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社内読書会のススメ

昨今、新型コロナの感染拡大でリモートワークが普及する中、オンラインでの読書会がグローバルに広がっているという。

また、会社員が読書をスキルアップに生かすため、様々な読書支援サービスが登場するなど、「ビジネス読書」を巡る取り組みも始まっている。

ぼくが働いているサイボウズでも、書籍を活用した学びは推奨されている。

新型コロナ禍に入る前から、社内での勉強会自体は活発に行われており、そのなかの1つとして、ABD(「アクティブ・ブック・ダイアローグ」の略称で「一冊の本を参加者全員で分担して読み、まとめて、対話する」という手法)などの形で読書会も開かれている。

また最近では、全社的に「書籍代支援制度」を整備したこともあり、より社内での書籍を使った学びが促進されている。

そんなわけで今回は、自社の取り組みを紹介しながら、書籍を活用した学びについて考えてみたい。

社内勉強会支援×書籍代支援

先述したとおり、元々サイボウズは社内での自主的な勉強会が活発で、多い月には数十件の勉強会が開催されていることもある。

一方そのため、社内で勉強会が沢山ありすぎて、どの本部でどんな勉強会が行われているのか分からない、という声もあり、2年ほど前から人事施策として社内勉強会支援の取り組みを始めた。

具体的には、社内のスケジュールで「勉強会」というカテゴリが登録されたものについて、自動で1つのカレンダーに集約・表示されるようなアプリケーションをつくったり(そのアプリを開けば社内で実施される予定の勉強会が本部横断で一覧で見ることができる)、あるいは、あらかじめ、自分の興味のあるタグ(#人事 #営業 #製品 #キャリア etc…)を登録しておくと、そのタグにマッチする内容の勉強会が開催される際に通知が飛んでくる仕組みを用意したり、といった具合である。

また、そうした社内で開催された勉強会の資料・動画は各本部毎にアプリケーションにまとめられている場合が多く、人事が主催で行った研修や勉強会の資料・動画も1つのプラットフォームにまとめている。

そして、こうした社内勉強会支援に加えて、一部開発本部で先行実施していた書籍代支援の取り組みを参考に、昨年12月から「書籍代支援」を制度化したことで、さらに書籍を使って学ぶ動きが活発になってきた。

「書籍代支援制度」とは「業務上必要の判断がなされていること」「チーム内で情報(購入者、書籍名、費用)が公開されていること」を前提に、会社費用で買いたい書籍を購入して学ぶことができる、というものである。

具体的な運用としては、各本部毎に用意された公開のアプリやスレッド上で買いたい本を書き込めばその本を会社費用で購入できる。

元々、業務上必要な書籍を会社費用で購入することは通常の経費精算の範囲内で可能だったものの、会社として「書籍による学びを推奨する」というメッセージを出していたわけではなかった。

そんななか、開発・運用本部では「競争力の源泉は1人ひとりの知識」という考え方のもと、先行して、書籍を購入することを支援する仕組みを構築しており(公開のスレッドに書けば書籍の購入手配までアシスタントチームがサポートしてくれる)、書籍で学んだことを業務に活かしていくことを推奨していた。

そもそも、サイボウズは手厚い階層別研修があるわけでもないため、研修にかかる費用は少額だ。また、各本部で書籍購入用に確保されている予算も本部によっては殆ど使われていないという実態も見えてきたため、書籍の (1)安い (2)知識が体系立ててまとまっている (3)必要なタイミングで学び直すことができる (4)情報としての信頼性が高い (5)(紙の書籍であれば)会社資産として他メンバーとシェアできる  といった特徴も踏まえ、社内で議論を繰り返した結果、最終的に全社の制度としてルールを明確化、書籍による学びを公式に支援するメッセージを出すことになった。

本制度を運用し始めて半年ほどが経つが、各本部で着々とアプリケーションの整備が進み、書籍を活用した学びが加速されているようだ。

本部によっては、Amazonのように登録した書籍のレビューを5段階評価でつけられるようになっていたり、また人事本部では、1か月に1度、制度を使って購入されている書籍一覧をRPAロボが自動で人事メンバーに通知してくれるようなしくみを作ったりしている。「あの人、こんな本で勉強してるんだ!」という情報が分かることで、勉強意欲を掻き立てたり、偶発的な学びのきっかけになることを期待している。

人事本部内読書会

社内で読書会を開催しやすくなってきたこともあり、少しずつではあるが、ぼくの所属する人事本部でもオンライン読書会が開催されはじめた。

読書会のコンセプト(目的)には「書籍を通じて知識を習得し、業務に活かす」ことはもちろん、「人事本部内でのつながりを増やす」ことも掲げており、通常の業務では中々関わりのない人とも、読書会という場を通じて気兼ねなくつながってほしい、という狙いがある。

読書会の進め方としては、①課題図書を決める(本のアイディアは公開のスレッドで募集) ②書籍代支援制度を使って各自で書籍を購入する(電子書籍でも紙でもOK) ③(分割して読んでくる場合は)誰がどこのパートを読んでくるか決める  ④当日までに「人事本部勉強会アプリ」に自分の担当箇所の学びを書いてくる(5行目安) ⑤当日は(本の内容や参加人数にもよるが)1人1~5分程度で自身の読んできた箇所のサマリを口頭で補足発表(30分)&複数チームに分かれてディスカッション(30分)  という流れだ。

個人的に継続できるといいなと思っているのは『労働法判例百選』の勉強会で、毎月、1人1つずつ、自分の興味のある判例を読んできて、ざっくりのまとめと学び、感想、その判例を読んでサイボウズ社内での出来事に置き換えたときどんなことが想定されるか、をアプリに書いてくる。

正直、判例集系の本は持っていても辞書的に使うことが多く、よほど労務系の知識に興味がない限り通読するのはむずかしい。しかし、これもみんなで読むと、多少は障壁が低くなる。

1回10人参加したとして、全員が異なる判例を読んでくれば、1年続ければ120個の判例の概要を聞く&ディスカッションすることができる。また、アプリ上にはそれぞれ読んできた人達がかみ砕いてくれた学びが残り続けるわけなので、組織としての知見にもなっていく。

実際、参加してくれた人達からは「本で勉強したいと思っていても、こうやって半強制的にアウトプットする場がないと読まないからありがたい」「難しい言葉が多くて一人で読むのは大変だが、誰かがかみ砕いてくれたものを聞くと頭に入ってきやすい」などの声があり、比較的好評のようだ。

学びの公開と細部の工夫

さらに、こうした書籍を使った学びは、社内で徹底的な情報共有が進んでいることで、より効果を高めることができる。

たとえば、ぼくが何かの本を読んで勉強したいと思ったとすると、ぼくはまず、社内のグループウェア上を検索する。

すると、その本について社内ですでに勉強会が行われていれば、そこでの議論、運がよければ資料や動画も見ることができるし、他にも社内の様々なやりとりが検索に引っかかってくるため、「○○の本よりも、××の本の方が分かりやすかった」という比較情報や、「ある本について分かりやすくまとめた記事を見つけた」というような書き込みに遭遇することもある。

書籍に関する情報や書籍を通じて得た学びが公開されていることによって、その学びを一人ではなく、大勢のチームメンバーが享受することができる。

それも外のインターネットにあるような有象無象の情報ではなく、同じ理想を持ち、同じ環境で働いているチームメンバーからの情報であるため、業務にも比較的活かしやすいだろう。

そしてまた、書籍から学んだことを生かして実業務にあたる中で生み出された新しい知見が、またほかの人の目に留まって、さらに新しい発想を生むということもあるかもしれない。

参考記事:テレワーク、強制転勤廃止は「知識創造」という日本企業の強みを奪うか?

とはいえ、学びがすべて公開されていさえすれば、そうした学びの連鎖がうまく回っていくかと言われれば、そんなことはない。

今日も午後一番の時間帯に、『労働法判例百選』の勉強会があったが(サイボウズでは少しでも参加できる人を増やすために日中の業務時間帯に勉強会が開催されることが多い)、元々、12人程度参加予定だったものが、業務の都合で半分くらいの人数になった。

書籍を活用して新しいことを学ぶ目的は、あくまで業務に活かすことであり、業務が忙しければそちらを優先するのは当然のことである。

一方で、目先の業務だけに気をとられていると、学ぶ時間が取れず、長い目で見れば生産性が頭打ちになってしまう可能性もあるため、結局、バランスを見ながら、学びやすい環境をつくることが重要になってくるわけだが、読書会への参加は基本的に任意であるため、参加してもらえるか、してもらえないかは、読書会が開催される時間帯やテーマ、準備にどれくらいの時間がかかるか、シンプルに楽しそうか、告知文章のうまさ、業務の繁閑など、さまざまな要素が絡み合ってくる。

そうした細部の設計については、結局のところ、どういう目的で読書会を行うのかに応じて、主催者が知恵を絞るしかない。

最近、社内のコミュニケーション促進を担っているチームが「社内勉強会の開き方」という勉強会を開催していた。

確かに勉強会の開き方、というのも大切なナレッジの1つである。

そうした知見が共有されていくことで、さらに知見の共有がスムーズになっていくということもあるかもしれない。

こうした地道なとりくみが、1人ひとりのスキルアップに、そして、中長期的なチームの理想達成につながっていくと信じて、これからも知恵を絞って創意工夫をこらしていきたい。

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