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ビジネス推進の源は現場力にあり〜コアバリューを生み危機を乗り越える力の源泉

「現場主義」という言葉を聞いて、どのようなイメージがあるでしょうか?

今回、日経COMEMOの投稿募集で #現場主義で得られたこと を問いかけられたことをきっかけに自分の中でも考えてみました。

私は”Peatix”というイベント・コミュニティをサポートするプラットフォームサービスを2011年から10年間運営してきました。この10年を振り返った時に今回の問いである「現場主義」というキーワードが頭の中でつながりました。Peatixのコアバリュー、そして危機を乗り越える時の原動力となったのは「現場」を大切にした動き方でした。

今回は自分の経験も踏まえ「現場主義」について考えたいと思います。

「現場主義」って何?

「現場主義」と聞き、京セラ・第二電電(現KDDI)の創業者 稲盛和夫さんを思い出す方もいらっしゃるのではないでしょうか。稲盛さんは現場主義に徹したと言います。

「現場は宝の山である」と言われますが、現場には問題を解くためのカギとなる生の情報が隠されています。絶えず現場に足を運ぶことによって、問題解決の糸口はもとより、生産性や品質の向上、新規受注などにつながる思わぬヒントを見つけ出すことができるのです。これは、製造や営業に限らず、すべての部門に当てはまることです。

稲盛和夫OFFICIAL SITE

「現場主義」は元々製造業の場において多く使われてきました。言葉の意味としては一般的には現場主義は下記のように定義されています。

現場主義】実際に業務の行われている場所にあって業務の実行の中から生じる問題点を捉え、それを改善し、能率と業務の質の向上を計ること。

コトバンク

現場主義はただ現場に出るということではなく、現場に出て業務を遂行することで課題を捉え、その課題を改善していくことを意味するのです。

現場に出ることで生まれるコアバリュー

Peatixのこれまでの活動を「現場主義」という観点で振り返ってみました。

Peatixのサービスが始まったのは2011年5月。東日本大震災の直後でした。サービスの開発を始めた当初(大震災前)は、エンターテインメント系のイベントなどで多く使われるのではないかと考えておりました。しかし、サービスを開始した時期、世の中は自粛の真っ只中であり想定していたマーケットは存在しない状況になっていました。

そのような中、世の中の潮流として震災復興のための有志の活動や、NPOが次々に立ち上がっていたのです。我々はそうした活動を支援することを決め、震災復興や社会貢献に関連するイベントに対して大幅な割引を提供し、数多くのイベントの現場にサポートに出ていきました。

震災復興のための社会貢献活動をするコミュニティ、NPOとイベントの現場をサポートし、直接コミュニケーションを取ることで、我々はコミュニティとは何か、コミュニティの重要性を”理解”することが出来、抱えている課題も”把握”することが出来ました。
また、同時期に“Ideas worth spereading”という理念のもと活動しているTEDの精神を世界各地に共有するために生まれたコミュニティ”TEDx”の日本のコミュニティの支援も開始しました。当時、全国各地で開催されるTEDxに出向き現場でのサポートを行っていました。その中でTEDxを主催するアクティブなコミュニティリーダーと出会い、多くのつながりと学びを得ることが出来ました。

この時期に様々なコミュニティの現場に出ていき、コミュニティの本質を理解する重要性を学び(コミュニティの本質を理解する旅は今も続いています)、コミュニティの持つパワーを理解し、課題を把握したこと。それこそが本日に至るまでPeatixにとって根幹となるコアバリューを形成するきっかけとなったのです。

2011年当時、イベント・チケットに関連するサービスが数多く生まれました。しかし、あくまでEコマースとして決済の部分のみを考えているサービスは早々にサービスを終了していきました。イベント・コミュニティは生きています。その胎動、思いをしっかりと現場で捉えたサービスがその後も続いていくことになりました。

危機を乗り越える”現場力”の重要性

「現場力」という言葉を聞くと、2020年2月以降の新型コロナウイルスの感染拡大時のことも思い出されます。
2020年2月以降オフラインのイベントはキャンセルもしくは延期が相次ぎました。Peatixがそれまでずっとサポートしてきた(オフラインの)イベント開催が目の前から消えていったのです。
ビジネスとしても非常に厳しい状況となりましたが、その危機を救ってくれたのはこれまでに培った”現場力”でした。

ビジネス関連のイベントでオンラインへの移行の兆候も、常に現場に出ているメンバーがすぐに掴みました。チームのメンバーは「どうすればオンラインでの活動をサポート出来るか」ということを考え、オンラインイベント開催のためのノウハウなどをすぐにブログにまとめ発信をしていきました。
また、これまでオンラインイベントの開催経験がほぼ無かったため、私も含めそれぞれのメンバーが積極的にオンラインイベントを開催していきノウハウを貯めていきました。以前COMEMOでも紹介しましたが、2020年5月には24時間オンラインチャリティイベントも開催しました。それまでオンラインイベント の開催経験の無かった我々がわずか2週間で準備をしたのです。

また、危機的な状況下においては、現場のメンバーが自身で判断し行動することも求められます。社内のコンセンサスを取ることに時間を取ってしまうと乗り切れない局面もあります。日頃から現場力を高めていくことが重要なのです。

オンラインという”現場”に積極的に出ることにより、オンラインイベントを開催する際に必要な機能が何なのか、課題を的確に捉え、開発チームにフィードバックし優先順位付けすることで、世の中のコミュニティ・イベント主催者が求めている機能を正しいタイミングで提供することが出来ました。結果としてオフラインのイベントの開催が出来ず困っていたコミュニティ・イベント主催者をサポートすることが出来、ビジネスとしても多くのオンラインイベント でPeatixを活用していただけるようになったのです。

こうして世界的にも未曾有の危機であるコロナ禍も”現場”での動きを大切にしてきたことによって乗り越えることが出来ました。

オンライン・ハイブリッド時代の現場主義

先日、藤本あゆみさんが書かれていた記事を読み、これからの”現場”にはオンラインを意識していくことが重要であることに改めて気づかされました。

これまでと違い、オフラインの現場だけでなく、オンライン、そしてその両方であるハイブリッドの現場において、どのように的確に問題を捉え、改善につなげていけるか。これは決して簡単ではありません。オンラインが加わることでこれまでよりも情報量、解像度が下がりやすくなります。これまでとは違う環境であることを意識し動いていくことが大切です。

現場主義で得られたこと

これまでのPeatixの10年間を振り返り、現場主義を大切にし動いてきたことで、サービスのコアバリューを見つけ出すことが出来ました。そして都度発生する危機を乗り越える際に原動力になってきたのは現場力でした。現場に出ることでその時期ごとにコミュニティが抱えている課題感、そしてその変化を捉え、フィードバックを社内にしていくことで、適切に改善の優先順位を決めてきたことが、サービスの成長につながったのです。

これからも”現場”は変化し続けていくことでしょう。しかし、その変化もしっかりと捉え現場主義でビジネスを推進していくことが大切だと考えています。


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