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日本の兆落—2位じゃダメだった

日本は、兆落をとめられるだろうか。かつて半導体事業は世界一だったが、転がり落ちた。先端半導体の国産化をめざして、国が中心になって国内大企業8社が出資したapidus社を設立した。世界のなかの日本の状況を勘案して戦略をつくり国の予算を投入して、日本半導体を挽回しようとしているが、どうなるだろうか? 造船が、家電が、モーターが、太陽光・太陽熱エネルギーが、携帯電話が世界一から転落したが、その後が、どうなったのか、みんな知っている

1.なぜ世界一から転げ落ちていくのか

この先、日本はどうなっていくのか?未来が見えない。政治家も官僚も企業経営者も、これから先が見えていない。未来だけではない、現在も見えていない。いや、見えているが、その未来の姿を見ないよう、見えていないふりをしている

みんな、自信が持てなくなっている。かつて国の官僚についていけば、日本は成長できる、日本は強くなれる、正しく導いてもらえると、戦後、高度経済成長期は、そう信じていた。そして、ジャパン アズ NO1となって、バブルとなった。それは長続きせず、バブルは崩壊して、日本は転がりおちていった。日本はこれからどうなるのか、見えない未来に不安になり、さまざまな政策、動きに疑心暗鬼に駆られる

なぜそうなったのか?

日本の航空機産業を育成する官民肝煎りの日の丸プロジェクトとして、国が支援していた国産ジェット旅客機スペースジェット(旧MRJ)の事業から、三菱重工業が、撤退した

「頑張ったけど、残念だった」で終わっていいのだろうか。国の戦略として、お金も投入されている。当然、企業は総括しているだろうが、国として総括しているのだろうか?なぜそうなったのか、なぜうまくいくことができなかったのか?しかし日本は、そう総括しない。やってもやりっぱなし。なぜか。総括すると、前任者、先輩たちの活動を否定することになる。それを恐れる。それをしたら、自分に跳ね返ってくる。そうなることを避けたい。だから、総括しない。総括してもしょうがない、うまくいかなかったのは、しゃーないと考える
              
このような国策プロジェクトを、続々とやっているのではないか。クールジャパンとか、エネルギーとか、環境とか、地方創生とか、健康プロジェクトとかの失敗が、死屍累々と積み上がっている

2 世界一になる理由は、なにがあるんでしょうか?

日本にとってエポックメーキングなのは、「2位じゃダメなんですか?」が飛び出したこと。2009年11月、民主党政権での事業仕分けで、次世代スーパーコンピューター開発が俎上に上がった

「世界一を取ることで夢を与えるのは、プロジェクトの目的のひとつ」と文部科学省の担当者が説明したとき、仕分け人である蓮舫参院議員が、こういった

「世界一になる理由は、なにがあるんでしょうか?」
「2位じゃダメなんでしょうか?」

この時に決定したのではないか、日本のその後が。仕分け人の「2位じゃダメなんでしょうか?」の問いに対する答えは

1位でないとダメなんです

1位には、いろんな1位が集まってくる。京への開発予算が見直された。スーパーコンピューターの予算を減らして、開発が遅れた。日本の世界一が世界に抜かれた。他の世界一も、そう。中国や他の国がレベルを上げてきて、日本は転げ落ちた。1位であっても、本当は追い抜かれないよう、頑張らないといけないのに

1位じゃなくていいだろう
うちは「精度」が勝負だから
売り上げは2位でもいいよ

それではダメだったのだ。1位になったうえで、横展開して、もうひとつの1位をつくるべきだった。

1位にはいろんな1位がついてくる。1位のメーカーには、技術者も素材もパーツも1位がついてくる。 2位でいいという会社に、人に、一流は集まって来ない。

そういう観念が日本を衰退させた

地球の重力圏外に小惑星に着陸して、試料を採取して再び地球へ戻ることができたのは、現在でも世界で日本の「はやぶさ」初号機と「はやぶさ2」だけである。この世界初の快挙に日本人は感動して、やはり日本人技術はすごいと盛り上がった。それをやってのけ、日本はすごいっていう話にタダ乗りするが、JAXAの予算は増えてない。世界中で誰もできないことをやってのけたのだから、予算を増やしてダントツ1位にしようという動きに、日本はならなかった

それよりも、農業にかけている国の予算が多い。農業にかけているお金の方が宇宙開発にかけているお金よりも大きい。1位でない1位をめざさない事業・分野にお金をかけても、駄目なのだ。1位にこそ、1位をめざす事業・分野にお金をかけないといけないのではないか

3 野球とサッカーにみる選手起用の違い

これだと、日本は復活しない。メリハリが大切である。あれが世界で話題になっているから、世界はこれが重要だと言っているから、日本でもやっておかないといけないと、なんでもかんでも取り組もうとする。とりあえずやってみるが、最終ゴールにたどりつかない、

頑張ったけど、目標が達成しなかった。みんな、一所懸命にやったんだから、仕方ない。結果は結果だと言って

やめてしまう

人はそれでいいが、国や会社のプロジェクトは、それではいけない。今回のメンバーで、「エベレスト」にたどりつけなかったのは、しょうがない。だったら次のチームで、「エベレスト」登頂に挑戦させ、成功すればいい

しかし現実はそうではない。社内でリーダー・メンバーを選抜しチームを編成してエベレストに臨んだが、失敗した。このチームじゃ駄目だったとか言って、終わってしまう。それでは駄目なのだ

参考になるアナロジーがある。 3月8日から開催するワールド・ベースボール・クラシック(WBC)と、昨年11月~12月に開催されたサッカーのワールドカップの日本代表が少しちがう

サッカーは、選手は調子が良くなかったら、すぐ交代させられる。どれだけ成績をあげている選手でも、名前を通っている人でも、 そのときの状況で、どんどん交代させられる。ワールドカップカタール カタール大会での森保ジャパンは、臨機応変に選手を交代させた。そして、成績を残した

野球も、最近は変わってきたが、昔は、長嶋なら長嶋、王ならば王、松井なら松井と、イチローならイチローと、どれだけ調子が悪くても、使った。今も、その傾向が強い。大谷翔平・ダルビッシュ有をはじめ大リーガーをずらりとブランドで揃えて、大会に臨む。日本人が野球を好きな理由は、こういうところにもある

太平洋戦争のインパール作戦がそう。こいつを男にしたれと、結果として悲惨な結果となった。そのリーダーや参謀でうまくいかなくても、交代しようとしなかった。サッカーは、結果がでなければ、スタメンに入れない、スタメンに出してもすぐに交代させさられるこちがある。それでいい。選抜した人たちが役割・目標が達成できなかったら、別の人たちが交代する

しかし選抜された人たちができないと、それで終わりにしてしまうというところが、日本にはある。MRJがダメだったら、別のところで、国産ジェットをめざす。しかし日本はそうしない

日本は驚くほど属人的

属人的でなくて、どんどんメンバーを交代したらいい。ご苦労さまでした、ここまでやってできなければ、仕方がない。別のメンバーに替えたチームでチャレンジするからというと

わたしは外された

と拗ねる、後任者を妬む。プロジェクトは、あなたの属人的なプロジェクトではない。その人でだめだったら、リーダーを、メンバーを入れ替えたらいい。日本は、なかなか、替えない、替えようとしない。

それが日本企業の古来からの悪い文化。適宜状況を見て、臨機応変しないといいけない。臨機応変の臨機は事態にのぞむこと、応変は変化に応じること状況に応じた行動をとること。臨機応変には、大事なことがある、事を成すには主語も大事

     臨機応変には、人も含まれる


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