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「自考自行」のための「学問」と「起業」 #やってよかった自己投資

お疲れさまです。uni'que若宮です。

今日は、日経さんから #やってよかった自己投資 というお題が出ておりますので、
自分のキャリアを振り返り「自分でやってみてこれはオススメ!」と思う「自己投資」の話をしたいと思います。


やってよかった自己投資① 「学問」

自らのキャリアにおいて大きな転換点となったのが、建築士の職を辞して大学に入り直したことです。

建築学科が工学部の中にあり、いわゆる理系の中に位置づけられている日本では「強」(壊れないこと)や「用」(使いやすい)の方が(とくに実務では)比較的優先されがちだと感じていたので、「美」や象徴性などの芸術側面から総合芸術として改めて建築を捉え直してみたいと思い「美学藝術学」という学科に編入し、院まで進みました。

(↓に修士論文を公開してます。建築家のドローイングから建築の概念の変容を分析しているのですが、なかなか評判がよいです)


一度社会に出た後、「自己投資」として自分のお金で大学に行くのはとても楽しいのでオススメです。大変お恥ずかしながら、最初の大学ではあまり真面目に大学にいっておらず怠惰な学生生活を過ごしたのですが、自分のお金で行ってみると「え?これ授業料一緒で授業受け放題なの!?」という感じになり、専門である美学芸術学や美術史だけではなく、哲学や心理学、社会学、文化人類学など他学科の授業もたくさんとり、貧乏暇なしでしたが知らないことを学んでいく知の喜びに満ちたとても充実した学生生活でした。


なかでも、強烈に記憶に残っているのが美学演習の最初の回に、恩師である美学者の佐々木健一さんに言われた言葉です。

編入で大学に入った僕は現役の学生よりもだいぶ年上だったので、やる気とデキることをアピールしてやろうとばかり、初回演習の発表担当を自ら名乗り出ました。その時のお題は清水幾太郎著『論文の書き方』。本を丁寧に読んでレジュメをつくり、意気揚々と発表をしました。

けっこう頑張ったので褒めてもらえるかな、と発表後に教授の様子を伺っていると、

「よくお勉強しましたね」

とだけ一言。その反応になんとなく釈然としなかった僕は授業終了後に佐々木さんのところにいって「どうでしたか?」と改めて聞いてみたのですが、

大学は「お勉強」をする場所ではない。学問と勉強はちがう。ただ受け身で学ぶのではなく、そこに自分らしいどんな視点を付け加えるかが学問の意義だ

というようなことを言われました。

僕は大変に恥ずかしくなりました。いい歳になっていながら「勉強」と「学問」の本質的な違いすらわかっていなかった。なにかを学んだ時それを受け取るだけで終わらずに、そこに自分らしい視点を付け加えることがなければ、意味がない。

この言葉をきっかけに「学問」や「研究」へ向かう姿勢を大事にするようになりました。すでに多くの先行研究があり学ぶべきことは膨大である。その集積と厚みの前に、自分がいかにちっぽけに思え、なにも付け足すことができないように思われても、なにかひとつ、必ず自分なりの思考をそこに付け足すこと。

こうしたスタンスはその後の人生にも大きく影響しており、アート思考や新規事業、日経COMEMOやVoicyでの発信にもつながっていると思います。

大学に入り直したことでやっと、自ら自分なりの視点で考えることが身につき、いうならば「自考力」という資産を身につけることができたとても有益な自己投資だったと思っています。

人生100年時代において、大学に通うのは十代だけに限らず就職後にもおすすめです。大事なのは「お勉強」ではなく「学問」を志し「自考」すること。VUCAと言われる時代には自ら考える力はますます重要になってくるでしょう。

また、実用的なスキルや知識が身につく「実学」もよいですが、美学や哲学など答えのない人文学の方が自考力を磨くのにはより向いているかもしれません。何より大事なのは、よき恩師との出会いです。大学の名前で選ぶよりも、著作などを読んで感銘をうけた教授がいる大学を選ぶのをおすすめします。

その後の人生においてずっと役に立つ、生き方そのものを切り開いていく力が身につくはずです。


やってよかった自己投資② 起業

もう一つのやってよかった自己投資は「起業」です。

「自考力」を身につけさせてくれた「学問」と比べると、「起業」では「自行力(=自ら行う力)」を得ることができます。

もちろん会社員であっても自ら行動している人はいます。しかし自身の経験からいうと、企業での仕事ではやはり「誰かのお金」を「誰かに決裁をとって」実行する、というような他由的行動の癖がついてしまう部分もあります。

これに対し、起業家の実行は誰かが決めてくれるわけではありません。(もちろんメンバーで相談したりまかせたりということはありますが最終的には)自ら判断し実行していくしかなく、結果も自分の責任のもとに帰ってきます。自らコトを起こそうとしなければなにも起きませんし、「ハードシングス」と言われるような危機においてもそこから最後まで逃げることはできません。こうした経験が「自行力」を身につけさせてくれます。

自らの責任において行動していく力は、「プロティアンキャリア」とも言われるこれからのキャリアにおいてもますます重要になってくるでしょう。

また、たとえ小さくても「自ら売上を生み出す」という経験をしておくことも大事です。それは「自ら仕事を生み出す」という力だからです。雇用の流動性があがり終身雇用も崩壊しつつあるこれからの時代、「雇われる=仕事を得る」、ということのみならず、自ら「仕事を生み出す」ことができるようになっていると、よりレジリエンスが高いでしょう。

起業というとリスクが高いように思われますが、こうした働き方の選択肢を持っておける方がリスクは低いのではと思います。(それほど大きな投資なく事業を始めることもできますし、複業起業もアリです)

「起業」という自己投資によって「自行力」を磨くことができればその後より自律的なキャリアを形成していけるでしょう。


「自考」と「自行」はこれからの働き方のOS

キャリアのためにスキルや知識を身につけたり、資格をとったりすることも勿論よいことです。ただもう少しいうと、これだけ変化の早い時代には特定のスキルや知識は陳腐化するスピードも上がってきています。これまでに積み重ねたスキルがAIに取って代わられるようなこともあるでしょう。その時AIと協働するように働き方を変えることができるか?が分かれ目になるかもしれません。

もしそうなっても「自ら考え、自ら行動する」ことができれば環境の変化に対応し、都度必要なスキルを新たに身につけ(リスキリング)工夫しながら、仕事を自らつくり実現していくこともできます。

「自考力」「自行力」を身につけ働き方、生き方のOSをアップデートすることは、汎用的で大変有効な自己投資だと思います。もしあなたが今、「自考力」「自行力」がちょっと甘いかも、と思ったらぜひ「学問」と「起業」という自己投資を考えてみてはいかがでしょうか?

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