ハッカソン、互助オンライングループ、有事に真価が問われるインターネットの繋げる力
スピード感を持って人、アイディア、リソースが集結するウェブ技術者によるハッカソンの広がり
先日ご紹介した『#BuildforCOVID19 Global Online Hackathon』と題した新型コロナウィルス感染拡大に対処するためのオンラインハッカソン(3月24日〜4月3日開催)ですが、呼びかけから1週間足らずの間に世界中から1万人を超えるテクノロジストが集結し、週明けにはオンラインハッカソンがスタートします。この取組にはWHO、AWS、Facebook、Giphy、Microsoft、Pinterest、Slack、TikTok、Twitter、 WeChat等のテック系企業が支援を表明している他、マーク・ザッカーバーグ氏やWHOのテドロス事務局長も参加を呼びかけたことで、今なお参加者やプロジェクトの提出が増え続けています。
3月30日のアイディア提出の締切を前に、現時点で既に108ものプロジェクト案が提出されています。テーマは①健康、②脆弱な人々の支援、③企業、④コミュニティ、⑤教育、⑥エンターテインメントにカテゴリー分けがされ、それぞれのプロジェクトの提案者、賛同者とともに概要や紹介動画を誰もが閲覧出来ます。4月3日には優れたプロジェクトが選ばれ、実際の課題解決のためにサービスがリリースされるとのことです。
なお、こうした動きはイギリスでも生まれているようです。
Techforce19(テックフォース19)と題されたことのコンペは英国NHSX(国民保険サービス)が主催し、GovTech(ガブテック)系ベンチャー企業PUBLICによって無報酬で運営されるとのことです。
医療現場で必要とされる物品供給不足を解決するためのフェイスブック・グループ。
ウェブ開発者を中心とするこうしたハッカソンの動きの他にも、医療機関の最前線で必要とされる個人防護用具(PPE: Personal Protective Equipment)の供給不足解決のために生まれた取組は目をみはるものがあります。
『オープン・ソース・COVID19・メディカル・サプライズ』 と名付けられたFacebookグループは3月10日に開設され、現在は世界中から5.3万人が参加するコミュニティへと発展しています。医療現場で必要とされるマスク、消毒液、人工呼吸器などが不足している状況・課題をオンラインのドキュメントに整理し、その上で現在は各地域毎に既に存在するフェイスブックグループをリスト化して情報交換・共有の交通整理をするなどの試みが刻一刻と進んでいます。また、実際に不足しているものがあれば3Dプリンターの設計図などを共有することで各地のファブカフェなどで自分達で作る、という試みも展開されています。こちらのグループを立ち上げたのはカルフォルニア在住でロボティクス会社のエンジニアのGui Cavalcantiさんです。友人・知人の医療関係者から現場での供給不足の厳しい現状を聞く中で必要性を感じ、3月10日にFacebookでの投稿をきっかけに生まれたグループです。今ではグループ内で非常に活発な議論、情報交換が行われ、具体的なプロジェクトが進んでいる様子が伺えます。
国内でも今後更に広がることが予想されるインターネット上の互助コミュニティの動き
欧州やニューヨークに比べると感染拡大の動きは落ち着きつつあるように見えていた日本ですが、東京都を中心に緊迫感が次第に増しつつあります。既に地域毎に様々な形で支援、互助の取組も進んでいると思いますが、海外で急速に動いているハッカソンやオンライン上の支援のしくみなど、活用出来る点もあるのではないでしょうか。
ここ数年、フェイスブックを筆頭に巨大テック企業やインターネットの負の側面が厳しく批判され、個人情報を軽んじ、民主主義をないがしろにしたとまで非難される状態が続いて来ました。そんな中、2000年代前半、世界同時多発テロの頃にWikipediaが生まれ、数多くのオンラインフォーラムやブログで人々がつながり、助け合うために活躍していたようなインターネットの存在感を急速に取り戻しつつあるように感じます(デマやフェイクニュースの問題はまだありますが)。
最後に、こうしたオンラインの動きは一部のウェブ技術者、一部の想いのある個人の動きと見られがちですが、企業がこうした取組に積極的に関わっている姿も今後数多くみられることと思います。
企業としてもこうした国家奉仕的な活動に積極的に参加していくことで、以下の記事でも紹介されているような「慈善事業だけでない賢明な企業活動」として、将来的な自社のファンを生み出す取組として広く受けいられていくのではないかと思います。