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2023年の最後に衝撃の規制草案が発表され株価大暴落の中国ゲーム業界。ログインボーナスもらえなければ原神続けられない

中国では年末にとんでもないニュースが出て騒然としております。それはゲームに関する規制の件発表されてすぐはパニックで、「中国ゲーム業界の半分が消滅するんじゃないか」とも煽られるほどの大ニュースでした。

中国のゲーム業界には激震ですが、日本の皆様にも影響があるかもしれません。原神や崩壊、荒野行動など日本にもたくさんのプレイヤーがいて、セルラン常連のゲームは中国企業の出してるもの。みなさんのスマホゲーム生活やビジネスにも関係があるかもしれません。


■中国のゲーム業界は世界中のゲーマーに影響を与える存在

ボクも大好きでしょっちゅうプレイしている原神。ご存知の通り、原神は中国発の”モバゲー”として世界中で人気です(もちろんPCなどでもマルチにプレイできる)。また、中国のモバゲー企業の世界展開の代表作として、ゲーム業界においても高く評価されてます。

原神のように、中国ゲームは世界中でヒットを量産しているわけですが、やはり基盤となっているのは国内市場。特にここ数年、中国のゲームビジネスはあらゆる方面で驚異的な発展を遂げてきました。過去に何回も中国のゲームとゲーム産業についてnoteで紹介してきたかと思います。

最新のデータによると、2023年、いわゆる中国が自主開発したゲームの国内市場における実績収入は2563.75億元(前年比13.95%)で6兆円を超えました。ちなみに海外における実績収入は163.66億ドルで約2.3兆円となっています。

世界進出して相当な金額を海外で稼いでいるのですが、それでも国内の収益の半分に満たないというほど、中国国内市場の魅力と競争の激しさがわかります。

■今回の規制発表による衝撃は株価30%暴落でも足りないかも

そんな中国ゲーム業界に衝撃が起きた日。12月22日、中国のモバゲー監督管理部門となる国家新聞出版署が「インターネットゲーム管理弁法(公開草案)」を公開しました。この発表の内容には、ネット民たちによる尋常でないバズりはもちろん、株市場にも大きな影響で、中国の代表的な上場ゲーム会社の株価が暴落しました。

第五人格や荒野行動でおなじみのネットイースは一時30%と過去最大の下落率

香港株市場で上場しているテンセントの株価が13%減、ネットイースが25%減となり、単純計算だとこの2社だけ5000億元近くが消滅。他にもゲーム関連の事業のある会社が軒並み影響を受けました。

公開草案全文が11259文字で、1文字あたり5000万元弱の損失だと揶揄する人もいました

この規制の内容の詳細や事実ベースによる反応、政府による狙いなどは日本のメディアでもたくさん報道されてますのでそちらを見てください。

ボクのnoteでは、日本ではあまり報道されていなかったことや分析についてを中心に書きます。今回の規制に関して中国のネット民がさまざまな角度から全く異なる解読をしているのは面白かったです。

■中国みなさんの反応と今後の展開についての予想

・今回の規制をポジティブにとらえる意見

まずは政策を作った国家新聞出版署の声。企業への負の影響や株価が暴落することはわかりきっていたのになぜこんな規制草案を発表したのか。

政策を作った側としては「産業のより健康的な発展と繁栄が目的」との見解。関係者への取材では「今はまだ公開草案なのでより多くの声と関心が集まることが大事。後に各方面の意見をまとめて修正を行う」と回答されています。

みんなが「公開草案といっても、どうせほぼ決まりじゃないですか」と考えているのとは異なり、例えば今年の4月に発表された「生成式人工知能サービス管理弁法(公開草案)」は7月に実際に公開された弁法とはかなり異なりました。関係者は「最近の立法はより規範性が高い(意見を踏まえて修正は行われる)」と主張しています。

また、株が大暴落したことには証券会社の分析研究がたくさんあがっています。ネガティブなものだけではなく、

・当弁法の目的は、2019年に廃止されたネットゲーム管理臨時弁法の空白を埋めるためのものであり、業界にとっては規範がないよりある方がいい
・ゲーム業界の現状や監督状況を考慮すると、優れたものを促進し、劣ったものを制限し、ゲーム業界の高品質な発展を保証したほうが良い。有害なコンテンツを撲滅し、同時に対応する報奨を設定し、優れたゲームとゲーム企業が発展するのをサポートするという趣旨です。これが、業界の長期的な健全な発展に寄与する。

といった高い評価で、長期的には株価にもプラスであるとの意見もあります。

・今回の規制をネガティブにとらえる意見

ただ、市場は暴落という形で反応しました。市場関係者から見て、みんな明らかに期待できなくなったと思ったのか、やばいぞと煽る業界関係者の声がたくさんあります。

規制の内容ごとに、みんなが着目しているポイントをまとめるとだいたい下記となります(ちょっと長いですが)。

・ネットゲームにおける毎日のログインボーナス、初回のチャージボーナス、連続のチャージボーナスなど、誘導的な報酬を設定することが禁じられる。
>>定量的なデータではないが、感覚的には課金メインの収益モデルのゲームだけでなく、広告モデルのゲームだとしても、ほぼ全てのゲームが対象になると言っても過言ではない。この禁止令により、ゲームの翌日リテンションや7日間リテンションの数字がものすごく悪くなると予想される。また、一般的には6元に設定され手を出しやすい初回チャージや、課金の増加に役立つ連続チャージのおまけなども禁止されることは収益に大きなダメージと思われる。
その上、今まで未成年のみが対象だった消費金額制限が成人にも及ぶようになって、少数のVIP課金者(廃課金をさらにバージョンアップしたような方々)がメイン収入となるゲームは相当厳しいものになるだろう。

・デモテストのユーザー規模が2万を超えちゃいけない。テストユーザーのデータを削除すべき。
>>これは中国独自のルールかもしれません。「版号」という、許可制でリリース資格を管理されている中国のネットゲーム業界では、許可がまだ降りてない段階でも、お金をとらなければ内部テストや公開テストという目的でのサービス提供が可能です。実はこれが本リリースへの助走として活用されていて、テストデータを消さなければそのユーザーはそのまま残されていて、課金への誘導もしやすくなっていました。しかし今回の禁止令があれば、今後はできなくなり大きな打撃に。

・ゲーム内のバーチャルコインやものを売買するサービスを提供する場合、許可のないゲームへのサービス提供が禁止、さらに取引が実名で行われるデジタル人民元にすべき。同一企業は、ゲーム内のチャージサービスとバーチャル資産の売買サービスを同時に提供してはならない。
>>これが今回の規制の中で最も致命的だと考えられています。それは、課金に関する処理だけではない。例えば装備やアカウントを転売するとき、安心して取引ができるよう、ネットイースには「藏宝阁」というサービスがあります。日本でのメルカリのような感じで、バーチャル資産でもお互い安心して取引ができるようプラットフォームが仲介に入っているのです。しかし今回の草案により先行きが不透明に。最大手のネットイースはこのサービスを存続できるかが危うく一番の暴落につながりました。また、実名性のデジタル人民元による取引だと、今まではグレーゾーンか確実にブラックとなっていたマネーロンダリングへの活用ができなくなる。

・ネットゲームの発行・運営事業者は、ランダム抽選サービスを提供する際に、適切な回数や確率を設定する必要がある。過剰に消費する誘導が禁じられ、ランダムではなく、直接購入できる付加サービスの提供が必要となる
>>ユーザーにとっては透明性があがってハッピーかもしれませんが、運営側からするとガチャの罠が仕掛けづらくなります。ガチャは、どうしても欲しい、当たったら高く売れる、の欲望を刺激するもの。そのレア商品をガチャで当たるだけでなく、直接購入することが可能となると、運営側の定価能力が高く問われるだろう。激レアというのに直接買っても200元だと、ガチャではなく、直接購入すればいい。激レアの直売価格が2万元だと、宝くじ感(当たりにくさ)が強すぎであまりガチャをやるモチベーションが下がる。つまり実質ガチャがオワコンになる。

・物語がなく、プレイ方法が簡単、チャージ機能のないミニプログラムゲームの管理規程は草案の管理以外に別途管理規定がかけられる。
>>開発費用も開発期間も少なく、インストールすらいらず広告が収入源となるゲームですね。莫大な市場において、正直ちょっと意味わからないゲームも突如スーパーヒットしてバカ儲かる事例がよくあります。

最後のはWechatのミニプログラムを使っていない日本の皆さんにはイメージできないかもしれません。こちらを見ると理解できるかなと思います↓

今回の草案、規制の内容がかなり細かく出されているのが特徴で、これらを見て想像力を働かせると、政府が何を規制したいのかについてなんとなくわかりますね。

ただ、急に幅広く厳しい規定がくると、ゲーム業界も「双減」で崩壊した課外塾業界のように、業界全体が大きく揺れて大量の失業が発生するのではないかとの心配も多かったです。

■幅広い意見今回の規制や過剰な管理に対しての批判の声

今回の規制に対しては批判的な意見が多いとはいえ、たくさん議論されています。中には予想もしなかったものも多数。

この規制をいいねと思うユーザーの構成もちょっと面白かったです。SNSでの書き込みを見る限り、「やっと国の規制で自分がしようと思ってもできなかった課金制限やゲーム時間の制限ができる」や「よかった、中毒系クソゲー死んでしまえ」などを書き込んでいたユーザーも少なくないです。

また、この管理策で子供がゲームをする時間を減らすことができると期待する親もいます。でも甘いですよね。きちんと子供の教育ができなくて、ゲームができなくても、ネット小説を見ればいいなど時間潰しはいくらでもあるでしょう。

一方、多数派は批判的な人たち。

この管理弁法というのは、ゲームユーザーと運営会社の間に何かトラブルがあるときに従う法律ではなく、完全に行政規制となります。政府がゲーム会社の戦略やマーケティングにまで関与することは流石に過剰だという指摘がありました。特にユーザーを庇う姿勢がわかりやすく、「経済の発展のためではなく、数千万のネット民のための行政監督はある種のポピュリズムだ」と強い意見も多数。

また、(教育の)ダブル削減にゲーム管理、次々と業界に大きく影響を与える「過剰管理」政策がリリースされ大打撃を受けている業界関係者をみて、次は自分の業界の番になるんではないかと不安な声も。

いずれにせよ、まずは本案がどういったものになるかを見てからとなりますが、ボクの周りの業界関係の友人たちも気を揉んで見守っているほどの出来事。今後の動きをまたnoteで書きたいと思います。ぜひフォローしてお待ちください!

(参考資料)


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