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ほぼコロナ前の様子を取り戻したVIVA Technology2022

先日6回目となる VIVA technology がパリで開催された。4日間の会期中、実際に会場に足を運んだ参加者は9万1千人、オンラインでは30万人以上の参加があったという。

今年は、フランスでのマスク着用規制も撤廃されたことを受け、ほぼCOVID-19前のスタイルでの開催となった。

昨年はまだCOVID-19の流行がおさまっていなかったため、リアル会場での開催はあったものの、チケットを買っても会期4日間のうちいずれか1日だけしか会場に入ることが出来ず、また1日の入場者数は最大5000人という条件付きの開催であった。このため私も昨年は現地での参加を見送った。昨年の現地の様子のビデオを見ても、今年と比べて非常に来場者も少なく、またホール内の出展も今年よりもブースの間隔は広く取られていたように思う。

その点、今年は2019年までと同様、1枚のチケットがあれば会期中4日間何度でも入場することができたし、各ブースは多くの来場者で賑わっていた。来場者数も、2019年の12万人を超える数には及ばないものの、会場の賑わい振りについてはコロナ前のレベルに戻った印象を受けた。

ブース出展状況に関しても、2019年のようにホール2を使うところまではいかなかったものの、ホール1についてはすべて使用する形になっており2018年開催と同等のレベルまで回復したということだろう。

また、昨年は有料だったオンライン配信が、今年は無料化された。足を運ぶ来場者のチケット代だけで開催費用が賄える、という試算だったということだろうか。

出展社は、例年通りフランスを中心としたヨーロッパの大企業が出しているほか、アメリカからFacebook改めMetaや Google のブース出展があった。また、フランスの各地方(州や県に相当するRegion)のブース、そしてフランス語圏を中心としたアフリカ各国が出展するアフリカテックがあることで、こちらも2019年までと大きな枠組みは変わっていない。

ただ目立つのは、2019年から本格的に大きなブースを出し始めた Huawei が今年も存在感を示していたことと、アフリカテックで英語圏のアフリカの国であるエジプトが今年は大きなブースを初出展していた 。

また日本関係では2019年には出展がなかった JETRO による日本ブースが復活し、台湾などとともにアジア諸国からの出展のひとつとなった。アジアで言えば、今年はインドの出展がフィーチャーされていたこともトピックスの一つである。 

このように、大きくは2019年または2018年レベルまで復活したように感じたが、小さな変化として、フランス語がやや前面に出て、英語を最優先するという姿勢が少し後退したように感じられた。会場内の表記の一部や、今年もやはり来場したマクロン仏大統領の話が終始フランス語であったことなどによるものだ。これは、COVID-19で国境を越えた人の往来が途絶えていたことの影響なのかもしれない。

実際、会場で見かける欧州域外からの来場者と思しき人の数は、過去に比べると少ない印象ではあった。ただ、主催者の発表では世界の146か国からの参加者が来たということで、これは2019年の125か国を上回る国数だ。来年は、国数だけでなく人数も回復することが期待されるので、英語で不自由しないVIVATECHが維持されることを期待したい。VIVATECHが単にフランス国内のイベントということではなく、世界でも他に例を見ないスタイルのオープンイノベーションイベントであることを考えると、最終日の地元への一般公開日は別として、英語で用が足りるインターナショナルイベントであることの意義は極めて大きいと思う。

個々のブース・出展については、ここではいくつかの写真をあげることに留めておきたい。ヘルスケア・ウェルビーイング、スマートシティ・スマートインダストリー、ゼロエミッション・サステナビリティの3つの個別テーマに関しては、SINEORAとして、出展スタートアップを洗い出し、注目の会社を実際に取材・収録して、日経新聞主催でウェビナーを実施したので、こちらをご覧いただければと思う。8月いっぱいまでアーカイブ視聴が出来るようになっている。

また、VIVATECH全体としての総括・まとめのセミナーも7月5日に実施を予定しているので、こちらも是非参加していただければと思う。このCOMEMOを読んでいただいている方には、日本経済新聞から割引コードを頂いているので、こちらをプロモーションコード欄に入力し「適用」したうえでお申込みいただくと割引価格で参加することができる。

割引コード VIVA30COMEMO

この記事で指摘されている通り、日本の文化やビジネスの在り方を考えると、フランスから学べること、フランスのやり方をまねることが(アメリカをはじめとする他国を模倣するよりも)上手く行く可能性が高いことは、かねて感じるところであり、また折に触れて指摘しているのだが、まだまだこうした認識はごく限られたものだと思う。一人でも多くの方にVIVATECHに実際に足を運んでいただき、たとえばシリコンバレーといったフィルターを通すのではなく、ストレートにフランスで起きていることを見て頂けたら、日本のスタートアップエコシステムやオープンイノベーションにとって有益なヒントが見つかるのではないかと思う。

いずれにしてもコロナ禍を経てこうしたイベントの開催が復活したのだということを改めて感じた。一方で、マスクのないままのイベント開催は個人的には不安を感じる部分もあったし、また実際にこの会場内かあるいは会場外でかはわからないが、VIVATECH参加者の中に感染した人が出たことも事実ではある。

COVID以前の通り、とは言いつつも、感染の可能性があることを踏まえて、それに応じた各種の準備や保険などの対応した上で参加しなければならないという点は2019年までとは違っているし、また航空便や空港の状況なども2019年までとは異なる部分もある。今後、機会があればこうしたリアルなイベントに参加される意義があることは間違いがないが、一方で十分にCOVID前とは違う部分への対応をしながら参加を検討していただければと思う。



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