見出し画像

また、東京一極集中に戻っている―まるでコロナ禍がなかったように(下)

まるでコロナ禍がなかったように。コロナ5類以降に伴い、東京圏が転入超過に戻り、「東京一極」集中が、ふたたび強まる。この記事を読み進めるうえで、驚くコメントがでてくる―「国際経競争力を維持するため、東京圏の成長は重要だ」というが、それ、本当?東京一極集中で、この30年、日本の競争力は低下しつづけている。それだけが原因ではないが、東京一極集中に戻って、日本、いいの?


1 東京は、どうなっていく?

なぜ東京だけ、人が増えつづけるのだろうか?
なぜ東京だけに、人が集まりつづけるのだろうか?
 
戦後日本、全国から東京に、若者が移動した。高度経済成長して、なんどか浮き沈みしつつも右肩上がりしてきたが、失われた30年に入った。子どもが減り、高齢化が進み、人口が減って、消費市場が縮み、生産人口が減った。仕事が減った地方から仕事のある東京に人が移動して、日本の富が東京だけに集まる。また選択と集中が進み、東京に人口集中が進んでいき

その象徴が、東京都の高価な公衆トイレ

東京に集まるのは、人だけではない。なぜか東京にだけ、政府や官公庁や関連機関やマスコミ、企業本社に業界団体の本部など、ありとあらゆるヒト・モノ・コト・情報が集まっている

戦前までは、東京が必ずしも人口が日本一ではなかった。広島、愛知、新潟、石川、大阪、北海道が、東京よりも人口が多かった年もあった。その流れが、ある一本の法律で、変わった。83年前の法律が「東京一極集中」をつくりあげ、その不均衡を加速させ、現代日本をまだ支配している

昭和16年9月、戦時下の日本は、「帝国国策遂行要領」を策定して、国家の頭脳機能を東京に集めると命じた。この国家の頭脳機能とはなにか?経済の中枢管理機能,情報発信機能,文化創造機能の3つは、東京で行うから、東京以外の地方ではやってはいけない。戦争遂行のための臨時避難的政策が拡大解釈して、戦後もつづき、巨大都市東京を産んだ

堺屋太一談

その東京成長の前提条件が変わった。東京も、83年前の延長線上の東京ではいられない。人口は増えつづけるという右肩あがりの成長軌道ではなくなった

人口は減少して、生産労働人口が減り、人手不足となった。コロナ禍を契機に、WEB会議が普通になり、テレワークが拡がり、通勤しない日が増え、飲み会が減って、自分時間が増え、兼業、副業もはじまり、仕事・会社の定義が根底から覆りつつある。会社は毎日行く場所でなくなり、自分の席がなくなってフリーアドレスとなり、メンバーシップ型雇用からジョブ型となり、時間縛り管理からフリータイム管理になって、自由自在にDXを使う人たちが仕事をするというスタイルがメインになっていこうとしている

好きなところで、好きな時間に
みんな、働き、住みだす

こんなに変わった。前提条件が変わった。そう考えると、東京の人口が増えつづける流れが変わるはずだった。現にコロナ禍で、東京から郊外・地方への移転・移動が進んだ。にもにもかかわらず、まるでコロナ禍がなかったように、東京一極集中が戻っている

2  東京はコスモポリタンとなる

海外投資家や富裕層が円安を受けて、日本株を買っている。それは、株だけでない。固定資産、保険資産にも向かっている。都心のビルやホテルや商業施設などの再開発のマネーは、世界から集められている。では、なぜ行き場のない世界のマネーが日本、東京に向かうのか?

日経COMEMO「世界が日本を買っている?―まるでコロナ禍がなかったように(中)」

世界のマネーが東京に向かっている
東京23区の新築マンション価格が1億円を超えた。普通の人が買える価格ではない。これからも東京には憧れてやってくる人はいるだろう。しかし経済的な負担能力が低い人は、東京に住みつづけられない。企業も地価負担力が低ければ、東京で仕事をしていられない。そうすると、すでにそうなりつつあるが、日本人が東京に住めなくなる

アベノミクスで、資産が増えた。ところが物価は、それを上回って伸びている。さらに日経平均株価が高騰している。マンションも1億円を超えている。そういう時代に、1億円のマンションに35年ローンを組むことができる人はどれだけいるだろうか?
 
東京一極集中というものの、虫眼鏡で拡大してみてみると、東京も縮小していきつつあるし、中身も変わりつつあるのではないか?東京は、どうなっていくのだろう?おそらく

東京は、ニューヨークみたいに
コスモポリタンとなって
東京で活躍している人は、日本人とは限らなくなり
日本人以外の人が活躍する場所になるのではないか
 
そんなこと、ありえないという人もいるだろうが、戦前・戦中の上海がそうだった。その時代の上海で、どれだけの中国人が活躍していただろうか?世界中の人が上海に来て、活躍していた。現代のニューヨークもそう。ニューヨークにいる人がアメリカ人ばかりかというと、そうではない。世界中から優秀な人たちが集まってくる。すでに東京もそうなりつつあるが、これからさらにそうなっていく
 
東京は国際都市という言い方よりも、世界の金持ちや儲けたいと考えている人たちが集まり、強い者だけが生きていく都市になっていくかもしれない。そのコスモポリタン東京の共通言語は英語であり、DX・AIを駆使した情報リテラシーのワークスタイルが求められる都市となる。そのコスモポリタン東京で活躍している日本人は、

現在の東京の人とは限らない

3 日本がこれから向かっていく姿

しかし、現在日本は、東京一極集中である
アメリカは、ニューヨークだけではない。ニューヨーク以外の都市が集まって、GDP1位でありつづけている
 
たとえばヒューストンのあるテキサス州は、米国で2番目の経済力を持つ州で、テキサス州が独立したら世界8位の国になるという。テキサス州には、世界最大のエネルギー企業であるエクソンモービルの本社がある。アメリカには、テキサス州のヒューストンだけでなく、ロサンゼルス・シカゴ・サンフランシスコ・ボストンなど、ニューヨーク以外の多種多様な都市がアメリカを育てている

マイクロソフトとアマゾンの本社はシアトルに、グーグルの本社はシリコンバレーに、ウオルマートの本社はベントンビルに、メタの本社はメンローパークにと、有名な企業がニューヨークに集積しているのではなく、アメリカの様々な都市に本社を構え、それぞれの社員は豊かな暮らしをしている

それは、アメリカだけではない。英国もドイツもイタリアも、魅力的な都市で構成されている

 江戸時代の日本も、そうだった
280の各藩の都市が、それぞれ活性化していた

東京だけが豊かになるのではなく、日本全体が活性化すべきなではないか。にもかかわらず

GDP(国内総生産)が年々さがっている。2010年に中国に抜かれて3位となり、昨年はドイツに抜かれて4位に転落した。2050年には、8位になっているとの民間調査会社の見通しもある

これから日本はどうなる? 

日本は、落ち着くところに落ち着いていく
日本の成長の多くを吸収した東京は、逆は真なり。日本の停滞とともに、東京も縮んでいく

奈良の平城京が都で無くなって縮んでいき、1000年以上経ったら、平城京のことが分からなくなった。鎌倉幕府もそう。室町幕府に政権が移行したら、鎌倉幕府の役割が消え、現在では鎌倉幕府がどこにあったのか分からない。平安京も皇居があったので1000年以上都として存続できたけれど、東京奠都(てんと)したことで、政府としての必然性を失い、衰退した京都は明治維新後30年後に観光都市として再定義して世界的観光都市となった

必然性がなくなれば縮むのは世界共通
どう縮むかを考えることが大事

世界史をさかのぼると
スペインは、かつて世界帝国だった
オランダもそう、イギリスもそうだった
かつて大帝国だった時代からすれば、現在は大衰退である
 
しかしそれらの国々の人々は豊かじゃないかと言うと、とても豊かである。Well‐Being(佳く生きる)を体感している。世界の幸福度ランキングで上位である。 日本もそういう国になれないか。いや、そういう国になるべきではないだろうか、そのなるために日本をどう再定義して動き出すことが必要な時期ではないだろうか?
 
本日の深夜、成田から、かつて世界帝国だったスペインに旅立つ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?