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国内大企業をジョブ型にしていくハードルの高さを感じた話

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

国内大企業が相次いで日本型雇用(メンバーシップ型)からジョブ型雇用への移行を進めています。代表的な例で言えば、日立製作所やKDDI、富士通などの事例が挙げられます。

岸田首相も9月23日行われたニューヨーク証券取引所での講演において、これまでの年功序列的な職能給を、ジョブ型の職務給中心の雇用体系へと移行させる指針を2023年春までに策定することを明言しました。この件については、以前に以下の記事を書きましたのでぜひご一読ください。

すでに一部の業界や職種では導入されているジョブ型雇用ですが、特に大企業においてはまだまだ日本型雇用(いわゆるメンバーシップ型)が標準的です。戦後長らく運用されてきたものですから、その変革が容易ではないことは想像に難くありません。

日経COMEMO

ジョブ型への移行は「構造的な賃上げ」を目指す政策の一部となっているようです。しかし、そもそも賃金は企業に裁量があるわけですし、その設計についても政府が干渉することはできません。日本型雇用は官民が一体となって制度設計(役割分担)をして運用されているのも特徴で、それは社会福祉や退職金の税制優遇など税制度にまで及びます。

岸田文雄首相は10月初めの所信表明演説で、職務遂行能力に応じて定められ、勤続年数が長くなるほど増える職能給から、職務内容によって決まる職務給への移行を促すと述べた。23年6月までにまとめる労働移動の円滑化に向けた指針には、「日本に合った職務給」など、賃金のあり方についても盛り込む方向という。
(筆者略)
雇用の流動化を進めるには、定年は「60歳を下回ることができない」としている高年齢者雇用安定法の規定の見直しや、同じ企業に長く勤めることで退職一時金をもらう際に税制優遇を受けられる仕組みの改革なども求められる。踏み込んだ制度改革に取り組まなければ労働移動を活発にするのは難しい。それを政府は十分に認識しているだろうか。

日経電子版

根本的に構造が違う雇用制度を変革するのは容易ではありません。メンバーシップ型は「企業への帰属」が前提となっています。総合職という名が示すように、帰属している以上どのような職務も社命であればやってください、ということです。転勤命令もこの範疇にあり、よって転勤を断ることは解雇事由になりえます。一言でいえば「人に職をつける」制度です。

ジョブ型は完全に逆で「職に人をつける」制度です。こういう戦略だから10人のチームが必要で、マネージャーは2人。じゃ、各ポジションの最適な人を人材市場から探してアサインしよう、というやり方になります。だからこそジョブディスクリプション(職務定義書)が最初から明確になっている必要があるのです。また、もし戦略変更などでそのポジション自体が消滅したら、その人にも別のポジションに移ってもらいます。移動先は社内もしくは社外です。この仕組みが、人材市場の流動性を担保しているとも言えます。

今日は以下のニュースを見て「真の意味でのジョブ型は当分こないのかも」と思いました。実際の制度設計を知っているわけではないので誤解している可能性もありますが、少なくとも記者の方がジョブ型の実情を理解されているか不安になります。

富士通は若手社員を期間限定で管理職級に登用する制度を導入した。任期を基本1年として公募し、このほど新卒2年目の社員を課長級に抜擢(ばってき)した。従来は管理職に昇進した人材を一般社員に戻しにくいため若手の登用が難しかったが、期間限定にすることで管理職級を経験する機会を増やす。事業転換に若手の柔軟な発想を活用するため、年功序列を見直す人事制度が広がってきた。

日経電子版

ジョブ型においては日本企業で意味するところの管理職に当てはまる職務はほぼありません。人の管理をするピープルマネージャーと、専門職(インディビジュアルコントリビューター)ではキャリアトラックが完全に別です。記事を読むと「デザインアドボケート」となっているので、専門職側の職務だと想像できます。これを「課長級」とするのは誤解を招きそうです。

どう説明するのがわかりやすいか悩んだ様子が行間から読み取れなくはないですが、前述の通り根本的な思想の違いがありますので、ジョブ型への移行は既存企業ほど難しいだろうなと思います。スタートアップなどの新興企業は最初から海外スタートアップのやり方を学んだ設計にしていることが多いので、このあたりの課題は少ないようですが。

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タイトル画像提供:sun_po / PIXTA(ピクスタ)

#日経COMEMO #NIKKEI

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