「特殊スキル武器に」【日経新聞連動テーマ企画】#非正規の力をどう生かす
正社員と、同じ仕事をしている非正規社員。両者の間で待遇格差をなくす「同一労働同一賃金」が大企業を対象に4月にスタートしました。しかし、正社員と非正規社員を隔てる壁はなかなかすぐには埋まらないようです。
こうしたなか12日付の日経朝刊「働き方イノベーション」面は、社員を業務範囲や勤務時間の条件によって「社員」(正社員)「スマート社員(限定正社員)「パートナー社員」(パートタイマー)に分けるりそなグループの取り組みを紹介していました。事情にあわせてこうした区分を転換できるようにし、手当ても見直して待遇差をなくしたそうです。
日経COMEMOでは、これにあわせて、非正規雇用で働く人の力をどのように生かしたらよいか、意見募集しました。いただいた投稿を一部をご紹介します。
投稿で目に付いたのは「非正規」を正規に近づけるのではなく、むしろ非正規の立場を積極的に生かすべきだ、との意見でした。
若宮和男さんは、非正規社員は有期のスペシャリストであり、正社員よりも高スキルの人材として活躍する「プロ非正規社員」としてみずからの特殊なスキルをとがらせていくべきだといいます。
本間充さんは「オペラは正規と非正規のハーモニー」と指摘。オーケストラ団員が正規社員なら、演目ごとに代わる歌手は非正規契約社員であり、「非正規の方は、正社員にはない高度なスキルを身につけて優秀なギグワーカーとして働く」ことを提案しています。
現在は非正規となっている力を生かせるような制度設計が必要、との意見も目立ちました。
檜山敦さんは、「非正規」という呼び方からの脱却が必要であるとし、スポーツでいうフリーエージェント制度の形に近い非正規雇用の流れをもっと太くしていくことが、非正規雇用に対する社会の偏見を払拭していく流れをつくっていくと提案します。
富永朋信さんは「仕事は正規で回すもの」という前提に合理性はあまりなさそうだとし、むしろ組織のアジェンダとしては「正規に何をさせるのか」という見方をした方が、適切なのかもしれないといいます。
宮嵜浩さんは、非正規雇用の割合をゼロに近づける事が企業経営にとって長期的に望ましいとはいえず、むしろ非正規雇用を経営の中枢に積極的に取り込む姿勢、例えば人事・組織改革の陣頭指揮を非正規雇用のエキスパートに委ねるという冒険心が今後は必要になるとしています。
楠正憲さんは、非正規の力を生かすには環境整備が必要だ、としています。試行錯誤を通じて経験を積む機会を奪ないように、非正規の方でも裁量をもって働けるように規制を改めるべきと提案します。
ktana_さんは、時間に対して労働の価値をつけてしまうような従来の制度では非正規の力を本当に活かすことはできず、成果に対する評価を正しくできるかがポイントになるとし、リモートワークの普及に期待を寄せます。
しばたはるなさんは、正規雇用と非正規雇用に二分化されていること、さらに「非」正規、と否定の言葉を使っているところに違和感があったといいます。そして社会の制度は一定の余裕を持たせたものにして、細かい部分は企業ごとでのアレンジをする仕組みを提案します。
考えさせられる投稿が多く、COMEMOスタッフにも勉強になりました。さきほどご紹介した12日付の日経朝刊「働き方イノベーション」面に、紙面のスペースの関係でごく一部、楠正憲さん、若宮和男さん、本間充さんの投稿を取り上げさせていただいています。
次回のテーマは「#どう守る私たちの仕事」です。こちらも投稿をお待ちしております。