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アーティストから経営者になったからこそ、クリエイティブであり続けたい

ぼくがオシロ社を創業するまでの道のりは、決して一般的なものとは言い難い。これまでの人生、多くの失敗を経験してきたけれど、その分学びもあった。今回は、自分自身の経験から得た学びについてシェアしていきたい。


勉強と実践はセットで

ぼくは24歳で世界一周の旅に出て、帰国してからの20代はアーティストとして活動したが、30歳を機にアーティスト活動に終止符を打った。二足のわらじで活動していたフリーランスのデザイナーは、32歳まで活動した。

そこからは、日本で初めてIFA(独立系フィナンシャルアドバイザー)金融の会社を共同で創業した。その会社を退任した後は日本とニュージーランドの二拠点生活を経て、「日本を芸術文化大国にする」という天命を授かり、コミュニティ専用オウンドプラットフォーム「OSIRO」を開発・運用するオシロ株式会社を立ち上げた。簡単だけど、こんな略歴になる。

ぼくがアーティスト活動を始めた頃はちょうど、バブルが崩壊した直後。ただでさえ駆け出しのアーティストは絵が売れない。当然思うように絵はお金にならない。正直食べるのにも困った時期もあった。

アーティストの仕事だけでは食べていけないからと、20歳の時に買ったMacintoshで半径5メートルの知人へデザインの仕事をしながらなんとか食いつないだ。会社のロゴ、名刺はよかったけれど、つくったこともないのにホームページのデザインを引き受けて、勉強しながら見よう見まねでやり切ったこともある(笑)。結局、アーティストとしては芽が出ずに30歳で諦めてしまったけど、生活のためと必死に勉強しこなしてきたデザインでは評価され、海外で授賞式に呼ばれるデザイン賞をいただくこともあった。

そんな経験から、経営者になった今も勉強と実践はなるべくセットになっていた方がいいと思っている。

もしもつくったことがないからとホームページの仕事を断っていたら、ぼくはWebデザインについて学ぶことすらなかっただろうし、もしかすると現在のようにオシロ社を創業していないかもしれない。もちろん、仕事を引き受けた後できないという壁が立ちはだかると、「なんでこんなことをやるっていっちゃんたんだろう」と内心で思うこともあった。しかし、できるまで諦めない性分、なんとかしようと踏ん張った。実践を通じて得た経験値は非常に大きいことは、まさに実践が教えてくれたことでもあった。

だれでも最初はできないからはじまるし、みんな初心者である。慣れていないことをするから失敗する確率も高い。しかし、失敗を恐れて実践する機会を失ってしまうのはとてももったいないことだ

課題解決のヒントは意外と「離れた場所」にある

自身が抱える課題を解決するヒントは、案外会社から離れた場所にあるのかもしれない。

例えば、ぼくは定期的にレースヨットに乗らせてもらってセーリングに出たり、カヌーをすることがある。その時は単純にセーリングの技法を学んでいるのだが、実は海原で風を探したり、セイルトリムしているときに、組織や経営に活かせる学びを得ることがある

また、人に会いに行って話をすることで気付かされることも多々ある。

オシロの共同創業者である大輔さん(四角大輔氏)やサディ(佐渡島庸平氏、コルク代表)との対話や議論からは非常に多くの学びや気づきを与えてもらっている。そのほかにもさまざまな業界で活躍される人から、直接話を聞かせていただきすぐに実行するサイクルを続けてこれた。

ヨットやカヌーの例も、業界で活躍されている方から話を聞かせていただくことにも共通しているのは、自分が置かれた状況や立場から離れたところに気づきの機会があるということだ。

なにかを勉強する、学ぶというと、一人黙々と本を読んだり調べたりすることを連想するかもしれない。しかし、一見関係がないようなことを体験しているうちに、実は自分が課題に思っていたこと、解決したいことの糸口が見つかることもある。そしてなによりも、多くの人や物事と触れ合うことによって、自分にはなかった新たな視点を得ることもできる

そういった意味では、なにかを学ぶということは一つの「点」ではなく、勉強したことや本で読んだこと、公私も含めて体験したことは無駄にはならず、やがてつながり「面」になっていくことなのでは、とも思っている。

新たな本に触れると同時に「深める本」を

書店に一歩足を踏み入れるだけで楽しくなる。

今ではネット上で気軽に本を買うことができるし、Kindleなど電子書籍があればいつでもすぐに本を読むことができる。しかし、ネット上では目的の本以外との出会いがないし、おすすめの本はアルゴリズムに則った類似本ばかりが出てくる。

それはそれで構わないが、書店に行って書棚を見渡すことは、学び多い体験だ。なによりも新たな本と出会う楽しさがある。それはビジネス書や文学だけでなく、時には漫画だったり、絵本からも大きな感銘を受けることがある。

新たな本との出会いを楽しむ一方で、ぼくは特定の数冊を繰り返し読むようにしていて、理解を深めている

尊敬する経営者の本が数冊あり、そのうちの一冊は、毎朝読むことを習慣にしていて、その日読んだ項目を今の自分の課題や社員に理解してほしいと思っていることとミックスさせて、自分なりの考えを整理するトレーニングとしている。

最初はすぐにできなかったが、同じ本を何度も何度も、何年も読み続けていると、より深い理解になっていく。そうすることで、尊敬する経営者の思想や哲学をただインプットするだけでなく、自分自身の血肉となるように感じている

読書をすることは非常に重要だし、幅広い本を読んで知識の幅を広げることも重要だ。一方で、自身が特に感銘を受けた本を繰り返し読んでいくことによって、深くその内容を理解することにも多くの学びがある。

スキルを培うだけじゃなく感性も養いたい

生成AIの普及や社会情勢の変化が著しい現在、未来をつくる難易度は非常に高くなっているといえる。スタートアップであるオシロ社も、採用の難易度の高さを痛感しているところだ。社会的に不確実性が高くなる一方で、メンバーシップ型からジョブ型へと雇用の移行が進むなか、リスキリングに取り組むビジネスパーソンも増えてきている。

もちろん、オシロ社としても高いスキルを持った方にぜひ入っていただきたいのはもちろん、創業時から変わっていない採用基準がある。それは「徳の上に才がある」という考え方だ。

つまり、オシロ社ではまず人間性やEQ(心の知能指数)をベースとして、その上でスキルを加味した採用をしている。採用において「徳」を重視した経緯や理由についても、以前noteに書いたことがある。興味のある方はぜひこちらも読んでいただきたい。

オシロ社が開発するコミュニティ専用オウンドプラットフォーム「OSIRO」は、「人と人が仲良くなる」ことを開発思想としている。そのようなプロダクトは開発する人ひいては組織の人間性があってこそ生まれるものだ。

だからこそ、オシロ社では入社後も引き続き、自分自身の学びや感性、そしてクリエイティビティを高めてもらいたいという思いから「Touch The Art」という福利厚生制度をもうけている。これは、社員の美術・演劇・映画などの芸術鑑賞やライブのチケット代、書籍購入や服飾品の購入費などを月3万円を上限に補助する制度だ。

そのほかにも、オシロ社のオフィスにもアート作品を置き、芸術を身近に感じられるようにしている。オフィスの工夫はそれだけではなく、社員全員がよりクリエイティブになれるよう、オフィス選びから配置、導線に至るまで工夫を凝らした。

映画を観たり小説を読んだりするのは、一見ビジネスとは関係ないと思われるかもしれない。しかし、芸術は人間の感性を確実に刺激する。なにより、AIによって自動化や代替化が進んでいく現代において、最も価値が上がるのはクリエイティビティに他ならないからだ。


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