2022年は「スタートアップ創出元年」となるか
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2022年は「スタートアップ創出元年」となるか

唐澤俊輔(Almoha 共同創業者)

年明け一つ目のnoteです!さて皆さん、2022年1月5日に行われた岸田首相の年頭記者会見、ご覧になりましたか?

僕自身は、デジタル庁で働くようになってから政治の動きには敏感になりまして、総理や大臣が発信するメッセージに注目するようになりました。

行政の中の人になって感じるのは、政治家の発言の社会に与える影響力の大きさです。以前は「何となく綺麗にまとめて話してるだけなんだろうなー」くらいに思ってましたが、こうした発言から多くの人が動き、影響が広がっていくのを目の当たりにしています。
そして、こうしたメッセージは、行政に携わるたくさんの優秀な人材が、あらゆる事情と影響を鑑みて作り上げてるというのも見てきました。常に練りに練って、練り上げきってから発言がされているのです。
つまり、こうしたスピーチから国のこれからの動きが結構見えてくるということなんですよね。

年頭記者会見のポイント

岸田首相の年頭記者会見では、コロナ対策について言及をした上で、「新しい資本主義」について多くの発言をされました。
成長と分配の両立を目指す「新しい資本主義」において、市場原理に任せっきりにせずに、成長分野に投資しながら分配をしていくという方針です。

 慎重に新型コロナ対応を進める一方、新しい資本主義の実現に向けては、大胆な挑戦をしていきます。「新しい資本主義」では、市場や競争に全てを任せるのではなく、市場の失敗や外部不経済を是正する仕組みを成長と分配の両面から資本主義に埋め込み、資本主義の便益を最大化していかなければなりません。市場や競争に任せるだけでは、次なる成長に不可欠な分配や投資が不足がちになるからです。

https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/statement/2022/0104nentou.html

その上で、新しい資本主義を実現するための決意として、以下の3つを掲げました。

  1. スタートアップの創出

  2. 地方における官民のデジタル投資倍増

  3. 気候変動問題への対応(エネルギー・脱炭素など)

特に着目したいのが、一つ目に挙げた「スタートアップの創出」です。一つ目というのは最重視しているということです。
デジタル化やエネルギー政策よりも「スタートアップ」なのです。

そして、スタートアップについてはこのように言及されています。

戦後の創業期に次ぐ日本の第2創業期を実現するため、本年をスタートアップ創出元年として、「スタートアップ5か年計画」を設定して、スタートアップ創出に強力に取り組みます。
ーーー中略ーーー
そのために公的出資を含めたリスクマネー供給の強化、公共調達等の大胆な開放、海外展開への徹底的支援、株式公開制度の在り方の見直しなど総合的に取り組んでまいります。

https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/statement/2022/0104nentou.html

戦後の創業期に次ぐ、日本の第2創業期!!
スタートアップ創出元年!!!
そのために、大胆に、徹底して、総合的に取り組むとのことなのです。


そもそもスタートアップとは何か

ここで考えたいのは、「スタートアップとは何か」ということです。
創業から期間の短い未上場の新興企業は、以前からベンチャーと言われていたが、最近になってベンチャーよりもスタートアップという表現で言われることが増えてきました。

スタートアップとベンチャーの違い

日経新聞で検索すると、ベンチャーが28,025件、スタートアップが19,900件と、ベンチャーの方が多く使われていた。一方、2022年1月1日〜1月7日の一週間に絞ってみると、ベンチャーの26件に対して、スタートアップは91件と逆転しています。
1月2日の社説でも、起業、成長、投資、と言った文脈において、「スタートアップ」という表現がされているんですよね。

ベンチャーとスタートアップの違いについて色々な記事を調べて見たところ、説明にも結構違いがあって、まだ共通した定義はないのかなという印象です。

構造的にはこの図の説明がわかりやすいです。
ベンチャー企業の中で、スモールビジネスに止まらない急成長を遂げる事業領域で勝負しているのがスタートアップと言えますね。

https://ten-navi.com/hacks/article-304-26152

「急成長」をわかりやすく表現した図がこちらです。ベンチャーは必ずしも急速な成長を求めておらず、安定的に成長させることを目的としている一方、スタートアップは急速な成長を前提としていることがわかります。

https://japan.plugandplaytechcenter.com/blog/what-is-startup/

スタートアップの特徴はステークホルダーの多さ

こうしたことから、スタートアップの特徴は、イノベーティブなアイデアに積極投資することにより、短期間で急速に成長する事業や企業のことだと言えます。

この急成長のカーブを描くためには、人材や設備への積極投資が欠かせませんが、成長が約束されていないリスクも金額も大きい投資となります。つまり、自社の利益からの投資や、銀行借入による資金では限界があります。
そのため、VC(ベンチャーキャピタル)をはじめとする投資家から株式で資金調達が必要となり、急成長した後にIPOやM&AなどのEXITにより投資家にリターンを返すということが前提となるわけですね。(だから、スタートアップにはEXIT戦略が必要と言われる)

また、スピーディーな成長が求められますから、自前で全て内製している時間もありません。そのため外部企業とアライアンスを組みながら事業推進していくことも多くなります。

このように、ステークホルダーを巻き込みながら急速に大きく成長していく事業であり企業がスタートアップだということです。


なぜ国の成長戦略がスタートアップ推しなのか

これまで見てきたように、急成長する事業領域や企業のことをスタートアップと呼んでいるのですから、スタートアップに集中することが成長につながることは言うまでもありません。

これまでの成長戦略は業界で勝負していた

もちろん、急成長が見込めるようなイノベーティブな領域でなくとも、成長することは可能です。特に、個社の企業レベルから見れば、既存事業でも着実に成長していくことは可能です。
ただし、日本は人口が減っているため既存市場はシュリンクしています。だとすると、シェアの奪い合いによって拡大するしかないわけですが、これは他社を排除していくことになり、業界自体の活性化はされずサステナブルな成長とは言えません。個社では良いとしても、国の視座から見たらそれでは困るわけです。

従来の日本は、経産省を中心に、世界で勝てる成長領域・業界を特定し、国を挙げて取り組み成長してきた歴史があります。戦前・戦後の繊維産業は世界に誇るものだったし、その後の自動車業界は典型的な例といえます。
人口が増え消費が増える前提においては、この形で十分に成長してこれました。消費力の増加をベースに成長を読めるうえに、成長率などの試算もしやすくて計画に織り込みやすかったということもありそうです。

そうしてるうちに、失われた30年が過ぎました。市場の成長が止まっているのに、同じことを続けていたために起きたことだと言えます(海外展開などにより成長している企業もありますが)。
市場が成長するという前提が変わり、市場が成長しなくなったのに、同じことをしていては成長は止まります。それは当たり前のことです。

スタートアップに定めた岸田首相の成長戦略

シュリンクする市場環境になったとしても、富の分配を行い底上げしていくためには、成長領域に積極投資し、大きなリターンを得なければなりません。成長しなければ富の配分もできないですからね。

では、次の成長領域を岸田首相はどのように定めたかというと、業界や事業領域ではなくて「スタートアップ」だと定めたわけです。

これは、何となく岸田さんらしいなという感じがします。
トップダウンで「ここにフォーカスして国策として成長産業を作る」ということはしていないんですよね。
「スタートアップという成長する領域にフォーカスする」のです。

成長領域に集中するわけですから、成長するに決まっています。笑
そして、その中で医療なのか、脱炭素なのか、AIなのか、事業領域を見定めていくのはスタートアップ自身の役目だ、ということです。
そこは現場の判断に任せてボトムアップのスタイルをとり、スタートアップの起業家たちが伸びると見込んだ成長領域を信じて、起業家が思いっきり事業成長に専念できる環境を作るという判断なのだと思います。

これもこれで、一つの正しい判断だと僕は思います。
新しい技術が無数に現れ、事業領域もどんどん多様化しています。
そうした中で、誰か一人が適切な領域を判断し切れるわけがありません。

ひょっとしたら岸田首相は、リーダー自身が判断できることの限界をよくご認識されていて、ここは起業家の判断に任せることで成長を促していくという、ある種スタートアップっぽい国家運営をしているのかもしれません
(勝手にポジティブに捉え過ぎかもしれませんが。笑)

そして、日本は自動車で世界を席巻したように、「この領域で勝つ」と決めて、総力を結集して取り組んだときの実行力は凄まじいものがあると思っています。
だから、「スタートアップで勝つ」と決めきって、全員で取り組めばきっと日本はまた成長できるんじゃないかと僕は信じています。


スタートアップ創出元年に必要なこと

ということで、2022年からは国策としてスタートアップを中心に国の成長戦略を描いていくことになります。
「スタートアップ5ヵ年計画」を策定すると岸田首相も発表をされており、2022年はその1年目です。

スタートアップはとにかくリソースが足りない

スタートアップ創出のためには、あらゆるリソースをスタートアップに集約していくことが欠かせません。

イノベーティブなアイデアを持ち周囲を巻き込んでいく起業家が起点となってスタートし、VCを中心とした投資家からのリスクマネーを積極的に集めなくてはなりません。

事業運営には当然人材が必要で、エンジニアなど技術者や、事業成長を進める事業家など、多くのタレントがスタートアップに集まる必要があります。

さらに、新領域での事業を推進する中では、既存の規制が邪魔をすることも多いため、行政での規制改革も求められます。金銭面での支援のための政策的な補助金も進むでしょう。

事業成長をスピーディーに行うには、パートナーシップを組み適切に周囲の力を借りることも必要です。ここでは資本力やネットワークのある大企業とのオープンイノベーションやアライアンスといったことも有効です。

スタートアップ元年となる今年は、スタートアップが成長していくためにあらゆるリソースを集め、既存の概念を突破してイノベーションを創出していけるような環境を整備していく年になるでしょう。

(なお、最重要なリソースである人材について、報酬の面ではスタートアップも大企業に追いついてきたというスタディを年末したのでご参考までに)


これからの組織はスタートアップカルチャーだ

多数のステークホルダーが集まれば、それぞれの利害関係が対立することも出てきます。
それを防ぐには、協力者全員が起業家の下に集い、スタートアップの急成長を協働して目指していくスタートアップ・エコシステムの構築が必要になると僕は考えてます。

スタートアップ・エコシステムを構築し、各スタートアップの成長を総出で支援していくには、全てにおいてスタートアップを最優先させた、スタートアップ中心の体制づくりが必要になるでしょう。
つまり、スタートアップらしい動き方をみんなが共通しないとなりません。

もし、スタートアップが「明日までに決めたい」と思っていたときに、参画している大企業の一社が「社内稟議に2週間必要」と回答したらどうなるでしょうか?スタートアップの成長の足を引っ張ることになってしまいます。

スタートアップらしい組織運営、つまりスタートアップカルチャーを、エコシステムに参画する誰もが身につけないといけないのです。
参画する企業も、行政機関も、もちろん就職する個人だって、全員がスタートアップカルチャーを体現しないといけない。

実際に、僕の所属するデジタル庁でも、ミッション・ビジョン・バリューを定めました。
そして、デジタル庁のビジョンとして、GaaS(Government as a Service, Government as a Startup)を掲げています
サービス提供者としての行政であると同時に、スタートアップのように大胆かつスピーディーにデジタル改革を推進しよう、ということを決めたのです。

そして、そのビジョンを実現するための組織としての共通の価値観としてバリューを定めました。
スタートアップには多様なバックグラウンドのメンバーが社員やステークホルダーとして関わります。そうしたメンバーが、共通のビジョンに向けて、共通の価値観・行動指針を持って、一枚岩となり強力に組織を推進するためです。

(noteに策定プロセスをまとめていますのでご参考までに👇)


これからは、多様なメンバーが関わり合いながら、一つの目標を目指していくことが必要となります。
そしてそれは、スタートアップを中心に、急速に成長しながら進む必要があるため、共通の指針をベースに各自がスピーディーに意思決定することが求められるのです。
だからこそ、大企業も行政も個人も、スタートアップカルチャーを身に付けることが欠かせなくなると思うのです。

ということで今年は、僕が生業にしている組織づくりの面においては、スタートアップカルチャーに着目していくつもりです。

「スタートアップカルチャーがどういうものか? どのように作っていくのか? 伝統的日本組織にどうやって導入するのか?」といったことについても、書いていければと思います!!今年もよろしくお願いします!

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唐澤俊輔(Almoha 共同創業者)
Almoha共同創業者COO, デジタル庁 人事・組織開発, グロービス経営大学院 客員准教授 ← SHOWROOM COO ← メルカリ執行役員 人事組織責任者 ← 日本マクドナルドマーケティング部長・社長室長 / 『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』著者