1本の記事が5日で有料購読者2万人獲得、初年度30万人が課金購読した米老舗メディア『アトランティック』
新型コロナウィルスの感染をきっかけに習慣的に読むようになったニュースメディアの1つに1857年に創刊された米老舗メディア「The Atlantic(アトランティック)」があります。医療分野の専門的な知見を踏まえた記事などを中心に、今年の3月以降多くの識者が「必読(must-read)」と添えてSNSでシェアしているのを目にしたことがきっかけです。
そのアトランティックが9月10日の今日、デジタル有料購読プラン(デジタル版は年間49.99ドル)を開始してから1年という区切りのタイミングで、『初年度30万人の課金購読者を獲得し、2022年12月までに100万人の有料購読者獲得を目指す』、というリリースを公開しました。
特に注目したのは、アトランティックメディア社ののプレジデント、マイケル・フィネガン氏からスタッフに送ったメッセージの中で記載されている以下の内容です。1本の記事が、たった5日間で1,000万人のサイト訪問をもたらし、2万人の有料購読者を獲得したとのことです。
(アトランティック誌の編集長である)ジェフリー・ゴールドバーグ氏の先週の大統領のコメントに関する報道は、国民的な話題を牽引しました。この記事が掲載されて以来、1,000万人の人々がこの記事を読むために当サイトを訪れ、さらに多くの人々が当サイト独自のフォローアップ記事やニュースセグメント、分析を通じてこの記事を知るようになりました。読者は、わずか5日間で2万人の購読者数を記録し、私たちの報道をどれだけ評価しているかを証明してくれました。
『トランプ大統領:アメリカ人戦没者は負け犬でまぬけだ〜大統領は軍からの情報を何度も蔑ろにし、負傷した退役軍人を軍事パレードから遠ざけるよう求めてきた、と複数の情報筋がThe Atlantic誌に伝えている。』
[アトランティック誌の報道を受けて詳しい解説がされているBBCによる記事]
この問題の記事が9月3日に公開されると、ニューヨーク・タイムズ、AP通信、ワシントン・ポスト、そしてフォックスニュースまでもが裏付けを得たと報道が発展し、大統領選に向けてのトランプ大統領の資質を問う重要な議論をもたらす役割を果たしています。
SNS分析サイトのBuzzSumoによると、この記事は合計で700万ものエンゲージメントを獲得し、フェイスブックで64万回以上シェアされ、ツイッターでも10万回以上RTされるまでの大きな関心を集めていることが分かります。
記事の執筆者でアトランティック誌のジェフリー・ゴールドバーグ編集長が9月6日のCNNの報道番組にゲスト出演した際には、トランプ大統領が米国の戦死者について軽蔑的な発言をしたとの記事の内容を支持した上で、「この件について今後数日から数週間でもっと多くの記事、裏付け、新しい情報が出てくるだろう」と力強く語っています。
新型コロナウィルス関連の記事が高く評価されたアトランティック誌は、5月と6月にそれぞれの月間5万人づつ、2ヶ月で10万人の有料購読者を獲得しながらも、5月中旬には社員の17%、68人をレイオフせざるを得なかったという厳しい現実がありました。ただ好調なサブスクリプション収益を追い風に今後は編集、プロダクト、エンジニア、グロース関連の求人を再開するとのことです。
海外ニュースメディアの成功事例というとニューヨーク・タイムズがよく話題になりますが、骨太なジャーナリズムを追求する中で急成長を遂げているアトランティック誌の動向にもぜひ注意して見守っていきたいと思います。
*2019年11月の誌面デザインリニューアル時の紹介動画↓
過去参考記事: