富裕層=欧米豪からの旅行者、とは言い切れない事実データ~インバウンド市場をファクトフルネスに考える~
インバウンド市場でWAmazing起業して6年と3か月半が過ぎた。
(うち2年半以上がコロナ禍だったけれども)
この間に多くの人に言われて、不思議だった言葉がある。
それは…
「WAmazingさんはアジアターゲットなんだ。じゃあ富裕層は対象外ですね?」
「WAmazingさんは、欧米豪の富裕層はターゲットではないのでしょうか?」などである。
もちろん言っている人に悪気は一切ないので、言下に否定するようなことはしない。だけれどデータ(事実)は、むしろ逆のことを私に伝えてくるので、毎回、こう言われると内心、(。´・ω・)ん? という気持ちにはなった。
今回のnoteでは、それをデータ(事実)に基づいて整理しておきたい。
旅行中消費ではトップ3は欧米豪、しかし「1泊あたり」の旅行中消費トップ3はアジアだ
観光庁が2019年に出している「訪日外国人の消費動向」というレポートから見てみよう。
https://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/content/001345781.pdf
2020年初頭から世界はコロナ禍に見舞われ日本も例外ではないため、インバウンド市場に関するデータで適切に分析できるのは2019年のものが最も新しい。私も今は主に2019年のものを見ている。(2020年以降のものは、コロナ禍により数字があばれているというか…まぁ一言でいえば異常値だ)
一般客の旅行支出(画像の赤枠)を国籍・地域別にみると、フランス(21.1 万円)、オーストラリア(20.3 万円)、英国(19.7 万円)の順で高い。また、韓国(7.6 万円)は他の国籍・地域に比べて旅行支出が低い。これを見ると、「ほら!やっぱり富裕層は欧米豪でしょ!」となるかもしれない。
しかし、これには宿泊日数が大きく影響している。当たり前だが、日本での滞在日数が長ければ長いほど、消費額は大きくなる。(宿泊費、交通費、飲食費などすべての消費が滞在日数分かかる)
しかし滞在日数というのは、可処分所得だけが影響するわけではない。休みを取りやすいかどうかといった、その国の文化・風潮や、その人の仕事などにも大きく影響される。
韓国は消費額がずば抜けて少ないが、それは「日本に近いから、何度も来られる」という距離的なものもあるし、韓国の熾烈な競争社会において、なかなか仕事を長期に休めないという事情もあると思う。
(なお日本人が韓国行く場合も2泊3日が多いから、お互い様です…)
1泊あたりの旅行中支出では1位中国、2位香港、3位シンガポール
同じデータであるが、今度は1泊あたりの旅行中支出を見てみる。以下の画像(前出と同じデータ)の青枠である。
まったく同じデータだが1泊あたりにするとトップ3は総入れ替えだ。
1位は中国の24,912円、2位は香港の22,739円、3位はシンガポールの21,866円になる。
これを説明すると「中国人は爆買いするからでしょう?」と言われる。爆買いするのは富裕層ではないのだろうか。
日本人の若い女性たちがバブル期に大挙して海外を訪れ、例えばパリのシャンゼリゼ通りでブランドバッグを買い占めたことを揶揄された苦い経験から「お金の使い道に貴賤あり」とでも言いたい空気があるのだろうか…?
もちろん、中国、香港、シンガポールから来た人たちは買い物もたくさんしている。しかし、宿泊費も高いのだ。
1泊あたりの宿泊費トップ15%は、約66%が東アジアからの旅行者
観光庁が、2019年の訪日外国人消費動向調査【トピックス分析】として、訪日外国人(観光・レジャー目的)の宿泊費上位15%の旅行者に関する詳細分析を発表した。https://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/content/001486217.pdf
1人1泊当たり宿泊費上位15%を国籍・地域別に見ると、最も構成比が高いのが「中国」で全体の27.4%、次いで「韓国」が約17.4%、「欧米豪」が約16.3%である。
わざわざ切り出してしまったが、中国+韓国+香港+台湾を合計すると、宿泊費用上位15%のうち、東アジア4地域で、65.9%を占めている。
数が狙えるのは圧倒的にアジアである
旅行は物理的に人間が移動しなくてはいけないリアル消費なので、「距離」が非常に重要なファクターとなる。国内旅行で言えば、関東の人が温泉旅行に行こうと思ったら、熱海や箱根、草津などに行く。関西の人は城崎や有馬にいく。逆は、殆どない。城崎温泉や有馬温泉を1度も訪れたことのない首都圏在住者は多いと思う。(というか、ほとんど100%じゃないかな)
なので、訪日外国人旅行者(インバウンド)の出身国・地域を見ると、圧倒的にアジア。東アジア(中国、韓国、台湾、香港)で7割で、東南アジアを加えて8割以上である。
上記を見ると、2019年の訪日第1位は中国であり、959万人である。中国の人口は約14億人であるから、国民の上位0.7%程度の方が訪日していることになる。上位1%以下なので、そりゃー富裕層でしょう…。
中国という国はとても大きい
私たちは、どうしても自分たちの住んでいる環境で世界を判断してしまう。だから、人口1億2000万人の国に住んでいると、14億人がいる中国という国をリアルに想像するのは難しい。
コロナ禍前、中国出張をしていて感じたのは、「だいたい日本の感覚の10倍を考えれば、中国になるんだな」ということである。
起業して間もなく、つまり、2016年だが、星野リゾートの星野社長に誘っていただき、中国の旅行関連カンファレンスに参加させていただいたことがある。
中国の杭州で開かれたそのカンファレンスで、星野社長の登壇は「スモールラグジュアリーホテル」の先駆者としての登壇だった。このテーマだと聴衆は100名から150名ぐらいかな、と私は想像していた。
…しかし会場には1500名程度の参加者がいた。人いきれでぐったりしていた私たちに主催者は「懇親会はこじんまりと10人ぐらいでやりますので」と言ってくれた。
夜、懇親会に行くと、そこには100名以上の人たちがいた。
どーなんってんねん、この国…。w
つねに、予想の10倍で、予想を裏切ってくる国なのである。それが人口14億人のパワーだ。
中国は14億人の平均年齢が30代後半だ。50歳前後が平均年齢の日本と比べるとビジネスシーンで出会う人々は、たいてい私よりも年下である。人数が多い、かつ、若い人が多いのでパワーが凄まじい。
あまり時間に余裕はなかったが、全く観光しないのも寂しいと西湖の周囲を少し歩いた。驚いたのは平日にも関わらず中国人観光客でごった返していたことだ。2016年時点で、中国は「国内旅行ブーム」に沸いていた。当たり前だが、国内旅行ブームの後に、海外旅行ブームがやってくる。
西湖を楽し気に散策する中国の人々を見ながら(この人たちがやがて、より経済力をつけて日本にやってくるのか…)と思った覚えがある。
高付加価値化がマストな日本。アジアにも目を向けよう!
2022年10月11日から、個人旅行客解禁、ビザ免除となり、日本にも2年半以上ぶりにインバウンド旅行者が戻ってきつつある。
そして、ここからの日本は「高付加価値化がマスト」なのである。
つまりは、インバウンド旅行者の「数も追うが、質(消費額)も追う」というものである。現・岸田内閣は、第二次安倍内閣時に設定された2030年に、インバウンド旅行者6000万人、日本国内消費額15兆円という目標を堅持している。
ここからは人数は2倍弱、1人あたり商品単価は3倍強を目指さなくてはいけない
2019年のインバウンド旅行者1人あたりの日本国内消費単価は15.9万円だった。3188万人の旅行者がきていて、合計すると約4.8兆円の市場である。岸田首相は、2022年10月3日、臨時国会の所信表明演説で「円安を背景に、インバウンド消費5兆円超えを目指す」と話している。
上記の図を見れば一目瞭然だが、2030年に向かって、人数は2倍弱を目指せばいいが、消費単会は3倍強を目指さなくてはならない。
高付加価値化旅行、富裕層ターゲットを考えるときに、欧米豪をターゲットにするのは良いが、アジアを無視するわけにはいかないということも、おわかりいただけるだろう。
「…でも、香港・台湾・韓国はともかく、中国はまだゼロコロナだよね?」という声がすぐに聞こえてきそなので、それに対するコメントも最後に記しておく。
2023年、中国のゼロコロナはどう動くのか?
引き続き、ゼロコロナ政策を維持すると3期目の国家主席に就任した習近平氏は話している。
14億人国民がいて、今までゼロコロナ政策をとってきたので、「集団免疫がない」状態である。そして農村部などでは医療体制がまだ脆弱であるため、感染が拡大してしまうと一定数の死者が出てしまう。(ある試算によると100万人以上というのもある…)
そのため、習近平氏の立場では「ゼロコロナ堅持」は、言わざるを得ないと思う。
…と同時に、都市部住民の不満解消や経済活性化にも努めなくてはならない。14億人のトップってどういう気持ちなんだろう、ものすごく大変なことは間違いない。
上記のニュースは10月20日時点のもので、「隔離期間をホテルで2日間、自宅で5日間の計7日とする案浮上」とある。現在は、「現在は入国後7日間はホテルで隔離、その後は自宅で3日間の計10日」なので、じわじわと短縮されていくのだろう。(コロナ禍中はホテル隔離14日間、1歩でも部屋の外に出ると、リセットされてその日から14日間隔離だった)
また、中国はコロナ禍中、「都市ごと」にロックダウンをしていた。上海のロックダウンは記憶に新しい。つまり、「都市ごと」にロックダウンできるということは、「都市ごと」にロックを開けることもできるのだ。
段階を踏みながら、開国に向かっていく、2023年の中国はそんな年になるのではないかと私は予測している。
真の観光立国に向けて「高付加価値化旅行」「アジアの富裕層旅行」にも取り組むWAmazingは仲間を絶賛大募集中です!
お約束の採用PRです。
コロナ禍中も、新規事業(地域観光DX事業)にて売上・利益とも更新しつづけたWAmazingはメンバーも増え続け、現在、157名(2022年10月1日時点)です。WAmazingのオウンドメディアは9月中旬時点ですでに、コロナ禍前の最高UU数を越えていました。
なので、今、すっごくみんな忙しいんです…。
「日本最大の外貨獲得産業へ、真の観光立国へ」という大きな冒険の旅をご一緒してくれる仲間を大・大・大募集中です!
▼募集職種はこちら