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アップル税が高すぎませんか?アップル対テンセントのバトル勃発で中国iPhoneユーザーが動揺

中国ではiPhoneが話題になっていました。というのも、9月発売のiPhone16がWeChatをサポートしない可能性があるという噂が出回り、中国の消費者のあいだで大騒ぎとなっていたからです。

中国ではWechatなしでは生活できない、仕事ができないといっても過言ではないほど、生活に必須のインフラアプリ。もしもiPhoneでWechatが使えなくなったときに、既存のiPhoneユーザーたちがAppleとWechatの二者択一を迫られた場合どちらを選ぶかというのは実に気になるテーマです。

中国版LINE強化版のWechatを開発運営するテンセントがいかにヤバい会社かはこちらを御覧ください↑

iPhoneがWechatをサポートしないという話が出てきた根本的な理由は、長年批判されてきた「アップル税」の問題です。

みなさんご存知のアップル税。ユーザーがAppleのアプリストアでアプリをダウンロードする際や、アプリ内課金で商品を購入する際に、必ずアップルの決済システムを通さなければならず、その売上の30%ほどをアップルが手数料として徴収し、残りの70%がデベロッパーの取り分になるもの。

このアップル税は、表面上アプリの開発者から徴収されるものになってますが、実際には相当部分が最終的に消費者に価格転嫁されていて、中国だけでなく世界中で批判的な意見がたくさんあがっていますね。

↑日本も中国やEUのようにGAFAMと強く交渉したほうが良いと思うんですけど。。

そして、今回の事態は日本のユーザーにはわからない視点があります。Wechatの開発提供会社のTencentとAppleの間で争いが勃発したのにはWeChatのミニゲームの急速な成長があって、ミニゲームの影響力が大きすぎるがゆえに両社とゲーム開発会社の利害が対立するに至ったのです。
(ミニプログラムやミニゲームって何って方はこちらをご参考に↓)

従来のアップル税の徴収ルールでは、iOSプラットフォーム上で発生した収入はすべてアップルの決済経路を通さなければならないですが、WeChatのミニゲームはストアからインストールする必要はなく、WeChatで完結。よって、Appleの決済システムを介す必要がなかったのです。ゲームユーザーはアプリ外で課金行為を完了できるので、Appleはこれらのミニゲームの収入からアップル税を徴収できない。

ちなみに、ミニプログラムゲームの規模もかなり大きくなっています。中国音数协游戏工委(音数協ゲーム委員会)が発表した最新のデータによると、2024年上半期のミニゲーム市場の実売収入は166億元で前年同期比60.5%増加です。そのうち、アプリ内課金から生じた実売収入は前年同期比181.56%と大幅に増加です。

一方で、日本でもたくさん報道されているとおりAppleは中国市場で苦戦が続いていて中国での収入も減少し始めています。Huaweiなどの国産スマホがたくさんある中国ではiPhoneのシェアはどんどん下がっていて、今は5位まで落ち込んでいます。また、今年6月時点でAppleの中国での売上高は約6%減少との報道もありました。

画像:https://www.idc.com/より。vivoとHuaweiのTOP争いも面白い

こんな状況だったこともあり、AppleはTencentやByteDance(TikTokの運営会社)に対し、アプリ内の支払いの抜け道を塞ぐよう圧力をかけ始めバトルが激化。AppleとTencentの攻防が激しくなることで、次期iPhoneモデル(iPhone16)がWeChatをサポートしない可能性があるという噂が市場に流れ、反撃としてWeChatがiPhone16をサポートしない可能性が浮上。iPhoneがiOS18.2にアップグレードされればWeChatは使用できなくなるという憶測も出ています。

実のところ、これはアップル税をめぐるAppleとTencentの最初の対立ではありません。2017年、アップルはWeChatの公式アカウントへの寄付収入から30%の手数料徴収を要求し、TencentはiOS版のWeChatから寄付機能を一時的に削除。しかし、これが大きな批判をよんだことから、Appleは最終的に譲歩して公式アカウント記事への寄付収入からの手数料徴収をとりやめる、一旦はAppleとTencentの争いは収まってはいたのですが。

iPhoneは世界的に大きな影響力を持っていますが、中国国内ではWeChatの影響力のほうが圧倒的に大きいのが現実。ユーザー数で見ると、iPhoneの中国国内ユーザーは約2億人ほどとのことですが、WeChatのユーザー数は13億人。WeChatは中国国民レベルのアプリで、現時点で代替品がなく、中国消費者にとって必需品となっている。

もし、この交渉が悪い方向にいってAppleとTencentでわかりあえない状況になると双方にとって大きなマイナスとなることは明白。Appleは一貫して強気ですが、iPhoneからWeChatを排除するという噂に対しては最終的に否定しています。一方でTencentも手数料問題についてAppleと交渉中だと表明していて、水面下で交渉が続いているのでしょう。

Apple税に困っているのは日本のデベロッパーやユーザーのみなさんも同様で、日本でもあの手この手で迂回しようとしている方々を目にしますね。もちろん、”政策があれば対策もある”中国では、iPhoneユーザーもさまざまな手でこのアップル税を回避しています。例えば直接アプリ内で購入するではなく、safariでアクセスしてweb経由で入会してからモバイルで登録すればweb料金で済む、といったことはもはや常識。

例えば、膨大なユーザー規模である中国の動画配信サービス。iPhoneやiPadなどのアップル製品経由で有料会員を登録すればAndroidより高くなります。

(画像:Baiduから)

↑例えば画像の左側はAndroidでiQiyi(動画サブスクサービス)の年間会員を購入するスクショ。1年間で178元。一方で右側のiPhoneだと、218元。30%まで高くはないが明らかに価格差があります。このような現状は中国のネット民(Android、Huaweiのユーザー)から、「(金持ちの)iPhoneユーザーだから仕方ないねぇ」と揶揄されてます。まぁこれを見たらiPhoneでなくAndroidやWebで買いますよね。

また、面白いのは投げ銭の課金方法。例えば、BilibiliのようにVtuberに投げ銭するシステムのあるプラットフォームでは、Wechatなど経由で公衆アカウントやミニプログラムで確実に指定されたアカウントにチャージできる、いわゆる”非アップルツール”があります。

画像:BiliBiliのスクショ

↑上がiOSで6元チャージの42コインが、”非アップルツール”では6元で60コイン。かなり違いますね

もしかしてこの方法も今回のデマの一因なのではと感じてしまいます。ともあれ、iPhoneとWechatがお別れする日が来たら凄まじい衝撃になりますので(株価暴落は間違いないでしょう)、引き続きチェックしていきたいと思います。そして、アップル税金は高すぎると思います。日本の皆さんも声をあげるべきでは!?

(参考資料)


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