ニュースレター配信サービス「サブスタック」と静かに広がるパッション・エコノミー
note、オンラインサロン、ニュースレター、ポッドキャスト...など、情熱を持った個人によるニッチな分野での有料の情報発信、クリエーターの活動が持続可能になりつつある、そんな経済のあり方を「パッション・エコノミー」という言葉で表した考えが昨年頃から一部で話題になりつつあるようです。
昨年秋にアメリカの著名VCのアンドリーセン・ホロウィッツのパートナーであるLi Jin氏が「パッション・エコノミーと仕事の未来」についての記事を執筆し、分かりやすく紹介されています。
*翻訳された記事はこちらでご覧いただけます(FoundX Review より)
アンドリーセン・ホロウィッツ社が提供しているポッドキャスト「a16z Podcast」を昨晩偶然聴く機会があり、改めて「パッション・エコノミー」の可能性を感じることが出来ました。ゲストには昨年アンドリーセン・ホロウィッツ社が出資したニュースレター配信サービスのサブスタック社の共同創業者&CEOのクリス・ベスト(Chris Best)氏、サブスタックを利用して「The Browser」というニュースレターを配信しているロバート・コトレル(Robert Cottrel)氏、そしてサブスタックに出資をしているYコンビネーターのパートナーのアンドリュー・チェン(Andrew Chen)氏でした。
中でも興味深かったのはThe Browserを配信しているロバート・コトレル(Robert Cottrel)氏でした。毎日1,000もの記事に目を通し(見出しだけみるものも含め)、その中から読む価値が本当にある、と思えるものだけを5本選び、その要約を沿えて配信するニュースレターを配信しています。かつてFinancial TimesやThe Economistの記者・編集者をしていた経験があるからできる技かもしれませんが、情熱を持って日々継続して習慣を続け、その対価として月4ドル、年間48ドルを得る、という働き方については、フリーランスのクリエーター、「人生100年時代」を考える個人などにとっては、魅力的な「稼ぎ方」として映るかもしれません。いずれ国内でももっともっと広がっていくのでは、と感じます。そもそも毎日1,000もの記事をどのようにして目を通しているのか、という疑問については以下の記事で紹介されています(RSSリーダーサービスの「Feedly」を利用しているとのことです)
ポッドキャストの中ではニュースレターというメディアに対する利点について、従来の広告に依存するメディアとの比較が紹介されています。広告に依存するメディアを運営する場合、どうしてもページビューを意識しなければならない悩ましさがある一方で、マスを狙わないニッチ型の個人メディアであれば読者からの反響をリアルタイムで得つつ、自分が本当に大切と思い、共有する価値があると思えるものだけを発信する利点が紹介されています。
*サブスタックはニュースレターの無料配信も可能で、有料の場合には収益のから10%(+クレジットカード手数料〜通常約2.9%)が手数料として差し引かれるしくみです。
同じくa16zポッドキャストの別のエピソードでは2008年に『1,000 True Fans (千人の忠実なファン)』(翻訳記事)というエッセイを公開し、今でもその先見性が語り継がれているケビン・ケリー氏が登場し、今日的な視点で「アテンション・エコノミー」の現状、打破するヒントが紹介されています。
ストラテチェリーというテック系ニュースレターを先駆的に始め、多くの専門家が参加する読者コミュニティを運営しているベン・トンプソン氏はこのようなパッション・エコノミー、有料ニュースレターの可能性について「この市場の評価についての最も大きな失敗は、インターネットがいかに大きいかについて、そしてどれだけの「ニッチ」が存在するかということについて、過小評価していることだ」とツイートしています。
このテーマについてはニュースレターのみならず、ポッドキャスト、コミュニティ運営、サブスクリプション、Direct to Consumer (D2C)など、いろいろな切り口から今後ますます広がっていくのでは、そして今後継続的に定点観測しながら自分でも試してみようという気にさせてくれます。
*[参考]ストラテチェリーについて