見出し画像

デンマークの社会変革力から「枯れた技術の水平思考」を学ぶ

先月にデンマークを初めて訪れて感銘を受けたのが、「社会変革力の高さ」です。

デンマークは先進的な国として認識されはじめていて、実際に、
・国連の電子政府ランキング
・世界の住みやすい都市ランキング(コペンハーゲン)

などで首位を獲得しています。

日本でもバズワードになっている「リスキリング」の考え方も、圧倒的なスピードと質をもって進められ、社会が変わる⇄個人が変わる流れがつくられています。

デンマークの人口は600万人弱。限られた人口で国際競争を勝ち抜くには一人ひとりが生産性を高める必要がある。労働政策への公的な支出をみるとデンマークは19年にGDP(国内総生産)比で2.8%と日本の9倍。職業訓練だけでは0.01%の日本に対し、デンマークは0.36%と大きな差がある。

日経新聞 「古いままが最も怖い」 デンマークの元祖リスキリング

象徴的な交通インフラ変革

社会変革力の高さを象徴していると感じたのが「交通インフラ変革」です。

こちらは滞在中にツイートした内容です。

首都コペンハーゲンは自転車社会で有名ですが、調べれば調べるほど面白いです。

人の健康問題の解決、環境課題の解決に取り組むために、交通インフラを自転車中心にする大きな構想と、連動して投資がされていることがわかります。

コペンハーゲン市は、都市の排気汚染対策として、自転車利用の促進を全面に押し出した道路空間の再編に取り組んでいる。政策の一環として、事業の縮小、自転車の相互通行から一方通行への変更や通り抜け不可への変更などを積極的に行い、空いたスペースには自転車専用道路を整備、車道と歩道の間にある自転車道の拡張、自転車専用橋の設置を行うなど、2009年~18年の10年間、合計10億デンマーク・クローネ(約190億円)の予算を自転車インフラに投資している。

引用元:北欧のスマートシティ: テクノロジーを活用したウェルビーイングな都市づくり

図解すると下記のようなイメージ。

コペンハーゲンの都市戦略を図解

人の健康課題解決、環境課題の解決を一気に進めるために、
・自動車を中心とした社会から脱却

・自転車中心に交通インフラが再設計
されていることに感動しました。

デンマークは、なぜこんな大きな変革できるの?

デンマーク(コペンハーゲン)は、なぜ交通インフラをガラッと変えるような変革ができたのか?

この疑問に対して、追加で調べていての学びについて書いていきたいと思います。

ビジネスの世界でも、ビジョンを描き、組織を動かして未来をつくるヒントがあると考えています。

変革とデザインの力

デンマークには、国営のデザイン組織が存在しており、デザインの力で社会変革を進める体制が整っていることが興味深いです。

デンマークといえば家具のデザインで有名ですが、プロダクトより、サービス・社会などのデザイン領域に力を入れていることがわかります。

デンマークデザインセンターのサイトは学びの宝庫です。

理想とする社会をつくるプロジェクトやツールがサイト内に公開されていて、デザインやマーケティングのプロジェクトでも活用できるヒントに溢れています。

デンマークはデジタル化の最先端事例としても取り上げられますが、現地を訪れた際も、社会に実装されているテクノロジーが最先端だ!!とは感じませんでした。
むしろ、日本の方が一つ一つの技術レベルは高いのではないでしょうか?

デンマークは最先端技術ありきではなく、
・ビジョンを描く・自分たちの在り方をつくる

・既存技術を組み合わせて社会を動かす
この考え方を持っていることが、変革力の根底にあるのではないかと考えるようになりました。

コペンハーゲンの都市づくりはテクノロジー先行ではなくデザイン先行

Forbesの記事の中で、コペンハーゲンの都市デザインについて語られているコラムがあったので紹介です。

Small Changes, Huge Impact
There are lessons to be learned from my own home city of Copenhagen, Denmark. We didn’t reinvent the wheel to tackle the challenge of cars and our environmentally devastating dependence on fossil fuel. We just picked up a different set of wheels: bicycles. The bike experience there is the poster boy for the two-wheeler’s value in not only aiding a reduction in pollution and improvement in public health but also enabling a reimagination of urban mobility.

小さな変化、大きなインパクト
私の故郷であるデンマークのコペンハーゲン市から学べることがあります。私たちは、自動車・化石燃料に対する依存という環境課題に取り組むために、車輪を再発明したわけではありません。自転車という別の車輪を手に入れただけです。コペンハーゲンでの自転車体験は、公害の削減や公衆衛生の向上に役立つだけでなく、都市の交通システムにおける二輪車の価値を示すモデルとなりました。

Forbes記事より引用(日本語は筆者翻訳)

これは枯れた技術の水平思考発想だ!?

上記の文章を読みながら考えたのが、これは枯れた技術の水平思考だ!ということです。

枯れた技術の水平思考とは?
先端技術ではなく、使い古された技術の使い道を変えてみることによって、まったく新しい商品が生まれるという考え方です。

任天堂の天才開発者である横井軍平さんが使っていたことで有名な言葉です。

技術ではなくアイデアで勝負する考え方で、代表例は、ニンテンドーDSです。

ニンテンドーDSは、ゲームボーイの液晶(既存技術)をペンタッチに変えて大ヒットを生んでいます。

一昔前の事例ですと、ゲーム&ウォッチ。
電卓の開発であり余っていた液晶を使用することで低コストを実現して大ヒットとなり、ファミコンの足がかりとなったというのは有名です。

デンマークの交通インフラ変革は、枯れた技術の水平思考によって成り立っている。技術は既存のものでも、問題意識・ビジョン・戦略を紐づけているから変革ができていると考えることができます。

特別な技術があって成り立っているわけではなく、既存技術を組み合わせて、描いたビジョンを達成している。

構想×哲学×既存技術の組み合わせで大きな変革を

自分が普段関わるマーケティングの世界でも、構想・哲学・戦略などが抜け落ちた中でのテクノロジー活用は失敗に終わっていく事例をたくさん見てきました。

デジタル技術をフル活用するためには、最先端のテクノロジー活用の前に、社会ビジョンを描く、自分たちがどう在りたいかを考える、といったものが根底に必要だと感じています。

「枯れた技術の水平思考」は、「このような世界を実現したい」という強い想い・構想・哲学があって成り立つのだと思っています。

枯れた技術の水平思考は、任天堂やSONY(ウォークマン)が得意とした考え方であり、これから日本が世界で戦う中でもキーワードになるはず…

と考えると、もっと、社会ビジョンを描く、哲学をもつことを大切にしていきたいところです。

変革の思考やツールが体系化されているデンマーク

先程に紹介した、デンマークデザインセンター(DDC)が出されているツールの中に、「The Digital Ethics Compass(デジタル活用の倫理チェック)」や「New Days:Future Kit(未来を考えるツール)」などが紹介されています。

デンマークには、国全体に、構想のつくり方・在り方の描き方を浸透させるための動きがありそうです。

技術変化に適応する、目の前の顧客ニーズに応えることも大切ですが、あわせて未来から逆算して思考する、自分たちの在りたい姿を深く考えることも、戦略をつくる上で大切にしていきたい。
デンマークを訪れて、調査をする中で、思考が良い感じに揺さぶられてきています。

2023年は、デンマークには3ヶ月に1回ペースで訪問して、社会全体をデザインする、根底のシステムを変革する力を学んでいきたいと思います!


先月に書いたnoteも、コペンハーゲン訪問の学びをまとめているので、ご興味ある方はぜひ!

最後まで読んでくださりありがとうございました!

マーケティングも目の前に売上をつくるためだけではなく、社会・文化と向き合う視点を大切にしていきたいですね。

そんなことを考えながら読んでいる本を最後にご紹介です。

マーケティングと文化の接点を考えるためにオススメです。

ここから先は

0字

マーケティングトレースのnoteメンバーシップコミュニティです。 マーケティング思考を深めたい、少…

スタンダードプラン

¥1,500 / 月