正社員>非正規社員、正社員=コア人材という思想から抜け出そう。
こんにちは。Funleash志水です。いつもnoteを読んでくださりありがとうございます。
今日は「非正規労働」について書きます。「非正規労働」は社会人大学院で取り組んできたテーマ。今、私の目の前に心血を注いで書き上げた論文があります。
「非正規社員の戦略化が企業を強くするー非正規社員のキャリア形成を支援する人材マネジメントー」というタイトル。論文では、非正規社員の戦略的活用が実現すれば社員全体のエンゲージメントが高まり、企業の競争力が向上するという調査結果、それを可能にする方法や取り組みなどを提言しました。
あれから10年、少し距離を感じていた(他の課題で手一杯で)非正規労働問題に関するこちらの記事を見つけ手が止まりました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD2257I0S2A920C2000000
記事によると、現在の正社員の雇用者数はバブル前と同じ水準。一方、2021年の非正規社員の割合は37%(2021年労働力調査)で、これは論文を書いた2010年の34.4%(2010年同調査)より上昇しているとあります。
正社員の数は減少することなく非正規社員は増えている。非正規労働の問題はは抜本的な解決が見られないことが指摘されています。
記事では、下記のような論点が問題点として挙げられています。
①経済合理性の変化:以前は企業と労働者と双方に合理性が存在したが、最近は企業側にとって都合よく利用されている。
②非正規社員の労働条件の悪さ:不安定な雇用、低い給与、福利厚生未加入など処遇の問題が山積み。
③人的資本の形成:能力開発やキャリア開発など、企業側は非正規社員に投資しない。
④正社員への転換機会:正社員への登用機会が少なく、その壁は厚い。
⑤正社員との格差:正規対非正規の経済格差。例えば非正規社員は定収入のため男性未婚率が高い。(相関が見られる)
⑥男女間の格差の拡大:あらゆる年代において非正規は女性比率が高く、②と関連して男女間の給与格差が生じやすい。
これらの問題点を見て、思わず声を上げてしまいました。
「これ、10年前から指摘されていたことばかり。変わってないじゃん!」
労働条件において多少の改善は見られるものの、10年前と本質的には変化なし。
私の論文が役に立ってないのは理解できるとして(それがわかっていたから研究者ではなく実務の世界に進んだわけですが)、経済学者や識者が優れた提言をしても実務の世界で実現できない。
それほど根深い問題なのです。
そして当時は読み流したであろう下記の文章に疑問を感じました。
・正社員は本当に企業にコミットしているのだろうか?
・正社員だけがコア人材なのだろうか?
確かに以前はそれが前提だったかもしれません。
ですが、諸外国の中でもエンゲージメントが低く、労働生産性がダントツで低い日本企業。組織を動かしているのは正社員である事実を考えてみてください。この部分は誰もが気づく大きな変化かもしれません。
では21世紀に入ってからますます深刻化している非正規労働問題を解決するにはどうしたらいいのでしょうか?
記事の中では次のような提言がされています。
非正規社員に育成機会を与え、正社員への転換を促す。
そうです、正論です!!
ですが、こちらもずいぶん前から、ずっと指摘されていることなんですよね。一向に改善されないのは、現在の日本企業を見れば火を見るより明らか。経済が停滞し、収益が減少しているために正社員の雇用を維持するのが難しい、正社員にさえ投資する余裕がないのに、非正規への投資はムリゲーなんです。
ここで、一案として私が大学院時代に提唱した妄想を披露したいと思います。
管理職以上のポストに就く社員(役員も含む)を正社員ではなく、非正規社員(有期契約)に転換。組織から求められる役割をこなし成果を発揮した場合は新たな契約を締結する。
その理由は、専門性が高く優れた成果を出すことが当然(のはず)であり、組織の中で報酬水準が高い。組織内で上位に位置する管理職や役員こそ、職務内容が明確で業績に応じて給与が変わるべき層だからです。
一方、報酬が低めで社外で通用するスキルや専門性を培っている途中の新卒から中間層までは正社員として雇用を守る。
当時の指導教官、ゼミの仲間から暴論だと批判され、ドン引きさせてしまったのをはっきりと覚えています。彼ら自身がメンバーシップ型の会社で雇用を守れられていた既得権メンバーであり、正社員の雇用を保証することは企業の責任だと真面目に信じていたからだと推測します。
けれども最近の国の動きを見ていると私の提言が実現できそうな気がしています。
それはなぜか?日本全体がメンバーシップ型からジョブ型へ移行し始めたからです。
政府は2023年春までに日本型雇用の核ともいえる職能給を職務給へ移行する指針を策定することを明らかにしました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA2328K0T20C22A9000000
ジョブ型(職務給)について関心のある方は、こちらのnoteをご覧ください。
「仕事に人がつく」のがジョブ型。個々の職務に必要な専門性やスキル、勤務地などを明記してそれを遂行できる人材を登用するため、実は正規か非正規かは問いません。
ジョブ型の下では報酬水準を同じなので、非正規社員でも成果を上げれば正社員より高い給与を支払うことが可能になります。
欧米だけでなく、昨今は日本でも「高収入のスーパー非正規社員」が増えています。数年後には働き手の中心となるかもしれません。
冒頭に紹介したいくつかの問題点。中でも一番深刻な「非正規労働者の給与水準の低さ」という問題の解決に繋がります。(時給の高い管理職が非正規に転換するので)
10年前には日本社会でジョブ型が流行るなど誰も予測できませんでした。ところが一転、今や官民一体となってジョブ型を推進する時代。
だからこそ、この提案の実現性はあるのではないかと考えます。
正社員の方が非正規よりも優れている
正社員は雇用を保証されるべき
正社員とは組織にコミットしているコア人材である・・・
そろそろ私たちは、このような思い込みを捨ててパラダイムシフトをする必要ありませんか。
一向に解決へ進まない問題は前提や仮説を見直し、大胆にルールを変えるしかありません。
頭がおかしいのではないか??
これを読んで笑っていただいても構いません。
正解だとは思ってません。議論のきっかけになれば嬉しいです。
ぜひ、非正規問題の本質的な解決に寄与する画期的な策を展開してください。
上辺だけの正論、きれいごとで片付く問題ではありまけん。より多くの人が議論に参加し、社会全体でルールや仕組みを変えていきたいです。