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実質賃金がたった1%プラスになっただけで「明るい動き」?

林芳正官房長官が、8/6の記者会見で、6月の実質賃金が前年同月比1.1%増になったことに対して「賃上げの明るい動きが明確になってきた」と述べたらしい。

明るい動き?

確かに、6月の実質賃金は前年同月比プラスにはなったがそれまで27カ月連続でマイナス続きだったことを忘れてやいないか?

27か月ということは2年以上もずっとマイナス続きだったわけで、つまり2年連続マイナス。単に比較対象の2023年の同月が低すぎたためにちょっとだけプラスになっただけだろ。年間通してみれば、むしろ2022年にすら追いついていない。

2000年を1とした場合の実質賃金は2023年で▲10%であり、むしろ昔より下がってるし、下がり続けているじゃんって話。

しかも、これ従業員30人以上規模の数字だから、5人以上とか小規模も含めるともっと下がっている。

たった1ヶ月、たった1.1%増になったからって、これのどこが「明るい動き」なんだか。

前年同月比がプラスになったとかいうメディアの報道や政府の発表なんていちいち真に受けないようにした方がいい。そもそもなんで20年以上も前より下がってんだって話でしかない。

そんな中、こんな安易なことを言う政治家もいるわけで…


案の定、リプ欄や引用ポスト蘭には、一斉に「そうじゃないだろ」と突っ込まれている。

問題は、名目賃金でも実質賃金でもない。実質可処分所得、要するに「実質の手取り」である。
もちろん名目賃金があがらなくていいという話をしてるわけじゃない。そもそもそれがあがらなければ手取りは増えない。しかし、仮に名目賃金があがっても、物価高を考慮した実質賃金があがっても、手取りが減ってるんじゃ話にならない。
問題は「実質手取り=実質可処分所得」であり、それがあがらないのは社会保険料の増額による。
賃金は企業のやることなんで政治の領域じゃないけど、社会保険料はまさに政治の領域なんだからやろうと思えば思うできるはず。

政治家は「少子高齢化で現役世代が増える高齢者の社会保障社会費は支えないとならないのだから、現役世代には我慢してもらって」とか言いがちなんだが、このままだと支える側の現役世代が先に力尽きる。
普通に計算したって、もうただでさえ少なくなった現役世代で65歳以上の高齢者を支えるなんてことは不可能。そのためにどれだけの国民負担率の値上げが必要になるのだという話。

理屈上国民負担率を増やすことはできても、それをやったら確実に経済崩壊するだろう。第一、たとえば介護保険料徴収したところで、「金はあっても人がない」ことで介護は崩壊することも自明(政治家も官僚もわかってるくせに)。

これだけ人口構造が変化しているのだから、いつまでも今までのやり方を踏襲して「足りない分は増税と保険料増額で」なんてことを繰り返すのはいい加減やめたら?少なくとも人口ピラミッドが補正されるまで無理なんだから。

根本は消費の成長戦略です。
実際、2000年以降の実質消費支出(赤い方の線)はダダ下がり。2000年対比で15%も減少している。

家計調査から二人以上勤労世帯より荒川和久作成。無断転載禁止。

消費支出はGDPの6割を占めるし、それはイコール誰かの給料になるし、ここが20年以上下がり続けていることこそ異常だし、すべての元凶。
そして同時に、一生ものの消費と化している結婚と出産が減っているも消費の減退によるもの。

消費意欲が増えないのも手取りが増えないから不安で使えないからであって、結局問題はそこに落ち着く。

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荒川和久/独身研究家・コラムニスト
長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。