましょう。
このように再雇用のときに思い浮かぶデメリットは組織を進化させるヒントになるものであり、組織変革を加速させる優れた触媒になりえます。

戻ってきたいと思う魅力的な会社になる

去っていた人を惹きつけ、自社が選ばれるためにやれることがたくさんあります。

退職者の意見をヒントに組織を持続的に改善する
皆さんの会社では、社員が退職する時に退職インタビューやサーベイを実施していますか?退職者のフィードバックは「会社をより良い場所」にするため、「会社が変わるため」の最上級のアドバイスです。社員が忌憚ない意見を率直にいえるような仕組みを整えたいものです。データを蓄積・分析し、現場のリーダーにも共有しながら今後のアクションを考えみてはどうでしょうか。改善すべきところは率直に認め真摯に向き合う。人だけでなく組織の成長にもつながる原理原則です。

「ここで働けたことは最高の経験だ」と退職者に感じてもらう
時間をかけて育てた部下や同じ目標に向かって努力してきた仲間が辞める。ショックですよね。それでも自分のやりたいことを見つけて外の機会に挑戦したり、個人的な事情で去らなくてはいけない仲間には「感謝と励ましの言葉」をかけましょう。退職のアナウンスも最大の配慮が必要です。同僚や周囲に退職をどのようにいつ伝えるのか、本人の希望を尊重します。ほんの少し時間を割いてケアをすれば心に残ります。入社よりもむしろ退職時のケアの方が重要なのです。
「卒業おめでとうございます。これまでの貢献に感謝しています。機会があればまた戻ってきてくださいね。ドアはいつもオープンです。」私が退職する社員に伝えたメッセージです。退職者と会えない場合にはメールか電話で伝えました。最高のファンになるのか、二度と近づきたくない会社だと思うのか。私たち次第なのです。

退職後も程よい距離で繋がっている
企業を離れた後も退職者と定期的にお互いの近況を共有しましょう。相手の状況を知ることはもちろんですが、(伝えられる範囲で)企業側の変化やビジネスの状況を伝えます。変化にも乗り遅れないし、戻ってきてくれるきっかけになります。相手の状況を知っていれば、非公式にコンタクトして復職の打診をすることができます。優秀な人事のプロが必ずやっていることです。

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最後に・・いつか戻ってもいいなと考えている方へ

冒頭でお伝えしたように、私自身が「再雇用」された経験があります。
会社も、働く仲間も、全てが好きで好きでたまらなかったのですが、外で自分の能力を試したと思い退職の道を選びました。本当の理由は、一番の理由は当時の経営者のビジョンに疑問を感じたからです。
退職して数か月後に、経営層を刷新するから戻ってほしいと上層部から連絡がありました。驚きよりも嬉しく思ったのを覚えています。
新社長が掲げたビジョンと事業戦略に胸が躍りました。チャレンジングな仕事、より高い職責と見合った報酬を提示され、私への期待を感じました。
私が復職したときやりにくくないように「温かく迎えて全面的に支援してほしい」。そのとき社長や上司は、同僚や仲間に個別に話してくれたそうです。感激して、ここでもう一度貢献したいと強く感じました。出戻りなんかではありません。

最後に・・一度会社を離れてしまったけど機会があればいつか戻ってみたい。そんな気持ちがある方はご自身に以下の質問をしてみてください。

✔外部で培った経験や身につけたスキルを持ちかえり、以前の組織やチームに貢献したい(成果を出せる!)
✔成長を促進するチャレンジングな仕事がある(前とは異なる職務じゃなきゃ!)
✔職責や能力に見合った報酬や待遇が準備されている(交渉すること!)
✔信頼できる上司、同僚や仲間がいる(今も繋がりがあること!)
✔出戻りなんて言葉を使わないカッコいい人事がいる(ここ大事!)

もしイエスが3つ以上ならば再雇用に挑戦してみることを強くお勧めします。古巣での第二チャプターはあなたの成長を加速させてくれますよ。
いつかそのストーリーをNoteでシェアくださいね。楽しみにしています!

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