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ワンちゃんが収穫したオレンジが爆売れからの炎上。どんどん高まる中国ライブECの魅力と危険

ショート動画の投稿やRED(中国のInstagram)での情報共有は中国のネットユーザーの心を捕まえ次々と新たな流行りを生み出し続けています。

先日紹介した「淄博烧烤」や、度々話題となる「RED映え詐欺」からもわかるように、この2つのプラットフォームはすでに、巨大ブランドから一般人、そして農家までもが重要視するマーケティングの重鎮となっています。

ただ一歩間違えると炎上するリスクとも隣り合わせです。今日は、ワンちゃんが働くことで話題になって爆売れから一転、ネットいじめの嵐を浴びているオレンジ農園の事例からライブECの発達とその課題について紹介します。

■なぜ人気になったのか!?

4月上旬に話題になったのは、「毛毛(もも)」というゴールデンレトリバーの犬でした。湖北省のオレンジ農園にいる6歳のメスの子。元々ボール取りの遊びが好きで、飼い主の葉さんがオレンジを収穫した時に、その真似でオレンジを枝から取って箱に入れる作業を覚えました。

(画像:海報新聞から)

その動画をネットにアップしたら瞬く間にバズりました。あまりにも注目され人気となり、毛毛ちゃんが取ったオレンジもぜひほしいとの声がたくさん。このリクエストに応えて、一箱(2.5kg)購入すれば毛毛ちゃんが取った「毛毛果」(果は果物のこと)一個をおまけする販売を始めました。

これが大ヒット。「毛毛果」を購入した消費者がネットで自分の喜びをシェアし、新たに買い求める人が増える、の好循環でファンが指数的に増加。

記事によると、毛毛の作業姿がバズるまでライブECでの販売は1日数十口程度だったのが、バズってからは少なくとも7〜800口の発注があったとのこと。なかには、おまけの一個じゃ足りなくて、箱ごと毛毛ちゃんの取ったものがいいとの強烈なファンも少なくない熱狂ぶり。もちろんワンちゃんの労働力が限られてるので順番待ちになっていました。

(画像:海報新聞から)

↑実際にSNSにシェアした「毛毛果」、ワンちゃんが取ったから歯の跡が残されてます。それがまた愛犬家たちの心を掴み、可愛いとか、欲しいとかのコメントがたくさん付きます。

ボクも、リアル友達が嬉しそうに手に入れた「毛毛果」の写真を見て初めてこの流行りを知りました↓

(友人からの画像提供。毛毛が取ったもので(食べるかどうかについては)慎重に、のシールが貼ってあります。)

しかし人気爆発している一方、批判の声もありました。

■そして炎上へ。正義と理不尽は紙一重

まずは衛生の面からの心配です。皮があるといってもワンちゃんが噛んで口から出したものを食用とすれば食の安全としてはよろしくないとの意見。

さらに(元々安いはずのライブEC農家直販なのに)味からして品質が普通のオレンジをコスパのよくない価格で販売し、完全に犬を利用してる悪徳商人だと主張する人が批判を書き込み。

実際、オレンジの品質については買った友達情報によると、たしかに同じ大きさだと家の近くのスーパーの方が全然お得だったようです。ただ中国でオレンジを購入する場合、あたりとハズレはよくあるから一回の購入だとなんとも言えないとも。

このような批判に対して葉さんは、「毛毛果」が欲しいとメッセージのあるオーダーだけに、きちんとシールで見分けられるようにして販売していると主張。実際シールが貼られてオレンジが送られてきていました。

この事態にネットでは論争が。熱烈ファンからは「ワンちゃんが好きだから購入しただけで、特に食べる予定はなかった」や、「自分の家の犬もオレンジが大好物だから犬用には特に不安がない」との反論も。そして一番多いのは心配やコスパが悪いことを批判するなんて余計なお世話だからほっといてくれとの感じのものが多かったです。

炎上し続けた結果、「毛毛果」の販売が一時停止に。ただ毛毛ちゃんはそのことを理解できず、相変わらず毎日一生懸命働いてる、とちょっとかわいそうな結末になりました。

■中国SNSでのバズりと炎上の構造とは

この一連の出来事はまさに、最近の中国の典型的なマーケティングの流れを表しています。

抖音(tiktok)でKOLによる動画発信(話題になったらアルゴリズムによってかなり再生されます)

小红书(red)でKOC(リーダではなくカスタマー)によるシェアでさらに拡散される

tiktokでの販売誘導。爆売れ

対応を間違えるor思わぬ批判 からの炎上

以前紹介したタオバオでのライブECと大きい違いは、タオバオを立ち上げる理由は、買いたいものがある時、まだは買い物したい時ということ。一方でtiktok→red→tiktokのループでは、どちらもECアプリではないため、娯楽やソーシャルをしたい時に立ち上げるのでユーザーの視聴目的が明確に異なります。

直接の商売よりも「いつも見てるアカウントを盛り上がりましょう」や、「最近流行ってるから試しましょう」など、ある種ソーシャルイベントに参加する気持ちが強く、”買い物“の行動とはちょっと異なるのです。

観察していると、こういった商売のやり方は爆発的な人気を獲得しやすいですが、モノ自体にコアな競争力がなければ、”ひとまず儲かるホットマネー“を得ることはできても、継続が難しいケースがほとんどに見えます。

特に中国では、大活躍のMCN機構の存在があります。彼らはネットでの話題作りのノウハウが半端ないので、彼らの協力で次々とバズりが作りだされます。そして、彼らにとっては次々と話題づくりをすることが仕事の場合も多く、そのあとの事は深く考えてない場合もよくあり、ある意味無責任なケースもたくさんあり問題が起きます。

日本でもショート動画発の炎上などは増えてきているでしょうか。中国で今まではバズりと炎上はWeiboが独壇場でしたが、最近は変化してきてます。日本も炎上するといえばTwitterとヤフコメで、Instagramやショート動画ってケースはあまり知らないですが。今後日本でも同様の(炎上)マーケティングが注目されるようになるかもですね。

(参考資料)


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