オンライン会議・ハイブリッド会議の時間の質を高める10のポイント
リモートワークが広がり、会議の形式も対面型からオンライン型に急速に移行しました。オンラインの会議への移行に伴い、会議のファシリテーターを担当する人はこれまでの対面型と同じやり方だとうまく行かないと感じることも増えたのではないでしょうか。
会議のファシリテーターがどのような役割を持っているのかについては先日日経COMEMOにて書かせていただきました。
今回はオンライン、そしてオンラインとオフラインのハイブリッド型の会議が中心になったこの時代に会議のファシリテーターが気を付けるべきポイントについて書きたいと思います。
オンラインとオフライン
急速にオンライン化が進む中で、これまでオフラインで場でやってきたことを同じようにオンラインでやれば良いのでは?と考える人もいるでしょう。イベントでも同じですが、特にファシリテーターの役割の人が会議においてもオンラインとオフラインが同じであると考えていると、参加者からの意見が引き出しにくくなったり、会議のゴールにたどり着けないことが発生してしまうのです。ですので、まずは
「オンラインはオフラインの代替ではない」
ということをしっかりと意識し、オンライン会議のファシリテーションをするようにしましょう。
それではオンライン会議のポイントを見ていきましょう。
① 目的志向になりやすいことを意識しよう
オンライン会議の場では、基本的に参加者は開始時間に集まり、アジェンダに沿って進行していくことが多く、会議の場が「目的志向」になりやすくなります。同じ内容の会議でもオフラインの会議と比べ時間が短くなっていると感じている人も多いのではないでしょうか。会議の目的を遂行するために集まり効率的にコミュニケーションを取る考えを持ちやすいので無駄なく進行することが多いのです。
1. 雑談の時間を大切に
オフラインの会議では開始の少し前に集まって、その会議とは関係のないことを話すなど「余白」がありましたがオンラインではその余白が作りにくいのです。こちらのファシリテータが考えるべきポイントに関する記事でも書きましたが、良質な会議にするためには心理的安全性が高い状態にすることが重要です。そのためにはまず参加者同士の関係の質を高める必要がありますが、余白の少ないオンライン会議の場では意識をしないと心理的安全性が生まれにくい状態となり、良い意見などが出にくくなります。
会議のファシリテーターは「余白」を生み出すために意識的に雑談の時間をつくることをしっかりと意識しましょう。効率性を重視するオンラインの場では雑談の時間は無駄な時間と捉える人もいるでしょう。しかし、この雑談の時間こそが参加者同士の関係の質を高め、良いアウトプットが出やすい状態を作るのです。
2. 論点からストレートに話そう
目的志向になりやすく、周りくどい言い方だと伝わりにくいオンライン会議の場では、ファシリテーターは論点(お題)から話すことを意識しましょう。
まず、その会議で何について話すのかという議題、テーマなどまず論点を伝えます。
次に「何が言いたいか」という結論、意見など主張をしっかりと伝えるのです。
そして、主張の根拠となる「なぜそう考えたのか」という理由を述べます。
会議のファシリテーターは「論点」-->「主張」-->「理由」の順で参加者とコミュニケーションを取ることをしっかり意識して進行していきましょう。
② 安心して参加できる場づくりをしよう
会議で良い意見、アイデアが出やすくするには会議の参加者が遠慮なく発言がしやすい心理的安全性の高い場にすることが重要になります。会議における心理的安全性の重要性についてはこちらの記事にも書かせていただきましたが、今回はオンライン会議においてどういうことに取り組むと良いかを書きたいと思います。
3. 画面ON & 音声OFFが基本
オフラインの会議では当然ですが参加者の顔は見えている状態になっています。しかしオンラインでは参加者は画面をオフにすることが出来ます。その状況ではファシリテーターや他の顔出しをしている参加者からすると、議題や意見に対しその人がどのように感じているのかが表情からは分からなくなります。そうした状況下では相手がどう感じているのか不安が生まれ、安心して意見を言うことが難しくなるのです。
また、誰もが話が出来る状況ですと、背後の雑音なども拾ってしまうこともあり、オンラインの場合音声が被ってしまいうまくコミュニケーションが取れなくなります。ですので話す時以外は基本的に音声をオフにしておくと良いでしょう。
会議の基本ルールとして画面ON & 音声OFFとすることで、皆が安心して意見をしやすく会議に集中しやすい環境が作れるのです。
4. 一人一言からスタートしよう
会議に参加した時に会話のリズムはとても大切です。人によっては会議の間一言も発することが出来ず時間が過ぎてしまうこともあるでしょう。人にもよりますが、最初の一言を発することに対し壁を感じる人もいます。オンラインにおいては画面上で話している人にスポットが当たることもあり、遠慮も生まれやすくなるのです。
逆に最初に一言を発する機会があるとその後も発言しやすくなります。
ですので、会議のファシリテーターは最初に全員から短くても良いので一言ずつ話してもらう時間をつくることでその後意見が出やすい状況をつくることが出来るのです。
5. 内職はNG
オンライン会議の場合、参加者は内職をしやすい環境にいます。参加者が内職をしていると会議の議論に集中していない状態なので、会議のアウトプットの質も下がってしまいます。
よって、会議のルールとして内職はNGとすることをお勧めします。
6. オブザーバー制
一方で、情報収集などの目的で会議の話は聞いておきたい人もいると思います。その場合、議論には直接参加しないため、内職をしながらという場合もあるでしょう。そうした人のために「オブザーバーとしての参加」を認めるのも良いでしょう。オブザーバーは顔出しせず、音声もオフで参加をルールとします。皆がその人がオブザーバーであることを認識することで顔が出ていなかったり、内職をしていても気にならなくなります。
③ フラットな関係
オンライン会議においても、参加者がオンラインと実際の会議室の両方にいるハイブリッド型の会議においても重要なことは、参加者それぞれがフラットな関係であるということです。
7. 会議室メンバーも全員オンラインで参加しよう
特にハイブリッドイベントにおいては、オフラインで会議室に集まっている参加者同士はコミュニケーションが取りやすい状態なので、オンライン側の参加者が心理的に疎外感を感じることがあります。その状況では参加者の心理的安全性が高い状態とは言えず、オフラインの会議室メンバーの意見が強くなったりしてしまうのです。
ですのでハイブリッド会議では会議室にいる参加者もそれぞれ1人1台のPCを用意し、各々がZoomやGoogle meet, Teamsなどから会議に参加し、画面はオンそして音声はオフの状態で会議に参加しましょう。(1台だけ音声を集音する役割で音声をオンに)
そうすることで、会議室から参加している人とオンラインで参加している人が同じ状態になります。
オンラインで参加している人も会議室から参加している人もフラットな状態でコミニケーションが取れるため参加者全員の心理的安全性が保たれ、オンラインの参加者も意見を言いやすい状態になるのです。
8. 順番に指名して回していこう
会議のファシリテーターは参加者全員が意見を出しやすい状態を作る役割があります。しかし参加者によってはなかなか意見を出しにくい人もいるでしょう。会議の内容にもよりますが、ファシリテーターが参加者を順番に指名し意見やアイディアを聞いていくことでオンライン、オフライン、普段から話すのが得意な人、声を出すのが苦手な人にかかわらず、参加者からのインプットを集め会議の時間を良質な時間にすることができるのです。
9. 口2耳8
会議のファシリテーターは会議の参加者が「話すのが2割、聞くのが8割」となることを心がけましょう。これはトヨタ社の会議などでのコミュニケーションのスタンスを示した言葉です(参照: 「トヨタの会議は30分」すばる舎)。
会議において、参加している人が全く話さない状況はアウトプットがゼロとなりますし、話し過ぎると対話が一方通行になります。ファシリテーターも話しすぎると参加者の意見の吸い上げが十分ではなくなり、まとまった意見もファシリテーターの意見に過ぎないという印象を持たれかねず、出たアウトプットも納得度の低いものになりかねません。オンライン会議であれ、ハイブリッド会議であれファシリテーターは参加者の意見、アイデアを引き出すことをしっかりと意識することが大切です。
10. 専門用語を使うときは要注意
会議において専門用語を使うときは要注意です。参加者によってはその専門用語を知らない可能性もあるため気がつけば何の話をしているか分かっていない人がいる状況を作りかねません。その状態が続くと、意見やフィードバック、アイデア等も出づらい状態となります。
特にオンラインを活用した会議の場では、議論を途中で止めて意見を聞いたりしづらい環境となります。オフラインの会議室では横の人に聞くなど分からないことを解消するチャンスがありますが、オンラインでは自力での解決が難しいのです。
そのような状態にならないように、会議のファシリテーターは専門用語が出てきた際にはその意味も説明する時間を作るようにし、置いてけぼりの人を作らない=全員が内容をフラットに理解している状態を作ることが大切です。
まとめ
オンライン会議やハイブリッドの会議では、オフラインの会議以上にファシリテーターの役割は重要となります。会議のファシリテーターはオンラインを活用した際の特性である目的志向になりやすいことを理解し、参加者の心理的安全性を高め、フラットな状態でのコミュニケーションを設計することで良質なアウトプットの生まれる会議の場を作っていきましょう。
参考文献
会議のファシリテーションについて様々な学びをいただき参照させていただいた本を最後に紹介させていただきます。
上記でご紹介した「オンライン会議の教科書」の著者 堀公俊さんがオンライン会議について話されている記事もありますのでご参照ください。