見出し画像

起業家の成長を下支えする力


シード投資をしていると多くの起業家に会い、多くの起業家の事業に関わります。その中で、成長できる人と伸び悩む人の差は何なのか。
投資に対して向き合いながら、毎日これについて考えてきましたが、今日はその気づきの一部を残しておけたらと思います。
ベンチャーキャピタルは成長性の高い起業家を見つけて投資することが仕事ですが、そもそも「成長性の高い起業家」とはどのような起業家なのでしょうか。

成長する起業家とは?

私は起業家について考える上で、「想い」と「事業スキルの伸びしろ」(成長性)の2つを重要な構成要素と考えています。

「想い」とは。
「想い」とは、解決したい課題や創りたい世界があり、その課題を解決したいという強い想い。これはファンダーマーケットフィットや起業家の原体験などという言葉を使うこともあります。
しかし、日本のように恵まれた環境で生きてきた人々は、世の中の課題に直面することなく育っていることも多いです。
そして、原体験は「なければ事業が成功しない」というわけではありません。ただ、事業が成長していく中で沢山のハードシングスを乗り越えられる胆力に関わるとは思っています。

次に、「事業スキルの伸びしろ」について。
こちらが今回お話したかったことですが、やはり想いが薄くても良いビジネスモデルを見つけて、ささっと事業展開して売上げをつくる起業家も多くいます。それはやはり事業スキルが高いから。
学生起業家よりも社会人経験がある人の方が事業成長がスムーズなのは、企業勤めを通じて事業スキルを身につけているからです。
では、この事業スキルとは何でしょうか。
重要な鍵は言語化と数値化、そして手探りながらの意思決定にあると想います。これらはPDCAサイクルを支える力とも言えるでしょう。

■言語化

言語化のスピードが早く適切な人は物事や問いの解像度を上げるのが上手く、具体性を持てるので次のアクションに繋がり、必然的に事業の成長力も上がります。
起業家は0→1を創るとき、思いついた事業アイディアの解像度をあげて、本質的な課題を探ってきますが、その本質的な課題に行き着くまでわからない部分を言語化して自分なりの解を出していけるのかがとても重要です。
これは起業家にかかわらず、新入社員でもアルアルですよね。
教えられた/任された仕事について、自分のわからないことを明確にして、聞くべきことを聞く。仕事に慣れていない人は、指導受けたけどそもそも自分のわからないことがわからない、みたいな状況になりがちですが、一定の社会人として仕事が出来るようになってくるのは、わからないことを理解するフレームワークや考え方が自分の思考の中にビルドインされてくるから。
また、言語化のスピードの早い人は、他者と物事を進めていく上でのコミュニケーションや言いにくいことが出てきても、適切なニュアンスの引き出しを沢山持っているため、他者と協働も円滑になり、Get things doneがスムーズになります。

そして、さらに大事なのは言葉の適切さ
物事の解像度を上げていく中で言語化をしていきますが、ここでも適切に言葉を使う癖を持つ人は成長スピードも速い。
日本語はハイコンテキストな言語ですし、主語述語が抜けがちなので、事業検証などを言語化していても、振り返りのときに、自分の言葉の曖昧さから、そのときに何を考えたのか瞬時に判断できなくなることもあります。
特に、一人で起業する場合は、物事を進める基準が自分の口語ベースになりふんわりしがちなので意識すると良いと思います。
一人だと誰かに業務を伝えるわけでもないので、適切な言語化をサボリがちです。頭の中で意思決定すればドキュメンテーションに割く時間もとらなくて良い。一方で、人間の頭はそこまで賢くないので、複雑に絡み合った課題を解決する事業作りにおいて適切な言葉を使って記録していかないと事業検証もうまくいかないことが多いです。
私は投資先と定例MTGを行いますが、成長性の高い起業家はこの定例MTGの資料もある程度ちゃんとつくっている傾向が見えます。
(語弊があるかもしれませんが、株主との定例MTGのために資料をたくさんつくれって言ってるわけではありません。あくまでもどこまで頭の中を文字にして可視化しているのかが、定例の資料みるとわかるという意味です。)

■数値化

数値化能力は起業家にとってとても重要。
全てにおいて物事を数字で考える習慣をつけると、事業の具体性が格段にあがります。
たとえば、「創りたい未来は日本人がこのアプリを使って生活を楽になる世界です」と定性的に言われるより、「日本人1億2000万人のうち6割が、副業を通じて毎月30万稼げて生活が楽になる世界です」のほうが具体的に世界観が伝わりますし、その実現のために何をすれば良いのかも明確になります。
何事も数字で考える。そしてこれも完全にクセです。
数字化そのものは、世の中に沢山良い本が出回ってるのでそちらを参考にしていただきたいのですが、たまに起業家の方に「数字が苦手で起業する自信がない、売上とか時価総額とかよくわからない」という相談をもらいます。当然人には得手不得手があるので、CFOなど入れて人に任せることも大事ですが、数字で考える」というクセを付けることはやってれば絶対に慣れること、変われることです。
実際、弊社の投資先の中でも数字周り得意じゃないなと思う起業家もいますが、極力数字で考える、収益やKPIをしっかり出してトラックするということをやり続けて1年で随分その思考がついたなと感じることもあります。
数字で考える、これは完全に慣れなので、苦手であればあるほど接触回数を増やして考える習慣をつけることをオススメします。

■意思決定

0→1フェーズの起業家にとって意思決定は意外と難しい。
この事業アイディアを進めるべきかやめるべきか、どこまで達成したら事業に価値がありそうか、ユーザーは増えるが利益になりにくいビジネスモデルを続けるべきか、など、不確実性とリスクを伴い、かつ正解のない世界。
そんな中、「惜しいなぁ」と思う起業家は、意思決定に対して自分なりのエビデンスがふんわりしてる中で、感覚的にこれはイケるんじゃないか、これは難しいじゃないかと判断し、選択肢の中で堂々巡りをしてしまっている方です。
例えば、このサービスはtoCだと思ったけど、toBのほうが収益になりやすいからtoBにいきます!→toBは営業が難しそうだからやっぱりtoCにいきます!などを繰り返したり。
このような正解がない意思決定過程中で、最良の意思決定をしていくため重要なことは、自分の中で一つ一つの学びを言語化し洞察を深め、その意思決定に対して後から振り返っても同じ選択肢をとれる自信をもって前に進めるられるかという点だと思います。
そして意思決定した後は、その結果を自分たちにとって「正解にしていく」ことを考えるだけ。
また、先ほどエビデンスとお話ししましたがロジックだけじゃなく感覚もとても大事です。意思決定において一番難しいのは、大体選択肢A50.5%、B49.5%の確率みたいな、どっちも合理性があるような局面です。
そのすごく悩ましい意思決定において、起業家・CEOの仕事はしっかり決めきれること、そしてその100%自信が持てない意思決定にも先導してやりきること。
合理性のあるものならCEOじゃなくても判断できるので、どっちも微妙って意思決定の場数を多数踏んで自分の糧にしていけるか、これが非常に重要なんじゃないかなと思っています。

最後に

と、まぁ上記で言語化・数値化・意思決定についてツラツラと書き殴ってみましたが、やっぱり最後は圧倒的な行動量と執念だろうなと思っています。
言語化・数値化・意思決定をして、それを大量に執念深くやりまくる。
"結局ここまできて根性論かよ!"って思われるかもしれませんが(笑)、量は質に転化するので、地道に見える一歩一歩ですが振り返ったときに、とても大きな成長を感じられると思います。

そして、こんな偉そうなことを書いていますが、正直私も自分自身そんなに得意じゃないなと感じています。 だからこそやり続ける、意識し続ける、その自戒を込めてまとめてみましたのでぜひ参考にしていただけますと嬉しいです。

※あわせて読みたい


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?