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「副業規制」など存在しない

先日の日経新聞記事に「副業規制」という表現を用いて、希望がありつつも副業を実施できていない人がいるという旨の記事が掲載されていました。

私は、この記事を読んで、内容には違和感はないものの「副業規制」という言葉には、ピクっと反応していまいました。

これまでも私の記事をお読みいただいた方からすれば、繰り返しのような内容になりますが、この記事を受けて、再度「副業規制」とは何なのか、そもそも「規制」は存在しているのかについて書いていきます。

※今回の記事については、以下もご参照ください。


「副業を認めない」ということが許容されるか

上記の記事では、副業を希望しながらできていないという人の理由として挙げられているのは、「本業で認められていない」が53.8%で、これが最も多い理由のようです。

しかし、法的には、副業は原則として自由に行うことができると解釈されています。
例外的場面においては、副業を禁止することも許容されているものの、一切副業を禁止することは認められておらず、そのような就業規則の定めは無効であるという見解もあります。

これは、①そもそも副業は本業の就業時間外に行われる、いわば私生活の活動であること、②憲法上「職業選択の自由」があること、が理由とされています。

「副業規制」は存在するか

上記で述べたとおり、そもそも我が国の労働関係法令上、副業を禁止するという意味での「副業規制」は存在していません(一部、学説では「労働時間の通算を前提とすると労基法は副業を原則自由としていない」という見解もありますが、少数です)。

したがって、法律上は、副業規制は存在していません。

では、上記の調査のように、企業がこれを認めないということができるかというと、これも上記で述べたとおり、認められていないということになります。

このように考えてみると、そもそも「副業規制」というものは、法律上も、労使間の労働契約上も存在していないと考えるべきでしょう。

何が「規制」になっているか

そもそも「副業規制」など存在しない以上、やや乱暴に言えば、例外的な禁止事由のない副業であれば、会社が認めていなかろうが、無視して副業をやってしまうこともできます。

だとすると、一体なにが「規制」になっているのでしょうか。

これはおそらく、終身雇用を前提とした本業先への(過度な)忠誠心による「副業はやってはならないもの」という雇用慣行でしょう。

これは、企業側もそうですが、働き手も、副業が認められていないことに何らの違和感も持っていないことが多いことからもそういえるでしょう。

働き方改革以降の副業推進政策は「慣行」を変えるもの

よく「副業・兼業ガイドラインで副業が解禁された」という記事を見かけましたが、これまで述べてきたとおり、そもそも副業は一度も禁止されたことなどない以上、「解禁」ということはあり得ません。

政府の副業推進政策は、副業がそもそも自由であるのに、「副業はやってはならないのだ」という誤った理解に基づく慣行を変えるためのものです。
副業・兼業ガイドラインや、モデル就業規則改定も、そのことを目指したものといえます。

もちろん、現実的な問題として、労働時間の通算の問題は企業側にとって大きな問題ではありますが、副業をするか否かという場面においては、これを規制するものはないということの理解が進むことを期待したいところです。


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