見出し画像

フラットな組織は、揺らぎと摩擦によってつくられる。

先日、あるメンバーから「うちの会社が、フラットじゃなくなってきているのではないか」という指摘を受けました。

そもそも私たちの会社は、全員が創業メンバーであるということを目標にして組織運営を行っています。そのために、働き方や給与体系などの社内の制度も、かなり意識的に設計をしてここまでやってきました。

そんな中での「フラットじゃなくなった」疑惑は、ちょっとドキッとするものでした。なぜ、そういう指摘になったかというと、ある会議体の運営がうまくいっておらず、そのテコ入れをするために普段はその会議に入っていないメンバーに介入をしてもらったことが原因でした。介入の仕方や進め方に問題があったのですが、それをもって「フラットじゃなくなった」という印象を与えてしまったのはなぜなのか、そもそもフラットってなんなのか、ということについて考えるきっかけになりました。

ということで今日は、学びを言語化して組織のみんなで共有するためにこの文章を書いています。そして、もしフラットな組織を目指しているという経営者や管理職の方の参考になれば、嬉しく思います。

それではさっそく、本題です。

試行錯誤の総量を増やすためのフラットな組織

そもそも、私たちは「フラットな組織を作りたい」と思っていたんだっけ?というところから考えます。別に創業時にそれを標榜したわけでもないし、採用の時に「フラットです!」ということを強調するわけでもありません。つまり、特に明確にフラットな組織を目指していたわけじゃなかったんですよね。

ただ、なんとなくフラットな組織がいいよねと思っていた。そして、結果的にそういう状態になっていて、それが気に入っている、ということなんです。

では、私たちが考える「フラットな組織」とはどういうものか。

改めて考えてみると、どうやらそれは、メンバー一人ひとりが個性を発揮し、お互いを尊重しあえる関係性のある組織、と言えそうです。つまり、私も含めてメンバー同士がコミュニケーションを行う際に、余計なプレッシャーを感じることなく個性を発揮できる状態。それが、「フラットな組織」です。

そして、組織をそういう状態にしておくことで、創造性を最大化できるのではないかと思うのです。特に私たちのように、新規性の高い事業に取り組んでいる場合、まだ誰も最適解を知らないが故に、試行錯誤の量と質がものを言います。そのような状況において、メンバーが持っている経験値やスキル・WILLといったものが滞りなく発揮されること、さらには相互作用が起こることによって、試行錯誤の総量が増えます。

ですから、最適解に辿り着くために、さらには事業の可能性を押し広げていくために、フラットであることが最も効率的なやり方だと思うのです。ということで、おそらく必然的に、フラットな組織というものが志向されてきたわけです。

フラットであるための環境を整える

では、その志向を受けて、どのようにして、結果的にフラットな組織になったのか。そこは、個性を発揮しやすい環境を整えたということが、要因として大きいと思います。

いくつか、うちの社内制度で特徴的なことを紹介します。

例えば、給与体系。私も含めてみんなの給与水準(時間換算)が同じということがあります。(厳密に言えば新人とベテランは違いますが、入社から数年でメンバーはほとんど同じ給与水準になります。この点に関する試行錯誤は、またどこかでお話ししたいなと思いますけれども・・・。)

他にも、スーパーフレックスやリモートワークといった働き方も環境づくりのひとつですね。そして、フルタイムの社員でも短時間勤務の社員でも業務委託でも、リモートで働いてくれるメンバーでも、できる限り同じように働ける環境を用意できるように工夫しています。

ちなみに、多くの会社と同じようにCxOや事業責任者といった肩書きはあるのですが、それも一つの役割というふうに捉えています。CxOという名前がついている方が(主に対外的に)役割を果たすのに効果的だから、という目的によって肩書きが生まれています。つまり肩書きがついているから上、ということではないのです。

期待値と実態の乖離から生まれる揺らぎ

ここまでご紹介してきたように、生存戦略として必然的にフラットな組織が志向され、条件や制度のなどの環境を整えてきたわけです。

ただ、当たり前の話ですが、志向して環境が整えばフラットな組織が作れるのかといえば、そうではありません。創業から10期目を迎え、人数も20人を超えた今でも創業期と同じ考え方を維持できているのは、変な言い方ですが、それが破綻しなかったから、なんですよね。

では、なぜ破綻しなかったのか。それを考えた結果、常に揺らぎがあったからなんだな、ということに思い至りました。

どんな揺らぎかというと、それは、パフォーマンスの「期待値と実態のギャップ」という揺らぎです。

常に事業環境は変わっていくわけですし、私たちも新しい価値を提供していきたいと思うわけですから、進化していかなくちゃいけない。そのような背景から、一緒に仕事をしているメンバーに対して期待値が生まれます。常に相手からの期待に答えられれば良いですけれど、当然のことながら、調子が良い時もあれば悪い時もある。だから、そこに乖離が生まれます

今回、冒頭に紹介したような「会議体の運営がうまくいっておらず・・・」という事象は、まさにそこに参加していたメンバーの期待値と実態に乖離が起きていたということです。そして、その会議体とは関係のないメンバーが介入してテコ入れをしようとした。ところが、これをあるメンバーは、「余計なプレッシャーを感じることなく個性を発揮できる状態」という「フラットな組織」の条件を揺るがす出来事と捉えたのです。

これは本当に、重要な機会でした。そうやって声を上げてくれたメンバーと対話する中で、ここまで書いてきたようなことが言語化できました。そして、これまで何度も期待値と実態の乖離を埋めながら私たちは成長してきたということに気づいたのです。

だから今回のことも、また次の成長につながるのだと信じていられます。ただ、そうは言っても、とにかく目の前にある乖離を埋めなくてはなりません。

では、どうやってその乖離を埋めるのでしょうか。

揺らぎによって生まれた乖離をどう埋めるのか

これはもう、とにかく課題を場に出して対話するしかないのかな、と思っています。期待値が何で、現状の何を課題と感じているのかを場に出すこと。そして、それを期待値に合わせるには、もしくは期待値を超えるものにするにはどうしたらいいか。

そういう議論をちゃんとする、ということしかない。もちろんそこにはいろいろな摩擦が生じます。でも、それを恐れていては、自分たちの気に入っているフラットな環境が崩れていくことになるわけですから、お互いが必死になって向き合い、摩擦に耐え、乖離を埋めていく。

そして、残念ながら私が一番、フラットな状態を脅かす存在なんだと思います。今いるほとんどのメンバーと、必ず一度は摩擦を起こしているような気がします。あるメンバーはこれを「イニシエーション(通過儀礼)だ」と言っていたりしますけれども笑

そうやって摩擦が起きても、とことん対話していくことで、相手のことが深く理解できる。私は口も悪いし、感覚的だし、受け取る方に結構苦労をかけているんだろうと思います。でも、そういうプロセスを通じて、ある意味で私の至らない点に相手も気づくんだと思うんですよ。まぁこいつはこういうやつなんだな、という風に相手も理解してくれる。

私ほどの頻度ではないかもしれませんが、おそらく組織に所属するメンバー同士でも同じようにちょいちょい摩擦が起きているように思います。でも、時間をとって話したけど最終的にうまくいかなかった!決裂した!みたいなことは1回も起こっていないんですよね。

これは、対話によって乖離が埋まっていくという事例を私たちがたくさん見ている、つまり成功体験として組織文化として根付いているからなのかもしれません。

なんか当たり前の解決策でしかないかもしれませんが、対話によって摩擦を起こしながら乖離を埋め、改めて個性の発揮を促す。乖離して戻す、この一連の揺らぎが一定の頻度で起こることで、メンバーの個性が混ざり合って、組織全体が進化していく。

こういう流れなのかもしれません。

揺らぎや摩擦が組織をさらなる高みに押し上げる

もしかしたら「フラットな組織」って、すごく平和なイメージを持たれていたかもしれません。でも実態は上記にご紹介した通り、摩擦だらけです。笑

むしろ、フラットだからこそ摩擦が起きやすいのかもしれません。組織が縦の関係(つまりは権力構造)になっていたら、そこにあるのは圧力であって摩擦ではなさそうです。フラットだからこそ、横の緊張関係によって期待値と実態の乖離と、それを埋める作業としての摩擦が発生する。

単に揺らぎや摩擦のないフラットさなんて、本当に一瞬で消え去ってしまうだろうと思います。なぜなら、ともするとフラットであるということが呪縛になってしまうリスクもあるからです。期待値の乖離が生まれているのに、フラットな組織だからということでそこから目を逸らしてしまったら、フラットかもしれないけれど組織全体としてのパフォーマンスが低下していくということになる。ずるずると、組織全体の期待値が下がって、間違いなくその組織は瓦解してしまいますよね。

だからこそ、乖離が起きたらすぐに行動するのだということにメンバーが意識を持っていれば、今回のように声が上がる。そして揺らぎや摩擦を恐れずに、期待値と実態の乖離に向き合っていく。そういうサイクルを回しながら成功体験を重ねることができれば、フラットな状態のまま、関係性の中でみんなが高めあい、もっとよい組織になっていくのではないかと思うのです。

もちろん、規模や事業環境によって、それが脅かされるということは常に起こるわけですから、最適な方法はどんどん変わっていくのでしょうね。そして当然、たくさんの試行錯誤があると思います。

そう考えると、今はフラットじゃない組織でも、つまり縦の関係性が強い組織でも、恐れずに摩擦を起こし、緊張関係を作っていくことで、(構造的には難しくても)心理的な側面でフラットな組織というのを作っていけるのかもしれません。「心理的安全性」なんていう言葉も、そういう期待の表れなのかもしれないな、なんて思いました。

ということで、今日はフラットな組織ということについて、考えを巡らせてみた次第です。皆さんの組織運営にも参考になれば嬉しいです。それでは。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?